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第二話 威力がない?合格

(……来た)


 口元が、思わず緩む。


(来たぞ、俺が求めていた『本物』が……!)


 実戦経験ゼロ。

 見るからに運動神経もゼロ。

 そして、この世間を知らなさそうな純粋な目。


 完璧だ。

 これ以上ないほど、完璧な人材だ。

 スライムを前にしても、教科書を開いて「ええと、スライムの弱点は確か…」とかやり始めるに違いない。


 女のポテンシャルを最終確認するため、俺は核心の質問を投げかけた。


「アンタ、魔法の威力は?」

「えっ?あ、はい、その……ほとんど、ありません……。才能が、ないみたいで……」


 女が俯き、消え入りそうな声で答える。


(威力がない!!)


 思わず心の中でガッツポーズをした。

 キタコレ。大当たりだ。


 威力がなければ、面倒な強い魔物を倒すこともない。

 素晴らしい。安全第一。


 これ以上ないほどの安堵と満足感を込めて女に言った。


「……いいじゃん。威力なんていらねえよ。むしろない方がいい。合格。明日からよろしく」

「え……?」


 女は、鳩が豆鉄砲を食らったような顔で俺を見る。


「ご、合格…ですか…?わ、私、何もできないと…威力がないと、申し上げたのですが…」

「だから、それがいいんだって」


 俺の言葉に女はしばらく呆然としていた。

 が、やがてハッとしたように、慌てて椅子から立ち上がった。


 そしてスカートの裾をつまみ、丁寧にお辞儀をした。


「も、申し遅れました!わ、私、レムリアと申します!あ、あの、これから、よろしくお願いいたします…!」

「ああ、よろしく」


 気のない適当な返事を返す。

 それでもレムリアと名乗った女は、どこか嬉しそうに微笑んだ。


 俺?俺は名乗らない。

 めんどくせえし。


 なのに、レムリアは特に気にした様子もない。

 それどころか、何やら一人でうんうんと頷いて、勝手に納得している。


(……なんだこいつ?)


 俺には、こいつの思考回路がさっぱり分からない。

 まあ、いいか。どうでも。


「じゃ、解散。明日の朝、ギルド前で」

「ま、待ってください、マスター!」


 俺がさっさと帰ろうと席を立つと、レムリアが慌てて俺の服の袖を掴んだ。

 マスターって誰だよ。って俺のことか。


「まずはギルドでパーティ登録をしませんと!私とマスターの、輝かしい第一歩の記録ですから!」

「うわ、だる……。手続きとか一番嫌いなんだが……」


 俺は盛大に顔をしかめたが、レムリアのキラキラした期待の眼差しからは、どうやっても逃れられそうになかった。



 ギルドに戻ると、カウンターは昼間より少しだけ空いていた。

 俺はあくびを噛み殺している受付嬢に事情を話し、パーティ登録の書類を受け取る。


「それで、パーティ名はどうなさいますか?」


 受付嬢が事務的な口調で尋ねてくる。


 パーティ名?

 心底どうでもいい。


 どうせスライムしか狩らないんだ。

 名前なんて何でもいいだろ。


「あー……なんでもいいです。『帰宅部』とかで」


 俺がそう適当に答えると、レムリアの動きが止まった。


 なんだ?

 俺の顔を、じーっと見てくる。


 やがて、震える声でこう言った。


「ま、マスター…!もしやそれは…【全ての魔術の始まりにして、伝説の賢者の真名】――『キ=タクヴ』のこと、でしょうか…!?」

「は?」


 キタクヴ…?

 なんだその呪文みたいなの。


 俺はただ「帰宅部」って言っただけだ。

 なのに、レムリアはなぜか一人で感動して天を仰いでいる。


「ああ…!やはり…!何気ないパーティの名前一つにすら『古代魔術への造詣』を込められるとは…!マスターの叡智の深さ、底が見えません…!」

「いや、だから何の話だよ」


 全然話が噛み合わねえ。

 受付嬢が俺たちを交互に見て、困惑している。


「え、ええと…パーティ名は、『キ=タクヴ』で…?」

「はい!お願いします!」


 レムリアが、満面の笑みで即答した。


 おい、勝手に決めるな。

 書くな、そのややこしいやつ。


 俺の心の叫びも虚しく、羊皮紙には丁寧に『キ=タクヴ』と書かれてしまった。

 てか豹変しすぎだろ。最初の大人しい印象どこいった?


 こうして俺は、輝かしいスローライフ計画の第一歩を踏み出した。

 頭のネジが数本飛んでる感じのヤバい信者が隣に居るが、気にしない。


 ……まあ、どうにかなるだろ。知らんけど。

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