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7、夜の空を飾る綺麗な星

 作業を終えた私達はついにやることが無くなり、仰向けになって並んで寝転び、疲れた身体を地面に着けた。


 静けさに包まれた時間が続き、カウントダウンが胸の鼓動とリンクし始める。

 

 篝は悲しくならないよう必死にはしゃいでいるが、悟志の瞳からは後悔の色が見えた。


 三者三葉(さんしゃさんよう)、それぞれ違う心境で終わりまでの時を刻む。

 

 最後くらいは何ものにも縛られないように過ごそうとスマホの電源がもちろん切り、時計を見ないようにした。


 私は空を見上げながら母が夜逃げをする最期の日に会話をした時のことを思い出していた。

 島の人には一人で旅行に行くフリをすると言い、私に通帳や印鑑を手渡す母。

 母は自由になりたいと口にして、思い出話を沢山聞かせてくれた。


「瑠海……お母さんはお父さんのことを本気で愛していなかったら、こんな馬鹿なことにせずに済んだのでしょうね」


「何を今更、それに本気で愛していなかったら、私が産まれてくることなんてなかったでしょ」


「それもそうね」


 どれだけの人を抱いて、どれだけの罪を母が重ねてきたのか。

 考えても仕方がない。

 ただ母は未だ父のことを渇望し続けていて、その代用品として島の男たちを抱いていたに過ぎないのだ。


 非常識で情熱的で私がまだ経験していないことばかりを続けてきた母。

 ”お互い、精々頑張りましょう”と母は無責任な言葉を告げ、玄関を出ていく。

 今日まで育ててくれた恩がある以上、望んでなどいなかったが、最後の時まで母から謝罪の言葉はなかった。


 そして、丘の上で三人並んで上空を見つめたまま、空に流れ星のような隕石の影が見えた。


 ――予定時刻通りだ。


 遠くから迫って来るそれは、恐ろしい厄災となって、この世の終わりの風景を映し出そうとしていた。


「瑠海はこの景色が見たかったんだよね……?」


 篝が夜空に煌めく流星を見るように、涙で滲んだ綺麗な瞳を輝かせる。


「うん、最高に綺麗じゃない、まるで星が落ちて来るみたいで」


 夜明けのような眩しさが迫って来る。

 たった一度きり、命を懸けたものだけが観測できる極上の景色。

 それが目の前に見える光景だ。


「もう駄目だ……奇跡は起きなかった……」

 

 死を目前に声を震わせ、空を見上げる篝の手を掴んだまま悟志が最初に目をつぶった。


 もしかしたら助かるかもしれない、そう私も思った。

 可能性は確かにあった。


 NASAは随分前から地球に被害をもたらす可能性のある小惑星を把握していて、将来に向けて準備を続けてきた。

 小惑星をはじいて安全な軌道へ移動させるため、重たい宇宙船を何度もぶつけることや、核弾頭ミサイルを使用することなど検討されてきたことが知られている。


 動画で見たことのある、二千十三年のロシア中部の上空で爆発したチェリャビンスク隕石以上の迫力が目の前に迫る。

 

 風が吹き荒れ、身体が熱を感じ始める。

 かつての恐竜達もこんな体験をして絶滅していったのだろうか。

 他人事のように俯瞰して、そんなことを最後の最後まで考えてしまう自分がいた。


 ジェットコースターに一緒に乗った時を思い出すような篝の大きな悲鳴が轟き、終わりの時を実感すると同時、光が大きく弾け、恐怖という感情に襲われる前に、一瞬の出来事のように熱に溶かされ、激痛と一緒に意識は閉じて行った。

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