俺とカラオケ
「来たぞカラオケー!さあ歌って踊ってパニパニするぞー!」
おーっ!と一人で盛り上がるのはお馴染みおてんば騒音メイカー。
二人でカラオケに来るのは半年ぶりだろうか。
今日は騒音ではなくちゃんとした真奈の歌声を聴けるのだ。
…ところでパニパニは何を意味するんだ?
「真奈、とりあえず座りなさい。あんまり暴れると飲み物こぼ「あーっ!!ジュースこぼしちゃった!キャハハハ」
「…」
―――――――――――――――
「…~♪」
「きゃー!そう様素敵に無敵~!」
何度デコピンをくらっても全くへこたれないお前こそ素敵に無敵だよ。
「そうの歌聴くとなんか落ち着くね!胎教に良い子守歌みたい~」
褒めているのだろうけども例えが微妙だ。
「おう…ありがとな」
「うん!…あ、次私だね。やっぱそうの前だと緊張する~」
スーハーと深呼吸をしてゆっくりと歌い始める真奈。
いつもの思い付きででたらめな歌を口ずさむ真奈からは想像ができないくらいに綺麗で真っ直ぐな声を彼女は持っている。
「~♪」
お前の歌も心地いいよ。
俺は目を瞑って彼女の歌に聴き入った。
「~あなたに逢える日を待っている…♪イェイェイ!」
その切ないバラードに相応しくないイェイェイなど勝手に入れるんじゃない。
「っは~緊張した~。ってなわけで歌姫真奈の美声はいかがだったでしょうか!」
「ほんとに上手いよ。いつも下手くそな歌を歌ってる奴と同一人物とは思えない」
「あ!何それ!?私はオリジナル曲にこそ真剣に取り組んでるんだからね」
…お前には作曲のセンスが皆無のようだ。
「オリジナルを大切にする気持ちも分かるが今日はカラオケに入ってる曲だけにしなさい。その代わり今度いくらでも聴くからな。」
「ほんと!?約束だからね!」
膨れっ面をしていたかと思うとあっという間に満面の笑みになる真奈。
くるくる変わる彼女の表情全てがとても愛しい。
「ああ、約束だ」
彼女の少し癖のある長い黒髪を自分の指に絡ませながら約束を交わす。
これが俺達の指切りげんまん。
約束事に重さや大きさなんて関係ない。
どんなに下らなくてもどんなに小さくてもお前との約束はできる限り守りたい。
真奈の無邪気な笑顔を守りたい。
「―さあ、久しぶりのカラオケ楽しもうぜ」
「あいあいさー!」