俺の友人(1)
「ずんがらがっしゃん♪がっしゃんしゃん♪
はぁ~っしゃんしゃんっ」
この公害とも言える騒音の出所はもちろん、童顔の即興騒音メイカー。
「…真奈。お前も今年で二十歳なんだから少しは落ち着きな「ずんずんずががーんっ♪ずんちゃった♪」
「…」
――――――――――――――――――
「よし、お見舞いの品も買ったしそろそろ病院に行くか」
「…はいぃ」
真っ赤になった額をさすりながら車の助手席に座る涙目の騒音メイカー。
真奈の暴走は正直面倒だが、それを止めた先にあるのは俺のツボ。
この涙目がまた可愛くてたまらない。
「…そう、なんかニヤニヤしてて怖いよ…」
「そうか?俺はいつでも優しいだろ。なんてったって紳士だからな」
フンッと自信満々で言う俺を冷ややかな、でもかすかに潤んだ瞳で見る真奈。
…たまらねぇ。
俺の内に秘めた加虐心に火がつきそうだが今のところはここまで。
もう目的地である市内の病院に着いたのだ。
俺は楽しみは後にとっておく男だしな。
「さて、宏樹のところに行きますか」
車から降りるやいなや全力疾走で病院の入り口へと向かうおてんば娘。
「先にヒロさんの病室を見つけた方が勝ちだからね!そうは私の言うこと何でも聞くこと!
それじゃおっさきに~!」
一瞬こちらを振り返ったかと思うと大声でそう叫び去る騒音メイカー。
当の本人もそうだが、その被害を受けた俺までもが周囲の注目を集めたのは言うまでもない。
しかも俺が負けること前提で勝手に話しを進めているが、真奈が勝つことは恐らくないだろう。
一応病室の場所は教えてあるが彼女は方向音痴、そのくせ人に道を聞きたがらない。
もともと人見知りな部分がある彼女だから赤の他人に聞くことに抵抗があるのかと思いきや、この方向音痴娘は違うらしい。
『自分の目指す目的地には自分の力で行きたいの。人に聞けば早いし確実なんだけどね、なんかそれって負けた気がするんだよね!』
これには彼女なりの哲学があり、考えれば考えるほど深い話しなのかもしれない…
だが、そもそも勝ち負けなんてないのだ。
単に聞くのが面倒くさいだけなのではないかと俺は思う。
「はあ…とりあえず先に宏樹の病室に行ってるか」