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8 陛下のおっさん

週明けは教授のお仕事日。

研究室に入ると宰相のおっさんがいた。

「こちらは国王陛下である。」

「??」

国王陛下ってめっちゃ偉い人だったよね。

ここで何をしているの?

「是非シェル君に会いたいとおっしゃるのでお連れした。」

「はい?」

何で俺に会いたいの?

さっぱり判らない。

「褒美を全て断った豪傑の顔が見たくてな。」

気さくな感じのおっさんだった。

「ゴウケツ? 何?」

「豪傑とは凄い男の事だ。」

「誰?」


「・・・、先日はオークを討伐したそうだな。」

「うん。」

「全て急所を1撃と聞いておる。」

「5頭失敗、2発。」

「どのような魔法を使ったのだ?」

「光弾、闇弾、レーザー。」

「見せて貰えるか?」

「嫌。」

「何故だ?」

「攻撃魔法、嫌い。」

「・・・・・。」

「陛下のお言葉であるぞ。」

宰相のおっさんが口を出して来た。

「母さんも父さんも見せるなって。」

「この子にとっては両親の言葉が絶対で御座います。どうかご容赦を。」

宰相のおっさんが謝っている?

「よい。先日の話で理解した。シェルよ、王宮には珍しい本がたくさんある。気が向いた時に読みに来るが良い。」

「うん。」

ちょっと興味がある。

「これを示せば衛兵が書庫に案内してくれる。私に会いたい時もこれを示せば私か担当大臣の所に案内してくれる。大切に持っておれ。」

宰相が封筒をくれた。

「うん。」

「何か望みの物はないか?」

陛下のおっさんが聞いてくる。

「無い。」

即答した。

「少しは考えてみたら。」

教授が口を挟む。

考える。

「う~ん、・・・・無い。」

俺の方に身を乗り出していた教授がテーブルの上に倒れた。


「騎士団長と剣の稽古をしたそうだな。」

陛下のおっさんが話題を変えた。

「うん。」

「騎士団長は強かったか?」

「うん。早い、強い、賢い。負けた。」

「そなたが負けたか、騎士団長は自分が負けたと言っておったぞ。」

「剣、当たらない。」

「騎士団長と稽古がしたいか?」

「うん。」

「私が見せて貰っても良いか?」

「うん。」

「よし、今すぐ王宮に戻ろう。」

「へ?」

「王宮の訓練場で騎士団長と稽古だ。」

「今?」

「ゼンは急げと申す。」

ゼンって何だ?



陛下のおっさんが乗って来た馬車に乗せられた。

うん、ふかふかだ。

窓が高いので空しか見えないけど。

お城はめっちゃ大きくて広い。

誰かいないと迷子になる自信がある。

うん、間違いない。

騎士団長が用意する間お茶を飲んで待つことになった。

「シェルは自分の剣を持っていないのか?」

王太子っていう兄ちゃんに聞かれた。

「重い。」

「がはははは、そうだな剣は重いな。」

「騎士団長と剣で戦うんでしょ? 重くないのですか?」

王女の姉ちゃんが首を傾げる。

「身体強化。」

「いつもは使っていないのですか?」

王女の姉ちゃんは興味深々?

「強くなれない。」

「そうか、筋肉をつけるにはその方が良いな。」

王子の兄ちゃんが頷いている。

王妃のおばちゃんがニコニコして俺達を見ている。

お菓子が美味しいからいいか。

「ねえねえ凄いナイフを持っているんでしょ、見せて。」

「俺も見たい。」「俺も。」「私も。」

「危ない。」

「見るだけ、触らないから。」

「うん、絶対に触らない。」

陛下のおっさんを見たら頷いたのでナイフを出して鞘から抜く。

テーブルに置いたら陛下のおっさんや王妃のおばちゃんも近くによって覗き込んでいる。

「黒魔鉄の剣を切ったのよね。」

「さようでございます。護衛の家宝とは知らずに申し訳ない事をしました。」

宰相のおっさんが苦笑い。

やっぱり大切な剣だったようだ。

「お母さんに貰ったのよね。」

「うん。」

「ありがとう、たいせつにしてね。」

王太子さん達は本当に覗き込むだけで指1本触れなかった。

ナイフを仕舞った。


「オークキングを1撃で倒したんだよね。」

王子の兄ちゃんも興味津々?

「うん。」

「魔法で攻撃したの?」

「うん。」

「攻撃魔法は嫌いらしいが、数が多かったので仕方なく撃ったらしいぞ。」

陛下のおっさんが子供達が見たいという前に止めてくれた。

「嫌いなの?」

「戦いは嫌い。」

「騎士団長と戦うのに?」

「訓練。」

「そうか、いつもは剣を持っていないな。」

「うん。」

「襲われたらどうするの?」

「殺す?」

「ええっ!」

俺の言葉に王女のお姉さんが驚いている。

「母親が襲われたら躊躇なく殺せと教えたそうだ。」

「そうなの?」

「うん。」

「父親はなるべく殺すなと教えたそうだ。」

「なるべく、なんだ。」

「うん。」


訓練の準備が出来たとおっさんが呼びに来た。

訓練場と言う所に案内される。

めっちゃ広い。

周りには観客席。

騎士や兵士が大勢見ている。

訓練用の剣を持って騎士団長と向かい合い身体強化を限界まで高めた。

毎日の訓練の成果か、めっちゃ体が軽い。

「始め!」

どこからか声が聞こえた。

一気に距離を詰め、騎士団長の手前左に張ったバリアを蹴って右上に飛びバリアを蹴って縮地で懐に飛び込む。

腕の防具で弾き飛ばされた。

うん、奇襲失敗。

「危ない、危ない。」

騎士団長が苦笑い。

「残念。」

俺も苦笑い。

まあ決まるとは思っていなかったけどね。

その後もそれぞれが工夫した攻撃と防御の攻防が続いた。


「待て、ちょっと待った。」

団長のおっさんに止められた。

「何?」

「シェルは元気だな。俺は疲れた、少し休ませてくれ。」

「・・・・。」

「その間騎士団の連中の相手をしてくれるか?」

「嫌。」

「何故?」

「弱い。」

「全員で総がかりはどうだ。」

「やる。」

身体強化を高めすぎたせいか、もっと体を動かしたい気分。

全身鎧に身を固めた100人程の騎士が出て来た。

「鎧を着ているから思い切り振り切っていいぞ。治癒魔導師も控えているからな。」

団長のおっさんが笑って言う。

「始め!」

突撃して来る騎士の間をすり抜けながら剣を振り回す。

カーン。カーン。カーン。カーン。カーン。カーン。

結構面白い。

剣が折れた。

騎士の剣を素早く奪う。

カーン。カーン。カーン。カーン。カーン。カーン。

途中から飛ばす方向を考えながら剣を振り抜く。

飛んだ騎士が重ならないように飛ばしていると、ますます面白い。

あれ、誰もいない?

「それまで。」

「ええっ。」


「ちょっと待て、治癒魔導師が足らん。」

団長のおっさんが慌てている。

「俺、掛ける。」

“エリアヒール“

倒れている騎士達に光が降り注ぐ。

騎士達が次々と起き上がった。

「もう一回。」

「望む所。」

「さっきのようにはいかぬぞ。」

「今度こそ倒してやる。」

騎士達はやる気満々。

今度は腰に予備の剣も差した。


「始め。」

カーン。カーン。カーン。

カーン。カーン。カーン。

面白い。

あれ、誰もいない?

“エリアヒール“

「もう1回。」

「始め。」

カーン。カーン。カーン。

カーン。カーン。カーン。

まだまだ。

“エリアヒール“

「もう1回。」

「始め。」

カーン。カーン。カーン。

カーン。カーン。カーン。

めっちゃ面白い。

“エリアヒール“

「もう1回。」

「すまん、もう限界だ。」

「ええっ。」

他の騎士を見回すと皆が目を背ける。

団長さんを見た。

「昼食の時間だ。残念だが今日はこれまでだ。」

そう言えばお腹が空いている。

夢中になっていたので忘れていた。

「うん。」

ちょっと誤魔化された感じもするけど、楽しかったからまあいいか。



「戦いに剣は使わないんだろ?」

「うん。」

「何で剣の訓練をしているんだ?」

「面白い。」

「・・・・。」

陛下のおっさん達と昼食。

「飛び上がって空を蹴ったよね。」

「バリア。」

「バリアを張ったのか?」

「うん。」

「次々と違う所に?」

「うん。でもダメだった。」

「騎士団長は強いか?」

「うん。」

「魔法を使えば倒せる?」

「うん。」

「何で使わないの?」

「剣、稽古。」

「・・・・。」

「稽古、大事。」

「シェルが勝てない相手っているの?」

「ドラゴン?」

「疑問形なんだ。」

「小さい時、見ただけ。判らん。」

食事の後は書庫を見せてくれた。

王子の兄ちゃんや王女の姉ちゃんも気さくに話してくれた。

薬草の図鑑などは絵も実物そのままだし説明も詳しくて感動した。

古代語はまだ理解できない単語も多いが、タイトルだけ見ても面白そうな本がたくさんある。時々見せて貰いに来ようと思った。


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