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7 騎士団長は強い

「シェルく~ん!」

3週間ぶりの錬金魔法研究は教室に入った瞬間に地獄だった。

息が、息が出来ない。

パコ~ン。

「シェル君が死んじゃうでしょ。」

「そうだった。」

はあ、やっと息が出来た。


お姉さんの胸は凶器と言うよりも兵器、それも最強の最終兵器?

やっぱり女性には勝てない。

「とにかくおめでとう。」

「何?」

めでたい事があったの?

「ポーションを作ったでしょ。」

「うん。」

「だからおめでとう。」

「おめでたいの?」

「シェル君は凄い事をしたのよ。」

「そうなの?」

「5年生なんかもう就職の話が来たって喜んでいるわ。」

「5年生?」

「研究室は3年生から5年生までいるのよ。」

「そうなの?」

「ポーションはシェル君が研究室と共同で研究して作った事になっているからね。」

「研究室が偉い。俺、ちょっと。」

「共同研究って、シェル君がここに来たのは1回だけよ。」

「来ない、出来ない。」

「そうかもしれないけど、・・・。」

「みんな喜ぶ。俺嬉しい。」

「はぁ、シェルは本当に欲の無い子ね。」

その後は代替品として列挙していた薬草の確認作業や配合割合の研究をする事になった。



でかっ。

剣の授業に行ったらどでかいおっさんがいた。

「王国騎士団長のグレカーレだ。息子のマエストが手も足も出ない剣の達人と聞いて一手ご教授願いたく師範の許可を頂いた。手合わせをお願いしたい。」

子供の喧嘩に親が出て来た?

その割には丁寧だし、悪い感情は感じない。

「うん。」

訓練用の剣を構えて向かい合う。

めっちゃ強い。

まだ1歩も動いていないのに判る。

ダンテよりもはるかに強い。

いつもより強力な身体強化を掛けた。

相手が動くのをじっと待つ。

強い相手にこちらから仕掛けるのは悪手とダンテに教えて貰った。

動いた。

様子見らしく、軽く踏み込んで剣を振って来た。

それでも踏み込みは鋭いし剣速も早い。

ヒョイヒョイと避ける。

途中で剣の方向を変えたり、踏み込みの大きさを変えたりと俺を試しているらしい。

ヒョイヒョイと避ける。


おっさん強い。

避けるだけで精一杯、懐に飛び込む余裕が無い。

縮地を使って俺の懐に飛び込んで来た。

団長が目の前に現われる瞬間を狙って剣を突き出すが弾かれる。

縮地を使って飛び退いた。

「ほう、縮地も使えるのか。」

「練習中。」

このおっさん、練習相手としては最高だ。

今まで考えていた攻撃法を試してみる。

踏み込むと同時に右に飛ぶ、空中に張ったバリアを蹴って団長に切り掛かる。

団長が俺の剣を弾いた力を利用して横に飛びバリアを蹴って角度を変えて切り付ける。

弾かれた。

今度は角度を変えた瞬間に縮地を使って懐に飛び込む。

やばっ。

慌てて飛び退く。

縮地で俺が現れる場所を予測して待っていた。

空中でバリアを蹴る攻撃方法は練習相手がいなくてまだ慣れていない。

折角なので角度を変えて何度も練習させて貰う。

剣速が速いし途中で剣筋を変えるので剣を避ける練習も出来る。

うん、楽しい。


「そこまで。」

先生の声で終わってしまった。

もっと練習したかったのに。

「良い経験となった、感謝する。」

「楽しい。またしたい。」

「途中から練習相手にされたな。そなたの必殺技が見れるよう私も鍛錬しておこう。」

「うん。」

「おまえらどんだけ体力があるんだ? 2時間も動きっぱなしで息も切れていないって何なんだ。」

先生が呆れている?

「すまぬ、つい夢中になった。そうだ、シェル騎士団に入らないか? 毎日訓練が出来るぞ。」

「嫌。」

「何故だ?」

「訓練好き、戦い嫌い。」

「戦いは嫌い、か。そうだな、機会があればまた訓練の相手を頼む。」

「うん。」



「やっぱりシェルは凄いな。」

「へ?」

「マエストの父上は王国最強の戦士だぞ。」

「うん、強い。敵わない。」

「いやいや、あれだけ長い間戦って一太刀も受けないってありえねえぞ。」

「父上でさえあれだから、俺の剣が掠る訳無いな。」

マエストが嬉しそう。

「何でお前が喜んでいるんだ?」

「貴族の間で騎士団長の嫡男は弱いっていう噂が広まっていたんだ。シェルにコテンパンにやられたからな。」

「あの戦いを見ていない奴は団長が息子の為に手を抜いて戦ったと思うだろうから、当分噂は消えないぞ。」

「いいさ。父上が判ってくれたから。何よりもあんなに楽しそうな父上を見たのは初めてだ。絶対に来週も授業に来ると思う。」

「授業が延びるのは勘弁してほしいぞ。」

「今日もデザートのパイが売り切れだったし。」

団長とシェルの訓練が長引いて昼休みが遅くなったのだ。

「ごめん。」

「シェルのせいじゃないぞ。あれは団長と先生が悪い。」

「いや、主にマエストの父上だな。」

「あんなに嬉しそうに戦っていたら先生も止め難いよな。」

「すまん。」

「マエストのせいでもないから気にするな。」

「父上には時間を守るように一応言っておく。」

「一応か。聞いてくれるとは思っていないな。」

「あの父上だからな。」

「あはははは。」



週末は薬草採り。

ポーション材料の採取依頼で依頼ボードが埋まっていた。

薬草採取は初心者の仕事。

近場は他の人に任せて王都から離れた所で採取する。

体は小さいが、3歳から山の中を走り回ったので走る速さにも体力にも自信がある。

探知魔法の練習をしながら走る。

練習は大切。

小さな事からコツコツと。


探知魔法に大量の反応。

見知った反応、オークの集落だ。

オークは女性を繁殖の苗床にするので見つけ次第討伐しろとギルマスにも言われている。

女性より強いなんて俺にとっては恐怖でしかない。

攻撃魔法は嫌いだがたまには練習しておかないといざという時に使えない。

“光弾”、“光弾”、“光弾”、“光弾”、“光弾”、“光弾”、“光弾”、“光弾”。

“闇弾”、“闇弾”、“闇弾”、“闇弾”、“闇弾”、“闇弾”、“闇弾”、“闇弾”。

“レーザー“、“レーザー“、“レーザー“、“レーザー“、“レーザー“、“レーザー“。

倒したオークに血抜き魔法を掛けて魔法袋に放り込む。

父さんに貰った魔法袋凄い。

200頭程のオークが全部入ってしまった。

薬草の採取を済ませてギルドに戻った。

ギルドに入ると冒険者達が大騒ぎしている。

「どうしたの?」

「緊急招集が掛かった。オークの大規模集落が見つかった。Dランク以上の冒険者は明日早朝討伐に出発だ。」

俺はFランク、関係なかった。

おっちゃん達から離れて買取りカウンターに向かう。

魔法袋の大きさを隠すためにオークは少しだけにして薬草を大量に買い取って貰った。



翌日も薬草採取。

依頼ボードから依頼書を剥がして受付に行くと、ギルマス室に連行された。

「昨日はどこに行った?」

「南の森で薬草採取。」

「・・・、近くにオークがいたんだな。」

「うん。」

「何頭いた?」

「一杯。」

「倒したんだな。」

「うん。ギルド言った。」

「・・・・、上位種もいたな。」

「うん。」

「魔法袋の中か?」

「うん。」

「解体場に行くぞ。」

ギルマスと解体場に行ってオークの上位種を魔法袋から出した。

人払いをしてくれたので安心して出せる。

「まだあるのか?」

「上位種は全部。普通のは一杯。」

「それは来週まで預かっていてくれ。これ以上は解体場に入らん。」

大きな倉庫程ある解体場がオークの上位種で埋まっていた。

「報酬はいつも通りカードに振り込んでおく。今日は昨日の場所には行くな。調査隊が大勢いるからな。」

「うん。」

何かあったらしい。危ない所には近寄らないのが一番。

西の方で薬草を探すことにした。


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