34 結婚しました
冒険者研修の実施要綱が発表された。
魔法袋の使用禁止、危険なので洞窟に入るのは禁止。
「はあ?」
4人組が苦手な運動系必修科目は1年2科目、2年1科目、3年には無い。
4人組は1年の成績で1組中堅以上。運動系2科目が補習となったことで2組。
2年で良い成績を上げれば3年では間違いなく1組。
貴族にとっては3年のクラスが1組か2組かで大きく変わる。
警備の関係で1組には留学生の王族が多い。王族とクラスメイトだったかどうかは貴族として重要事項。場合によっては嫡男の地位を外されることすらある。
卒業時の席次も重要。3年間の総得点で決まるので、席次がそのまま能力とみなされる。
特に高位貴族の養子を狙っている貴族子弟にとっては死活問題らしい。
通常科目が100点満点なのに対して、冒険者研修は200点満点。
何としても4人組の成績を下げようとしている貴族達が実施要綱に横やりを入れた。
魔法袋が使えなければ重い荷物を持てない4人組は完走出来ない筈。
洞窟に入らなければ魔獣を倒せない筈と考えたらしい。
前回の動いている魔獣を倒す事という指示も貴族達から出たそうだ。
洞窟禁止はその延長。
と、担任が教えてくれた。
判らん。
俺は無事に終わればどうでも良い。
3泊4日の冒険者研修が始まった。
学年末試験が上手く行ったようでお嬢様方の機嫌が良い。
「バカじゃねえの?」
「お貴族様を疑ってはいかん。」
「バカだ。」
「そう、絶対にバカだ。」
話をしている生徒達の視線の先には大きな荷物を担いだお貴族様のパーティー。
賢いリーダーがいるパーティーは荷物を少なくしているが、バカなリーダーのパーティーは魔法袋から出した荷物をそのまま背中に背負っている。
俺も担任に魔法袋を渡したので荷物が一杯。
大きな鍋や竈まである。
バカなパーティーでも竈まで持って行こうとはしていない。
「行くわよ。」
「「「おう。」」」
お嬢様達が出発した。
最後尾の俺は荷物を引っ張っている。
お嬢様が熊さんを倒した時と同じ方法。
荷物を括って重力魔法で浮かす。重い荷物も指一本で運べる。
重い荷物を担いだお貴族様達が唖然としている。
お嬢様はご機嫌。
どうだとばかりに胸を張っている。
凶器が、凶器が。
俺の嫁達は凶器までは発達していないので安全。
前方にゴブリンがいたが、人型の魔獣が滅多突きにされるのは見たくないので結界で弾き飛ばす。
左前方に角鹿を見つけた。
「角鹿。隠蔽で近づく。」
全員に隠蔽魔法を掛けて前に進む。
見えた。
“捕獲”
盗賊さんの捕獲用に作った直径3mの魔法の檻で角鹿を囲んだ。
外側からの物理攻撃は出来るが内側からは物理攻撃も魔法攻撃も出来ない薄い水色の檻。
お嬢様達が檻に引き摺り込まれないようにいつものロープを結ぶ。
「突け!」
「「「「おう!」」」」
見たく無いので顔を背け、探知魔法で状況確認。
空には担任の召喚獣が飛んでいる。
魔獣を拘束はしてないよ。
檻の中で自由に走り回っているよ、狭いけど。
2mの角鹿が3mの檻の中で“自由”に走り回っている。
皮が硬い魔獣は無理だが鹿や狼程度なら刺さるくらいにはお嬢様達の腕も上がっている。
今回の課題は指定の薬草5種と任意の魔獣3種5頭。
試験勉強で溜まっていたストレス発散?
お嬢様達のテンションが異常に高かった。
ナニモミナカッタ、ナニモキカナカッタヨ。
探知魔法の赤い点が消えた。
「お疲れ様。」
浄化魔法を掛けて角鹿の残骸を回収する。
宿泊所に着いてテントを設営、夕食を作る。
魔法袋が使えないので新鮮な食材が使えるのは明日の朝まで。
気温が上がっているので2日目の晩だと新鮮食材は腐ってしまう。
鹿の肉?
細切れになった内臓や毛が肉に絡みついているので食べるのは無理。
討伐証明部位だけ取って宿泊場所の指定場所に捨てた。
魔導師さんが焼却処分をしてくれる。俺達の火魔法では焼けない。
お嬢様達が調理してくれた豪華な食事を頂いていたら、お貴族様のパーティーが到着した。
随分と荷物が減っている。途中で捨てたらしいけど大丈夫?
3日目になると行軍速度が落ちるパーティーが続出。
俺達が宿泊指定地に着いたのは何と参加している70以上のパーティーで3番目。
どのパーティーも水が少なくなったらしい。
水は重い。
どうやって水を節約するかも研修課題の一つ。
コースに近い水場でもコースから往復1時間以上。
明日の最終日はさらに水場から遠いコースなのでどのパーティーも今日のうちに水を補給しようと遠回りしてくれた。
俺達?
美味しい精霊水で元気一杯。
薬草の課題も魔獣の課題も全て提出して明日はハイキング。
森で食べられる草や木の実を沢山見つけたので夕食も豪華。
お嬢様達がはしゃぎすぎて煩いと先生達に怒られた。
最終日はお嬢様達の体力だけが問題だが、相当鍛えたらしく元気に目的地に到着した。
到着順位はなんと2位。
目的地に用意されている美味しい食事を頂きながら他の生徒達を待つことになった。
お嬢様達はご機嫌。
帰って来た生徒達に元気よく「お疲れ様。」と声を掛けている。
最後尾で追い上げをしていた大勢の冒険者達が帰って来たのは日が暮れてからだいぶ経った頃。荷物を全て捨てられたバカ貴族の3パーティーが最後だった。
翌朝の結果発表。
なんと優勝してしまいました。
お嬢様達が大喜び。
苦しい、死ぬ。
4人の凶器を押し付けられた俺を担任が救い出してくれた。
夏休みは結婚式の準備で大忙し。
俺は朝から晩までジョボジョボ、捏ね捏ね。
結婚披露宴で使う精霊水と引き出物の美容クリームの準備。
4回の結婚式と12回の披露宴、量が半端じゃない。
一杯になった樽と箱に納められた美容クリームはシェル商会がそれぞれの国に届ける。
特に精霊水が嵩張るので魔法袋があっても大変らしい。
俺は知らないけど、グラーフが頭を抱えていた。
夜は執事長達に式の手順や披露宴の挨拶を稽古させられた。
故郷の山で訓練するよりもずっと疲れた。
夏が終わった。
学院にはもう受けたい授業が無いが、息抜きに昼食を摂りに行った。
日替わり定食を持って席を探す。
「シェル~ッ。」
お嬢様に声を掛けられた。
お嬢様が隣のテーブルから椅子を持って来て5人席にしてくれた。
「結婚式の準備は進んでる?」
「まあ。」
「何か疲れてない?」
「疲れてる。」
「大丈夫よ、本番はこれからなんだから。」
それって全然ダイジョバナイぞ。
「1組になったんだね。」
校舎のロビーにクラス分けが張ってあった。
「シェルのお蔭よ。でも今度は自力で主席を狙うわ。」
「1,2年の合計点では4人とも10位以内なの。」
「3年は運動系が無いから本気で狙えるわ。」
「お偉い貴族をぎゃふんと言わせてやるんだから。」
4人とも鼻息が荒い。
4人の席は教室の中段で、後ろは護衛の多い外国の王族が殆どらしい。
「玉の輿?」
入学したころにそんなことを話していたのを思い出した。
「貴族は嫌。」
「2年間見ていたけど、ずるいし、嘘ばっかりだし、堅苦しい。」
「今から思えばシェルが一番だったわよね。」
「お嫁さんが王族ばっかり4人って何よ。」
「そうよ、私達と言う者が有りながら。」
「この浮気者。」
話が変な所に飛んできたので早々に退散した。
危険察知能力がレベルアップした?
カリメア国のシェル商会支店にも精霊水と美容クリーム、中級ポーションの製造所が設置され、アリタイ国同様の生産体制が出来上がった。
結婚式が終わったら、俺は週に1日ずつ両国の製造所で作業すれば、あとの5日はお嫁さん達とのんびりしていて良いらしい。
冒険者ギルドの仕事も指名依頼だけで良くなった。
良く判らないがお仕事が楽になりそう。
秋の社交シーズンに入り、結婚式が始まった。
順番でまた揉めたので、最終的には籤で決めたらしい。
最初がスンラフ王国、次がカリメア王国、3番目が獣人国、最後がアリタイ王国。
陛下夫妻は自国の式に参加するだけだが、国王名代で参列する王族は遠い国まで行くので大変らしい。
俺は式の前日で良いらしいが、花嫁は式の3日前から色々と準備をする?
判らん。
お嫁さん達が笑顔だから問題ない。
式の3日前に4人と一緒に結婚式を行う国に転移させられた。
終わった。
「はぁ。」
パレードが4時間なんて聞いてない。
3日連続の披露宴は聞いていたけど、5日連続のお茶会なんて聞いてない。
お嫁さん達が喜んでくれたから頑張った甲斐があった。
子供を作る魔法は4人がかりの大魔法。
魔法陣を使わないので凄く時間が掛かるし、確実に効果が出るとは限らない神級魔法。
めっちゃ気持が良いので好きだけど、日に日にお嫁さん達の練度が上がるらしく俺の体力が持たない。
お嫁さん達の体力は凄い、俺も今まで以上に鍛えないと付いて行けない。
食事の度に神官さんに回復魔法を掛けて貰いながら頑張った。
10日で漸く魔法が完成したらしいが結果が判るには暫く時間が掛かるそうだ。
俺はフラフラだが、お嫁さん達の肌は艶々プルプル。
お嫁さんが喜んでくれたから俺も頑張った甲斐があった。
めでたし、めでたし。
闇と光 完
作者名を免独斎頼運に変更して新作、SSランク冒険者のお仕事は下着の洗濯です ~討伐依頼? そんなものありません~の投稿を開始しました。
今迄の作品は全て改訂予定ですがだいぶ先になる予定です。
申し訳ありません。




