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33 インゲンホーホーです

翌朝、いよいよ冒険者研修が始まった。

遠くにある山には見覚えがある。

確かに2年前にスタンビートが起こった森だ。

2年経って森はかなり戻ってきているようだが魔獣は少ない。

事前に冒険者による大型魔獣の駆除をしたせいだろう。

当然熊さんは見当たらない。

既に俺達から見える所には生徒がいない。

ゆっくりでも良い、着実に進めば制限時間内に宿泊予定の広場に着ける筈。

探知魔法で地形を確認しながら出来るだけ楽な道を選ぶ。

食物探知と薬草探知で道沿いの食べ物と指定の薬草を探す。

頑張って力を付けてくれたが目的地まで歩くだけで精一杯、薬草や食べ物を探すために寄り道をするだけの体力は無い。

道沿いに薬草や食べ物を見つけると休憩しながら採取。

魔獣が見つからない。

担任から動いている魔獣でなければダメと言われているので麻痺や拘束魔法は使えない。

せめてスライムならと考えていたが、スライムすらいない。

原因は先行した学生達。

魔獣除けの聖水を大量に撒き散らしていた。

魔獣と出会えないまま集合地点に到着。

無駄な寄り道をせずに楽な地形を選んだのでそこそこのタイム。

まだ2日ある。魔獣は明日、明後日に期待しよう。

俺の魔法袋からテントを出すと、お嬢様達がテントを張ってくれた。

今日の為にみんなで練習したらしい。

竈と鍋と食材を出したら、お嬢様達が調理してくれた。

運動神経と調理は関係ないらしい。

残念なことにこの広場には大きな木が無い。

今日の為に森を伐採して作った広場だから当然か。

結界の魔道具を設置して、結界に寄り掛かって寝た。



調理は夕食だけでいいので朝は王都で買って来た焼き立てフワフワパンとアツアツのシチュー。

俺の魔法袋は時間が経過しないと言ったらみんなに買い物に連れて行かれた。

周りの生徒が羨ましそうにしているが気にしたら負けだ。

2日目は山の麓のチェックポイントを通って二日目の宿泊広場に行くコース。

3日間で森の中を小さく1周する感じだ。

食材と薬草は採れるが相変わらず魔獣とは出会わない。

探知範囲を広げるが、殆ど魔獣がいない。

2日目の宿泊広場に到着した。

「魔獣はいたか?」

「おらん。」

「俺達もだ。」

あちこちのテントから生徒達の声が聞こえている。

「はあ。」



最終日、薬草は採取済、残る課題は魔獣討伐。

魔獣がいない原因が判ったので探知魔法の精度を上げる。

木の洞や洞窟の中、地中に隠れていても探知出来る筈。

見つけた。すぐ近く。

小高い丘の麓にある浅い洞窟の奥。

上を見ると担任の召喚獣が飛んでいる。

「洞窟の奥、1角兎とスライム。」

「1角兎もスライムもめっちゃ早いから無理。」

いやいやスライムより遅い魔獣なんかいるのか?

「結界で追い込む。灯りの魔法で、照らす。狙って突け。」

灯りの魔法を点けて洞窟に入っていく。後ろを見ると担任の召喚獣も付いて来る。

洞窟の奥、横幅2m50㎝の所にスライム3匹と1角兎2羽が押し込められている。

魔獣が動き回れて槍が届く70㎝程の所で結界を止めた。

「突け!」

「「「「おう!」」」

お嬢様達が掛け声と共に槍を突き出す。

「・・・・。」

浄化魔法を掛けて魔獣の残骸を魔法袋に納めた。

ナニモミナカッタ。ナニモキカナカッタヨ。

無事に初日に出発した町に戻れた。


「魔獣討伐が出来たパーティーは殆ど無い。」

「はあ。」

「討伐できた魔獣も雑魚ばかりだ。シェルなら理由が判った筈だ。原因を教えろ。」

「レイスキング、闇弾の穴、調べてる。」

「レイスキングだと。」

「知り合い、安全。魔力、駄々洩れ。魔獣が逃げた。」

「レイスキングの知り合いがいるのか?」

「アリタイ王都。」

「シェルが交渉をまとめたという例のレイスキングか?」

「うん。」

「了解した。学院にはそのように報告しておく。現場で確認したから魔獣の残骸は捨てていいぞ、俺は二度と見たくない。」

「はぁ。」

スライムと1角兎の残骸を捨てた。



夏休み、付与魔法の研究で書庫に籠っていたらお嫁さん達に呼ばれた。

何か用事があって国に帰らなければならないらしい。

お嫁さん達をそれぞれの国に転移で運んだ。

付与魔法の研究が行き詰っていたので故郷の山に戻った。

環境を変えればいい発想が生まれることもある。



1ヶ月程だが、気分転換がてら訓練の見直しをした。

母さんや父さんの言葉を思い出しながら、練習を1から見直していく。

小さな事からコツコツと、お爺さんの言葉も忘れない。

山を走り、谷を飛ぶ。

精霊さんに感謝の魔力を捧げる。

今こうして生きていられるのはみんなのお蔭、感謝の心は大切。

今年は久しぶりにブルードラゴンさんが襲って来てくれた。

ドラゴンの血は美容クリームの素材に使えるので丁度いい。

これも俺の日頃の行いが良いせい?

良い子して頑張れば良い事が起こると父さんが教えてくれた。

悪い子していると悪い事が起こるらしい、インゲンホーホーとか言っていた。

俺は良い子して頑張るのだ。

童心に返って山を楽しんだ。

ふと思いついた。

母さんから貰った解体用ナイフ、錆びないし刃こぼれも無い。

何か付与魔法が付いている筈。

魔法袋から出して調べてみる。

「うわっ!」

精査で金属の内側を調べてみると複雑な魔法陣がめちゃめちゃ沢山刻まれている。

お母さんのお蔭で付与魔法が判って来た。

お母さん程の魔法陣は無理だが、状態異常無効の魔法陣が解析出来たし、刻んだ魔法陣を金属の内部に沈み込ませる定着魔法も判った。

超めんどくさい作業だけどやるしかない。

指輪の製作に取り掛かった。



夏休みが終わり、新年度が始まった。

お嬢様達は10組から8クラスごぼう抜きで2組になった。

入試は学力試験と実技試験が同じ配分。

学年成績は運動系の授業は2割、まあそうなるな。

ちなみに冒険者実習は満点だったらしい。

倒した魔獣の事は思い出したくない。

何故か俺も2組。

2年生でも冒険者実習がある。

4人組を実習に連れて行けるのは俺しかいないと担任に宣告された。

理不尽だ。



ギルマスが来た。

ギルド通信で迎えに来てくれとお嫁さん達から連絡があったそうだ。

お迎えに行った。

みんなめっちゃ機嫌が良い。

原因は判らないが、お嫁さん達の機嫌が良いのは良い事だ。

秋の社交シーズンを前に俺の婚約が発表された。

結婚式は1年後。

久しぶりにギルドに行ったらギルマス室に呼ばれた。

「危うく戦争になるところだった。」

「?」

なんのこと?

「4か国が自分の国でシェルの結婚式をすると主張して揉めた。」

「国?」

「お前、自分の嫁さん達の身分を知っているだろ?」

「身分?」

「・・・、知らないのか?」

「知らん。あっ、トーラは獣王の娘?」

「他は?」

「知らん。」

「・・・、ルイージ殿下はアリタイ国の第4王女。ベイ殿はカリメア国で宰相を務めている公爵の2女で前国王の孫、リヨン殿下はスンラフ国第2王女だ。」

「国が揉めるの?」

不思議だ。

「ああ、大揉めに揉めた。」

「判らん。」

王侯貴族のする事は良く判らない。

「とにかく4か国が自分の国で結婚式を挙げさせろと言った訳だ。」

「はあ。」

「お前の嫁達が国に帰って両親を説得した。」

お嫁さん達が国に帰ったのは説得の為だったらしい。

「戦争にならない?」

「ああ、きちんと解決した。」

「良かった。」

「ああ、4か国で結婚式を挙げる事になった。」

「はあ?」

「シェルは4回結婚式を挙げる事になった。」

「・・・・。」



指輪を作っています。

指輪を作っています。

現実逃避です。

執事長から結婚式の予定を見せられました。

結婚式の後は王都でパレードです。

翌日から3日間連続で披露宴です。

それが4回。

溜息しか出ません。

お嫁さん達は毎回全員が出席です。

ウェディングドレスが4着、パーティードレスは12着です。

とっても嬉しそうにしているのでまあ良かった?

指輪を作っています。

指輪を作っています。



結婚式が決まったからと、授業が厳しくなった。

現代語Ⅱ、社交儀礼Ⅱ、ダンスⅡ。

どの科目の教授にも王家から圧力が掛ったらしい。

シェルが失敗すれば家の存続に係わると教授達の目つきが変わった。

屋敷に帰るとお嫁さん達とお話、4人が交代でダンスの練習。

練習場には毎日楽団がスタンバイ。

週に3日は4人組の冒険者訓練もある。

あっと言う間の1年間だった。


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