29 神ランク?
1年は10クラスなので40パーティー。抽選で選ばれた4パーティーが平日に演習に挑む。2、3年は1泊演習。恒例行事なのでギルド側も慣れている。
大門前に生徒を整列させ、てきぱきと護衛を割り振る。
「今日はシェルがパーティーの護衛か?」
「俺・の、仲間?」
「シェルのパーティーか?」
「うん。」
顔見知りのおっちゃんが槍を持った女の子を見ている。
「シェルはいつも単独だろ?」
「うん、初めて?」
「シェルの事だから心配ないとは思うが、気を付けてな。」
腕の立つ冒険者だけにパーティーメンバーの戦闘力を一目で見抜いたようだ。
「うん。」
「1、2、1、2。」「「1、2、1、2。」」
「1、2、1、2。」「「1、2、1、2。」」
森に向かって5人が歩く。
一緒に出発した他のパーティーはもう視界にいない。
「1、2、1、2。」「「1、2、1、2。」」
「1、2、1、2。」「「1、2、1、2。」」
「美味しい。」
「王族でもなかなか手に入れられないらしいわよ。」
「アリタイでも王族と高位貴族だけの限定販売なんだって。」
「流石に商会の娘、良く知っているわね。」
「精霊水が飲めただけでも演習に来たかいがあったわ。」
「これ・から、森。声、ダメ。」
「「「「「はい。」」」」
3回目の休憩を終えていよいよ森。
4人に腰縄を着ける。
「歩く。」
俺が先頭を歩きすぐ後ろを4人が付いて来る。
歩行訓練で4人の速さは判っている。
屋台を見て歩く程の速さで森の中を進む。
奥まで歩かせるのは無理。
目的の魔獣が早く襲ってくれることを祈りながら隠蔽を弱める。
「1角兎?」
「きゃっ!」
言ったとたんに1角兎が結界に跳ね飛ばされる。
「結界凄い。」
「1角兎・は、早い。倒すの・は、無理。」
「あんなの槍が当たる筈無いわ。」
「あっという間に逃げちゃったものね。」
探知魔法に高速で突っ込んで来る中型魔獣が映る。
「岩猪? 結界・で、安全。見学。」
岩猪が突進してきた。
ゴガッ。
結界に激突して跳ね飛ばされる。
すぐに態勢を立て直して突進。
ゴン。
結界に激突して跳ね飛ばされる。
すぐに態勢を立て直して突進して来る。
「光弾。」
額を撃ち抜かれて倒れた。
「凄い。」
「あんなに大きいのが1撃?」
「Sランクって凄いんだ。」
「岩猪、堅い。槍・で、突く。」
4人が岩猪の死体に槍を突き出す。
「本当、刺さらない。」
「こんなに堅いんだ。」
「お腹、柔らかい。」
岩猪を仰向けにする。
「刺す。」
「ささった。」
「きゃっ、血が出た。」
「練習。刺す。」
「内臓? 気持ち悪い。」
「慣れる。刺す。」
みんなで魔獣を刺しまくる。
「お腹柔らかい?」
「うん、お腹なら槍が刺さるわ。」
ボロボロになった岩猪にクリーンを掛けてアイテムボックスに放り込む。
「進む。」
森の奥に進む。
15分おきに休憩を取りながら進む。
疲れていては戦えない。
途中で襲って来た魔獣は俺が倒した。
「来た。戦い・の用意。」
少し広い所に移動して4人を前に出す。
「結界・で、安心。腹を突く。」
4人が槍を構えた所で大きな熊が姿を現した。
「まだ、待つ。」
後ろ足で立ち上がると3mを超える巨大な熊。
グワ~ン!
前足を結界が弾く。
グワ~ン!グワ~ン!グワ~ン!
2本の前足で何度も結界を前足で攻撃して来る。
「拘束。」
タイミングを見計らって2本の前足を結界の上側に結び付けた。
大熊は両前足を上げた状態で結界にぶら下がるようにして立っている。
足が激しく動いているが結界が有るから安心。
「攻撃。」
「えい!」「えい!」「えい!」「えい!」
4人が結界の中から大熊に槍を突き出す。
魔法攻撃は無理だが、物理攻撃なら結界の中からでも出来る。
両前足を結界の上部に固定されているので、4人の目の前には大熊の急所である柔らかい下腹部がある。
突き出される槍が大熊の下腹部に吸い込まれる。
「えい!」「えい!」「えい!」「えい!」
腰のロープで俺との距離が固定されているので転んでも結界から飛び出すことは無い。
「えい!」「えい!」「えい!」「えい!」
力が無いので奥までは届かないが、大熊の下腹部は血だらけ。
「えい!」「おうりゃ!」「この野郎!」「死ね!」
暴れていた大熊も大分弱って来た。
「死にやがれ!」「このうすのろ野郎!」「キ〇タマ潰してやる。」「チ〇〇の串刺しだ!」
相手が弱って来たので元気が出たのか、掛け声が過激になって来た。
「この変態野郎!」
いや、変態はお姉さん?
振り向いたお姉さんと目が合った。
「ガ、ガンバッテクダサイネ。」
「おう。」
おっさんか?
「キ〇タマ突き刺したぞ!」
「はらわたを掻きまわせ!」
「でっかいチ〇〇を切り取ったぞ!」
お姉さん、それって女の子が言ってはいけない言葉。
槍の先にチ〇〇を刺した女の子が振り返って俺を睨む。
「ス、スゴイデスネ。」
怖かった。
熊の死体にクリーンを掛け、アイテムボックスに放り込む。
演習完了だ。
「お疲れ。」
皆に水筒とクッキーを配る。
「このパーティーなら大熊にも楽勝ね。」
「全員無傷だもんね。」
「気合よ、気合。」
「私達凄い?」
「ス、スゴイデス。」
と言うよりも怖いです。
休憩の後は帰るだけ。
何で帰りは元気なんだ?
とりあえず大熊をアイテムボックスに収納して帰り道につく。
森を出ると、アイテムボックスから大熊を取り出して重力魔法で浮かせた。
4人が大熊に結び付けたロープを引きながら歩く。
凱旋パレード。
大門では警備隊のおっさん達が驚いている。
何故か下腹部を抑えているおっさんもいる。
判らなくもない。大熊は胸から上には傷一つ無い。
下腹部は数十回槍を突き立てられてボロボロ。
まあそうなるな。
大門を入ると学院の先生方が待っていた。
「お疲れさん。」
「はあ。」
「怖かっただろ。」
「うん。」
担任の肩には小さな鳥。
道中ずっと上空を飛んでいたから多分そうだとは思っていた。
やはり鳥の目でずっと見ていたらしい。
視覚共有だけで聴覚共有が無い事を祈る。
女の子達は他に生徒や先生に戦いの様子を自慢げに話している。
喜んでいるからまあいいか。
「シェルはSランクでは無くて神ランクだ。」
「あいつらに大熊を倒させるなんて神としか思えねえな。」
「俺もそう思う。」
「運動神経0ならまだしも、マイナスの4人組だからな。」
「往復歩かせるだけでも一苦労だぞ。」
「その上であの大熊だろ。」
「あの大熊は俺でもビビるぞ。」
「ああ、俺達のパーティーでは無理だな。」
いや、あの子達が槍を突き出す高さに急所が来る魔獣が大熊しかいなかっただけ。
他の魔獣は絶対に無理。
HRは大熊討伐の話題で盛り上がっている。
「静かに。後期の終わり宿泊演習がある。今回はその練習だ。本番は春、今から体を鍛えチームワークを磨いておけ。」
えっ、春の演習もこのメンバー?
ガ~ン! 目の前が暗くなった気がする。
晩秋は盗賊シ~ズン。
盗賊さんいらっしゃ~い。
大陸最大の国だけに王都に向かう貴族の数も多い。
貴族目当てにやって来る商人も多い。
当然盗賊さんも一杯。
襲っている盗賊さんは麻痺させて護衛の冒険者にプレゼント。
俺はわざと逃がした盗賊さんに案内して貰った本拠地のお掃除。
週に3日、午後だけの出動だが探知範囲が広くなったので毎日盗賊さんとご対面。
冒険者ギルドだけでなく商業ギルドにも感謝された。
人の役に立つ仕事は気持ちが良い。




