26 初めての学生服
初めての学生服、ちょっとカッコイイ。
アリタイの時は教授の助手なのでずっと私服だったから嬉しい。
授業を受ける時はやはりみんなと同じ服の方が嬉しい。
勿論掛けられるだけの付与魔法を付けておく。
慢心はダメ、絶対。
小さな事からコツコツと。
晴れている時に屋根を直すのだ。
王族や高位貴族の子弟が大勢留学しているらしいが、殆どが1組から5組。
基本は1組から成績順らしいが、警備の関係で5組までに固めているらしい。
俺は10組なので半分くらいが平民の子弟。
それでも教室の後ろには護衛らしいおっちゃん達が数人立っている。
平民でも大商人の子弟には護衛が付いているそうだ。
入学式が終わって、初めてのHR。
20人の生徒が成績順に自己紹介。
伯爵家や子爵家の子弟もいる。
俺が最後。
「シェル、14歳・・です。アリタイの冒険者・・です。」
言えた。
執事長に教えて貰った。
最後に“です“を付けるとカッコいいらしい。
この学校は14歳以上と決まっているが、王族間の顔繫ぎなどの理由で17~8歳で入学する生徒もいるらしい。俺のクラスは15歳が3人で後は14歳。
何故か全員俺よりも背が高い。
ぐぬぬ。
「受ける科目によって教室が違うが、週明けの1時間目はこの教室で顔を合わせる事になる。仲良くやってくれ。」
担任が自己紹介した後は校内見学。
広い。アリタイの王立学院の5倍、いや10倍あるかもしれない。
図書館もでかい。大陸中から留学生が集まるのも納得できる。
2時間目は現代語。
大陸の言葉は古代語を元にしているので国は違ってもほぼ同じだが、国によって微妙に違う。
現代語のクラスは殆どが外国の留学生。
平民は俺だけで、10組の生徒は一人もいない。
大陸共通語との差が大きい国からの留学生が現代語の授業を受けるらしい。
教室の後ろに立つ護衛の数が凄い。生徒の倍くらいいる。
最初は自己紹介。少したどたどしい生徒が多いので安心した。
「シェル、14歳・です。アリタイの冒険者・です。」
HRよりも上手く出来た。
どうや。
「よし、良く出来た。“です“の前に少し間が開くから気を付けなさい。」
王族の生徒が多いせいか、先生は凄く丁寧に教えてくれる。
「うん。」
「返事は“うん”では無く、“はい”です。言ってごらん。」
「はい。」
「そうです、良く出来ました。」
「うん。」
「はい!」
怒られた。
昼食は食堂。
アリタイの学院と同じでカードを出して注文すると木札の食券が貰える。
それをカウンターに置くと食事が乗ったトレーを渡してくれる。
俺は日替わり定食。
日替わり定食が一番体に良いとアリタイの教授が教えてくれたから。
「シェル、こっちにおいで。」
開いている席を探していたら10組の子が呼んでくれた。
「ありがとう。」
お礼の挨拶は大事。
「何の授業を受けたの?」
「現代語。」
「シェルは話すのが苦手だから?」
「うん。」
「現代語は外国の王族が多いからタマノコシのチャンスなんだけど、必修科目の関係で取れなかったのよね。」
タマノコシって何だ?
「私も。学院が玉の輿目当ての子が取れないように時間割を考えているんだって。」
「そうなんだ。そうそう、シェルってシェル商会の関係者?」
「うん。」
「シェル商会は凄いってお父様が褒めていたわよ。」
「うちも。仕事が早くて正確だって。」
「支店を開いてまだ間もないのにもう王宮御用達だもの、びっくりだわ。」
「ねえ、シェルも商会の仕事を手伝うの?」
「水汲み?」
「体は小さいのに力持ちなのね。」
「冒険者って言っていたけど、魔獣を倒したりするの?」
「襲われたら?」
「普通は何をしているの?」
「薬草採り。」
結構気さくなお姉さん達だった。
午後は図書館。
凄い数の本が並んでいる。
お気に入りは図鑑。
薬草の絵が綺麗に描かれていて、本物を見ている感じ。
知らない薬草がたくさん載っているし説明も詳しいので夢中になってしまった。
2日目は礼儀作法。
鬼です。
鏡の前で何度もやり直し。
「背筋!」「顎!」
何度も怒られて何度もやり直しをさせられる。
なんで他の子は出来るんだ?
ぐぬぬ。
今日は1コマで授業は終わり。
王宮の禁書庫に行った。
門で陛下のおっさんに貰ったカードを見せるとすぐに案内してくれた。
使い方はアリタイと同じだが本の量が凄い。
陛下のおっさんが自慢していただけのことはある。
閲覧室の隣にある休憩室でサンドイッチとお茶で昼食。
閉館時間まで本を読んで屋敷で夕食。
執事長と侍従長、使用人3人の6人でテーブルを囲む。
4人掛けだとなかなか順番がまわらないので6人掛けのテーブルにしてくれと執事長に頼まれた。屋敷が広いので使用人の数も多いらしい。
3日目はダンス。
将来絶対に必要だと陛下のおっさんに言われたから。
正直に言って苦手。
背の高い女の子が相手だと目の前に凶器が突き出ている。
王都の学院での出来事を思い出して、いつ押し付けられるかという恐怖で体が固まりステップどころではない。
教授は慣れれば大丈夫と言ってくれるが、本当に慣れることが出来るかは疑問。
3日目も1コマで終わり。王宮の禁書庫に行く。
夕食を摂ってからアリタイに転移、王都の木の上で眠った。
朝の訓練の後、朝食を摂ってからレイおじさんの屋敷に行く。
今は通信の魔道具を改良中。
通信の魔道具自体は王城の禁書庫で見つけて作ってみたが、結構魔力を喰う。
魔力の節約法を研究中。
レイおじさんにギルドの通信室に窓を開けて貰って研究中。
レイおじさんは望みの空間に窓を開けられる。転移では無くのぞき窓。
転移は結界で防がれるがレイおじさんの覗き窓は結界が有る場所でも開けられる。
その覗き窓から精密鑑定を掛けてギルドの魔道具を調べている。
俺の魔道具は2個で対になっていてその間でしか通信が出来ない。
シェル商会の本店には5つの地区本部とつながる魔道具が5つ並んでいる。
大陸を5つに分け、それぞれの地区本部と本店を結んでいるのだ。
ギルドにある通信の魔道具は一つ。
一つでどの支部とも通信できるし、一斉通信も出来る優れもの。
巨大な水晶玉を使っているので同じものを作るのは無理だが、術式は参考になる。
春先から研究を始めたがまだまだ掛かりそう。
急ぐ仕事では無いが面白いから結構根を詰めてやっている。
レイおじさんは自分で研究するのが大事と窓を開けるだけで手伝ってはくれない。
たぶんギルド通信については詳しく知っている筈。
それだけに何とか自力で解析したいと意地になった。
夕食で執事長にカリメアでの事を報告すると、寝床の木は大きく出来ないがテーブルは6人掛けに出来ると喜んでいた。
現代語の先生に会話の機会を増やす事と長い文章で話すことを課題に出されていたので使用人達も積極的に話しかけてくれることになった。
ダンスの話をするとSランクでも敵わないのかと大笑いされた。
ダンスは先生を呼んで稽古をつけて貰う事になった。
相手は同じくらいの背丈の女の子を探してくれると言う事で少し安心。
ギルドに顔を出した。
カリメアの制服はアリタイでは着るなと言われているので私服。
両国を転移で行き来しているのはなるべく話すなと言われている。
転移魔法は秘密にしておいた方が良いらしい。
「今日も薬草か?」
「うん。」
「薬師ギルドが喜ぶ、頑張れ。」
「うん。」
先週の週末も薬草採取の常時依頼をこなしたので、みんないつもの反応。
受け付けのお姉さんの所に行ったらギルマス室に連行された。
「カリメアのギルマスからギルドに顔を出して欲しいと連絡があった。」
「なんで?」
「Sランク冒険者の動向を掴んでいると、ギルド幹部の評価が上がる。」
「そうなの?」
「いざという時にSランク冒険者と連絡を付けられる存在は貴重なんだ。そもそもこの大陸にはシェルを含めて3人しかいないし、他の2人は我が儘で連絡も無しに行方不明になるからな。」
「はあ。」
他のSランク冒険者に会って見たいが難しそうだ。
「学校に慣れたら、授業の時間割や良く行く場所を教えてやってくれ。」
「うん。」
「薬草採取に行くなら、出来るだけ街道の上を飛んでくれ。」
「街道の上?」
「盗賊喰いがいるぞと見せつければ盗賊被害を減らせるからな。」
それって事は盗賊さんが来ないっていうこと?
う~ん、どうなんだろう。
アリタイの盗賊さんがカメリアまで出張してくれるかも。
「はあ。」
週末最終日のティータイムはアップルパイの時間。
絶対に欠席できない。
昼食を摂りながら来週の打ち合わせをしてカリメアに転移した。




