19 スタンビート
目標だった初投稿から1ヶ月連続投稿迄あと10日。いよいよ後半戦突入です。
もう一つの目標である投稿作品完結も3作品の完結に目途が立ちました。完結後の新作品も投稿準備を進めています。
拙速で粗い作品ですが、ストレスフリーで楽しんで頂けることを第一に頑張っています。これからも宜しくお願いします。
アリタイ王都を出発した時に南に行くと決めていたから、何となく元のルートに戻りたかった。
カリメアの王都を出て南西に走る、走る、走る、飛ぶ、走る。
大きな山を2つ超えた。
時々アリタイ王都に転移してみるが、最初の頃に比べて少ない魔力量で転移出来る。
繰り返し転移をしたせいか、転移の練度も上がっているらしい。
だいぶ離れたせいか、襲って来る魔獣も見た事の無い魔獣が混じるようになった。
知らない土地での訓練は緊張感があるから楽しい。
小さな事からコツコツと。
今夜はどんな魔獣が襲って来るのだろう、眠るときのワクワク感も楽しい。
だいぶ暖かくなった。
相当南まで来たらしい。
グラーフと約束していた2か月になったので王都に戻った。
王都も暖かい。あれ?
南だから暖かかったのではなく、春になったから暖かくなっただけのようだ。
カリメアの王都に寄り道したのであまり南には進めていなかったらしい。
シェル商会に顔を出すと、美容クリームの製作と精霊水の製作が待っていた。
美容クリームを作りながら精霊水を注ぐ。
精霊水は楽なので同時進行出来るが、美容クリームはめんどくさい事この上ない。
誰だよこんなものを作ったのは。
俺だった。
ぐぬぬ。
時々休憩と言う名の署名時間が入る。
積み重ねられた書類にサインする。
署名が済んだら精霊水と美容クリーム作り。
グラーフは鬼だ。
シェル商会の仕事が終わった。
レイおじさんの所や教授の研究室に遊びに行く。
王宮の禁書庫にギルドの薬草採取。
日常が帰って来たような気もするが、何となく忙しい。
空いている時間に精霊水と美容クリームを作っているから?
シェル商会の仕事は訓練にも勉強にもならない。
この先また何かを作らされそうな予感もする。
逃げ出す手段を色々と考えたが、グラーフを説得するのは無理。
下手な考え、休むに似たり。
無駄な事は止めて強行突破する事にした。
「休み、取る。」
「申し訳ありません。商会の規模が予想以上に大きなってシェル様にご負担をお掛けしました。商会の規模を抑えるか、出資金を増やして頂いてシェル様の仕事を直営工房に分けるかどちらかにしたいと思いますが、如何致しましょう。」
そんな事を言われても俺には判らん。
「どっち、良い?」
「出資金を増やして頂いて直営工房を作るのが最善と思います。」
「ギルドカード、全部使う。」
休みが欲しいので冒険者ギルドの口座にあるお金を使って貰うことにした。
俺の仕事は最高級美容クリームだけで、高級品や傷薬は直営工場で作るらしい。
ギルドカードのお金なんて残高を確認したことも無いし、引き出したのは妖精剣の鞘を作って貰った時だけ。
そもそも俺は買い物をしない。
出来ないのでは無い、しないのだ。たぶん。
自慢ではないが未だに一人で買い物をしたことは無い。
食べ物は森や山で採れる。木の上が宿なので宿賃は要らない。
グラーフが白金貨1000枚だけギルドカードに残したと言っていたが、白金貨なんて見た事無いからどうでもいい。
魔法袋やアイテムボックスには盗賊さんから貰ったお金が沢山ある。
全然問題は無い。
前回最後に泊まった南の国の大きな木の下に転移した。
殺気を感じて反射的に結界を張る。
いきなり攻撃された。
ゴ~ン。
「おっと!」
大きな音と共に結界ごと飛ばされる。
相当強い魔獣の攻撃でも俺の結界ならその場で受け止められる。
結界ごと飛ばされたのは初めて。
驚いて後ろを振り向くと雷竜さん。
体長20mとドラゴンの中では小型だが力が強く動きが速い、納得した。
魔眼を向けるが弱点は見え無い。
大抵のドラゴン種には弱点が無い。魔法も打撃も鱗で撥ね返される。
辛うじて攻撃が通るのはブレスを吐くときの口の中か尻の穴。
素早い雷竜の尻の穴を狙うのは難しい。
雷竜の撃つ雷ブレスは速度が速い。
光弾やレーザーと同じ速さなので撃たれてから避けるのは事実上不可能。
雷竜の口元に狙いを定めながら神経を集中して待つ。
開いた。
“光弾”
撃つと同時に転移した。
さっき俺がいた所を雷の光が貫く。
外したか。
雷竜を見るとゆっくりと倒れていく。
開いた口の中から脳を吹き飛ばされながら雷ブレスを打ったらしい。
転移しておいて良かった。
すぐに雷竜の死体をアイテムボックスに収納する。
周りには強力な魔獣が沢山いる。
探知魔法には大型魔獣は離れていくが、強力な魔獣はかなり遠い所からも近寄って来るのが表示されている。
魔獣除けに隠蔽を弱めていたので普通の大型魔獣は俺を恐れて逃げたようだ。
サイクロプスやヒュドラ。ミスリルゴーレムに地竜。
50mを超える紫斑蛇もいる。
殆どが弱点は口。口を開かない魔獣は尻の穴。
ミスリルゴーレムは魔核をレーザーで撃ち抜いた。
強力な魔獣を倒し終え、死体を収納してから周囲を調べてみる。
これ程の魔獣が1か所に集まるのは異常。
母さんが教えてくれたスタンビート?
だったら発生源がある。
魔力探知で瘴気を探る。
あった。
強い瘴気を発する沼地から魔獣が這い出している。
出て来た魔獣が争って共食いをしては上位魔獣へと変わっていく。
上位魔獣同士が共食いをすると、突然強力な魔獣になることがあると父さんから聞いた。
俺を襲って来た魔獣は共食いで生まれたのかもしれない。
瘴気を発する沼の上に飛び、大きさを測る。広い所で1km弱。
”闇穴“
全てを飲み込む巨大な闇の塊。
瘴気は勿論、周囲の土も魔獣も全てを飲み込む闇属性の上位魔法。
レイおじさんに教えて貰った。
直径1kmの巨大な闇の塊がゆっくりゆっくり沼に降りていく。
何の音もしないし、周囲が変わることも無い。
地面に闇穴の直径と同じ大きさの穴が開いていくだけ。
周囲の物を全てのみ込み、容量1杯になればそこで止まる。
止まる位置は闇穴の直径でほぼ決まる。
恐らく深さ10km程度の穴が開く、と思う。
小さな闇穴を3回試しただけなので判らない。
結果は後で調べる事にして、隠蔽を少し強めて大型魔獣を引き寄せる。
共食いで上位化した大型魔獣が次々に襲い掛かって来る。
倒してはアイテムボックスにポイ。
倒してはアイテムボックスにポイ。
倒してはアイテムボックスにポイ。
スタンビートが発生したらとにかく倒せ、共食いをさせるな。
母さんの教え。
魔眼を頼りに光弾、闇弾、レーザーを相手に合わせて撃ちまくる。
死体収納が忙しいので攻撃はちょっといい加減。
それでも魔眼が弱点を教えてくれるので大型の上位魔獣程度なら問題なく倒せる。
幾らでも入れられるアイテムボックスなので収納量の不安も無い。
丸3日、寝る事も無く戦うと流石に疲れた。
寝床になる筈の大きな木が魔獣に倒されて殆ど無い。
残っている木は目立ちすぎる。
眠い。
めっちゃ眠い。
仮眠が採れる場所を探していたら洞窟の中に人間の反応があった。
近づいてみると洞窟の入り口で若い兄ちゃんと姉ちゃんの6人が森狼の群れと戦っている。
洞窟の奥には20人程の反応。
光弾を撃ちまくって狼の群れを倒すと、兄ちゃん姉ちゃんが呆然と俺を見上げていた。
着地する。
「誰だ?」
「シェル。」
「シェル商会か、助力感謝する。一人か?」
「うん。」
「まだ小さいのに強いな。援軍はいつ来るんだ?」
「エングンって何だ?」
「兵か冒険者を連れて来たのでは無いのか?」
「知らん。3日寝てない。結界を張る、中に入れ。」
兄ちゃん姉ちゃんを洞窟の中に入れて入り口に結界を張った。
兄ちゃん姉ちゃんが結界を叩いて試している。
奥に入った。
「救援か?」
「知らん。疲れた、寝る。」
「水と食料は無いか? 皆3日間何も食べてないんだ。」
干し肉と水の樽を出して岩壁に寄り掛かって寝た。




