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15 禁書庫 

急に忙しくなった。

朝から商業ギルドで水汲み?

妖精の水の注文が殺到したと商業ギルドに呼び出された。

王宮の晩餐会で貴族達に妖精の水が出されたらしい。

自分でやるのはめんどくさいので、妖精の剣の使い方を教えて横で本を読んでいた。

暫くしてサブギルマスのおばちゃんが話しかけて来た。

「美味しいのは美味しいけど、シェルの水程の美味しくならないの。」

おばちゃんに言われて色々と試したが、樽の浄化も妖精の水の作成も俺の魔力で無いと味が落ちると判った。

めんどくさいがおばちゃんの頼みを断わったら後が怖い。

陛下の頼みは断れるけど、おばちゃんの頼みを断る勇気は無い。


大広間に並んだ樽を浄化して妖精の剣に魔力を流して水を注ぐ。

一つ終ると隣の樽。

水が入った樽は次々と運び出され、空の樽が置かれる。

注げども注げども空の樽が待っている。

商業ギルドは1樽白金貨1枚で注文を受けたらしい。

白金貨1枚って金貨100枚。俺なら3年暮らせるよ。

酒じゃなくて水だよ水。

当然原価はゼロ。

樽代と輸送費、ギルドの手数料以外が俺の儲けらしい。

明日から食後のデザートを1品追加だ。


なんでも貴族のパーティーで妖精の水を出さないと恥を掻くらしい。知らんがな。

「一時の流行です。すぐに注文が減りますから稼げるときに稼いで下さい。」

商業ギルドのギルマスに言われてジョボジョボと水を注いでいる。

ここ数日は朝から晩までジョボジョボ。

折角貰った閲覧許可証を使う暇もない。

本は逃げないから良いけど。

社交シーズンが終わると水の注文が激減した。

お金を稼ぎたいわけでは無いから商業ギルドから解放されてほっとしている。

それでも週に1日は来て欲しいと頼まれてしまった。

週に1日ならまあいいか。



グラーフがおっさん二人と兄ちゃん一人を連れて俺の寝床の木で待っていた。

「この3人が以前お話した元従業員です。」

「うん。」

「「「よろしくお願いします。」」」

礼儀正しい。妖精さんも嬉しそうにしているから大丈夫。

「何の商売?」

「私は王都を離れられませんので、王都で商品の販売。3人には馬車を使って他国での商品の仕入れを担当して貰います。」

「・・・・、魔法袋。」

「魔法袋ですか?」

アイテムボックスから魔法袋を4つ出した。

「これを使っても宜しいのですか?」

「使用者制限、4人。血1滴。」

使用者制限の魔法陣を描き、4人に血を1滴ずつ垂らさせた。

「4人だけ。他、出し入れダメ。」

「ありがとうございます。1つにどれ程入るのでしょうか。」

「この木、5~6本?」

俺が寝床に使っている大きな木を指した。

「「「ええっ!」」」

「たぶん。」

「有難うございます。この魔法袋があれば馬車でなく馬で荷を運べます。」

グラーフ達が喜んで帰って行った。



ようやく王宮の禁書庫に行けた。

案内された部屋に入ると奥に大きな扉。

その前には2人の兵士。

兵士に閲覧許可証を見せると、小さな木の槌でドアに付いた皿のような所を叩く。

すぐに中からドアが開いた。

開けてくれたのは体格のいいおばさん。奥の机には長い髭のお爺さんがいる。

俺の閲覧許可証をおばさんが受け取り、お爺さんに渡す。

「右手が書庫で御座います。こちらで閲覧する書物を確認して左手の閲覧室で読んで頂きます。一度に持ち出せる書物は2冊まで、閲覧室横の休憩室でお茶と軽食が召し上がれます。閲覧許可証はお帰りの際にお返し致します。」

丁寧に説明してくれた。

早速書庫に入らせて貰う。

王宮書庫と比べると10分の1くらい。

棚ごとに歴史、政治、経済、魔法、植物、魔獣などの項目別に整理されている。

魔法の棚を見ると、他の書庫では見た事の無い上級魔法の本が並んでいる。

転移魔法の本もあったが、中を開いて愕然とする。

古代語よりも古い前期古代語。

古代語はかなり読めるようになったが前期古代語となると厳しい。

単語の用法や表記が違う場合も多い。

それでも読んでみたくて閲覧室に持ち出すことにした。


「前期古代語の辞書はご入用ですか?」

受付で閲覧確認をして貰ったら声を掛けられた。

「お願いします。」

辞書があれば少しは読めるかもしれない。

丸1日掛かって3ページ。1ページは目次で数行しかない。

ぐぬぬ。

時間を作って禁書庫に通い詰めた。

少し気候が春めいてきた頃本の3の2程まで読み進むことが出来た。

頭の中で転移魔法発動のイメージが固まって来る。

目の前への近距離転移を試してみた。

発動しない。

もう一度魔法陣を確認する。

間違いは無い。

“転移”

魔法を発動したら壁に魔力が吸い込まれるのが見えた。

閲覧室を注意深く観察してみると、魔法無効の結界が張られていた。

成る程、本を真似して魔法を発動させるバカがいるからか。

俺だった。


この結界の中に閉じ込められたら脱出出来ない?

結界の解析の方に興味を引かれた。

書庫の管理人たちに気付かれないよう、今まで通りの本を今まで通りに辞書を引きながら読んでいる振りをして結界魔法の解析をする。

今日で4日目。

魔法発動には必ず起点となる場所がある。

起点には魔法式か魔法陣が描かれている。

注意深く魔力の流れを追う。

起点が判らないように迷路のように曲げられた魔力の流れを丁寧に追いかける。

あった、いやダミーだ。

余程性格の悪い魔導士が作った結界のようだ。

今日はここまで。

破られない結界をどのように張るか、良い勉強になった。

前期古代語に慣れてきて、結界の解析をしながらでも転移魔法の本を少しずつ読み進める事が出来るようになった。

結界の方も魔導士の癖が判って来た。

二つを交互にすることで気分転換が出来ているのだろう、どちらも進行速度が速くなった。



アチャ~、危ない危ない。これって警報だよ、慎重にやっていて良かった。

結界魔法の解析は面白かった。

設置型の結界魔法の場合、解除されないためにはかなり複雑な隠蔽工作が必要らしい。

打撃軽減と魔法攻撃軽減をベースに魔力吸収と魔法無効の重ね掛け?

これが魔法無効の魔法陣か。

現物が目の前にあると特定箇所を詳しく調べられるので面白い。

ここが結界を変更可能にする接近許可の文字列か、すげえな。

ここを変えれば発動した魔法を迎撃できる?

魔獣にもドラゴンのように魔法を跳ね返す魔獣と斑蛇のように魔法を無効化する魔獣がいる。魔獣の無効化とはどう違うのだろう。

調べたいことがどんどん増えていく。



学生ではないので夏休みは関係ない筈だが、何となくいつものように山に籠る。

書庫に閉じ籠る日が多かったので体を動かしたくなったから。

行き詰った時には思い切り体を動かすことで新しい発想が生れる時もある。

思い切り走り回って体を鍛える。

同じ魔法を何度も発動して魔力操作の精度を上げる。

小さな事をコツコツと。

好きではないが、攻撃魔法の練習もした。

いざという時に精度が悪くてはダメだ。

少しスッキリとして王都に戻った。



新年度が始まり、恒例の身体検査。

身長は一段と伸びて129㎝、大台の130㎝までもう一息。

毎年3㎝伸びているので、20年後の31歳には189㎝。大男だ。

いつものように食堂で昼食。

今日は少し出遅れたのでいつものメンバーはもうテーブルに着いている。

食事の乗ったトレーを持ってマエスト達のテーブルに向かう。

おっと、後ろにいた奴が俺の足を払って来た。

ヒョイっと避ける。

「いてっ!」

俺が避けたので近くのテーブルを蹴ったらしい。

連れらしい男が俺の尻に回し蹴りして来る。

ガチャン!

テーブルの上のトレーが落ちたらしく大きな音がする。

腰を捻って避けたので蹴った男がバランスを崩して横のテーブルに当たったらしい。

「ふざけんな!」

もう一人の大男が体当たりしてくる。

俺のバリアに弾かれて後ろのテーブルをひっくり返す。

「この野郎!」

足を払った男が剣を抜いて俺に切り掛かってきた。

残りの2人も剣を抜いて切り掛かって来る。

周りの生徒達はトレーを持って離れていく。

うん、食べ物を粗末にしちゃダメだよね。

ガン、ゴン、ゴン、ガン。

3人が剣で結界を叩いている。

少し煩いが問題は無い。

「遅くなった。」

マエストの所に行ったが、3人ともトレーを持って立ち上がっている。

「そいつらは何だ?」

「知らん。」

「くそっ、貴族に対する侮辱罪だ。警備兵だ、警備兵を呼べ。」

大男が喚いているけど、誰かが連絡したらしく警備兵達がこちらに近づいているのが探知で判る。騒がなくてもすぐに来るよ。

「何があった。」

ほら来た。顔見知りの隊長さんがいるから任せておけばいい。

「この平民が俺達貴族に無礼を働いた。外に放り出せ。」

最初に足を出した男が隊長さんに命令した。


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