14 Sランクです
「レイスキングはどのような姿であった?」
陛下のおっさんに呼び出された。
「立派な服。顔は骸骨、頭に王冠。」
「王冠か。」
「小さい頃、転がして遊んだ。」
「レ、レイスキングの王冠を転がして遊んだと。」
「言われたら思い出した。」
「・・・レイスキングが王都に危害を加える恐れは無いのだな。」
「無い、と思う。」
「屋敷には手を出さぬように命じてある。380年前の約定通りだ、それでよいのじゃな。」
「うん。」
「レイスキングはあの屋敷で何をしておるのだ?」
「魔法の研究?」
「魔法の研究・・・か。それは王都に害をもたらさぬか?」
「知らん。」
「またあの屋敷に行く事はあるか?」
「うん。」
「では、王国はレイスキング殿に危害を加えぬ。願いがあれば出来る限り叶えると伝えてくれ。一応書状も用意するからそれも届けてくれ。」
「うん。」
宰相に指名依頼の報酬をギルドで受け取るように言われたのでギルドに行った。
「報酬はギルドカードに振り込んである。これが新しいギルドカードだ。」
渡されたのは銀色に輝くギルドカード。
ギルマスの顔を見る。
「Sランク冒険者2名が断った依頼を達成したのだ。ギルド本部も満場一致でSランク昇格を決定した。」
「・・・・。」
「目立つのが嫌いなのは知っているが、満場一致だ。諦めろ。」
依頼達成って言うけど、レイおじさんに色々と教えて貰ったり昔話をしただけなんだけど。
あっ、素材を一杯あげた。
「瘴気の流出が止まったので神官による王都の浄化も進んでいる。シェルの功績だ。」
「はあ。」
なんとなく後ろめたい感じが拭えないけど、ギルマスがそう言うならまあいいか。
AランクもSランクも目立つのは変わらない、筈。
首になりました。
Sランク冒険者を1教授が雇う事は出来ないそうです。
学院に残りたいと言ったら、名誉学院長にさせられました。
仕事は一切無いと言う事で引き受けました、追い出されたら食堂が使えないから。
食堂が使えないと日替わり定食が食べられない。
陛下のおっさんが料理人やメイド付きの屋敷をくれると言ったが、借りを作るなという母さんの言葉を守って断った。
住み慣れた木の枝が使えます。
優しいおっちゃんやおばちゃんがいる食堂も使えます。
その代わり今まで教授が払ってくれていた食事代が自腹になりました。
まあいいか。
変わったのは俺が寝床にしている木の周りに柵が出来て“Sランク冒険者シェル閣下邸”と書かれた大きな看板が付けられたこと。
なんのこっちゃ。
生活は変わらない。
教授のお仕事は無くなったが、週に一度教授の研究室に”遊びに“来るよう言われたから。
あれ、お給金が無くなっただけ?
お姉さんに逆らうのは怖いからまあいいか。
週末は相変わらず薬草採取。
探知魔法と飛行魔法の訓練ついでに薬草採取をする。
今までは沢山あった指名依頼が無くなった。
Sランク冒険者の指名料が高すぎるので余程高価な薬草でないと割が合わないらしい。
仕方がないので常時依頼の薬草を採取する。
初級冒険者が行かない遠い場所で採取しているが、あまり採り過ぎると買取価格が下がって冒険者に迷惑が掛かる。
今までは1日に金貨3枚ほど貰えたのが2枚になった。
お金が欲しいわけでは無いが、同じ薬草を同じ量納入しているのに理不尽だ。
探知魔法の練度が上がったので薬草採取は短時間で済む。残りの時間は魔法の練習。
幸い今は晩秋の盗賊シーズン。
探知魔法を目一杯広げて盗賊を探知。
襲い掛かるまで離れて待機、襲い掛かった瞬間に麻痺魔法で倒して重力魔法で浮かせて王都の大門で警備隊に引き渡す。
街道の東西南北と方角を変えて飛び回ると盗賊さんが結構見つかる。
色々な魔法の練習になるし討伐報酬が大きいらしいので大きな収入になっているらしい。
らしい、って言うのは明細をチェックしたことが無いから。
俺は知らないけど、ギルマスが言っていた。
お金は食堂の支払いが出来ればそれでいい。
贅沢をして日替わり定食にデザートや飲み物を付けても1ヶ月に金貨3枚で足りる。
盗賊のアジトで見つけたお金だけで十二分。
カードの残高を気にする必要は無かった。
週に1度、教授の研究室へ“遊びに”行くと、今日も宰相がいる。
「何か欲しい物は無いか」
いつもそればかり。
干し芋はあまり好きではないので持っていない。
「無い。」
宰相が帰ると商業ギルドのギルマスとおっさん達が入って来た。
「今までは研究助手ということで教授にポーションのレシピ使用申請の管理もお願いしていたが、Sランクになったので教授に頼む事が出来ない。そこで、登記関連や商業ギルドとの連絡をする使用人を雇って欲しい。」
「使用人?」
「このグラーフは父親の店が破産して借金奴隷となった男だ。父親と親しかったので俺が買い受けた。まじめだし有能だから使用人として使って欲しい。」
何度かポーション関係で俺の担当をしてくれた兄ちゃんだ。
「家が無い。」
「近くに借りればいい。グラーフに元手を与えて商売をさせれば食い扶持くらいは自分で稼ぐ。」
突然の事で何が何だか判らない。
「・・・・。」
「シェルは突然所在不明になるから、ギルドとしても困る。王都を離れる時にグラーフに伝えておけばギルドとしても助かる。」
「判った。」
「商売の元手を少し渡してやってくれるか。商業ギルドの口座から新しく作るシェル商会に移すだけだから、書類にサインを貰えばシェルは何もしなくていい。」
「うん。」
「幾ら移す?」
「全部。」
「全部ですか?」
「冒険者ギルドのカード。」
商業ギルドの口座は確認した事が無いので幾らあるのかも知らない。
全部でも足りなければ冒険者ギルドのカードから引き出せばいい。
「そうだったな、Sランク冒険者だと言う事を忘れていた。さすがは金持ちだ。グラーフは有能だ、決して無駄な金は使わぬから安心して任せろ。保証人は俺だ。何かあれば俺が責任を取る。」
「うん。」
俺って金持ちなの?
まあギルドカードからお金を引き出したのは妖精の剣の鞘を作った時だけ。
食堂のお金は教授が払ってくれていたからお金を使ったことは無い。
判らん。
「シェル様。」
「うん?」
「昔父の商会で働いていた男を雇っても宜しいでしょうか。」
「うん。」
何枚かの書類にサインをして、横で待っていた魔導士のおっさんに奴隷契約の掛け替えをして貰った。
Sランクって面倒な事ばかり。
全然嬉しくない。
次の週も宰相が来た。
「何か欲しい物は無いか」
いつもそればかり。
「無い。」
いつものように答えていたら、寝床に使っている木の周りの柵が立派な石壁になり、門が付けられた。門の横には小屋が建てられて衛兵が常駐している。
何なんだ?
要するに貴族や外交官に俺の謁見を見せたいが、与える物が何もないと恥を掻くらしい。
柵を作ったら却ってみすぼらしいと言われて石壁になったそうだ。
知らんがな。
「シェル、禁書庫を見たくは無いか?」
今週は違う事を聞かれた。
「キンショコ?」
「王族以外は入れぬ書庫がある。そこには王家秘蔵の古文書が沢山所蔵されている。」
「見たい。」
本に釣られた俺がバカだった。
朝からお姉さん達に風呂に入れられ、全身を洗われた。
毎日洗浄魔法を掛けているから汚くないのに、全身をくまなく洗われた。
謁見ってお尻の穴まで見せるの?
勿論前も念入りに念入りに念入りに洗われた。
ちょっと気持ち良い?
そこって全員が交代で洗う所?
「王宮だけの秘密です。」
聞いてみたが一言で却下された。
お天道様と女性には逆らえない。
気持ち良いからまあいいか。
王宮では背中をポヨンポヨンで洗うの?
腕や足ってお股に挟んで洗うの?
気持ち良いからまあいいか。
「王宮の入浴作法は秘密で御座います。決して他言なさらぬように。」
お風呂が終わった時にお姉さんから言われたけど、タゴンて何?
タのゴン? タゴのン? 判らん。
全身をマッサージされながら良い香りの油?が塗られる。
香りは良いけど魔獣に気付かれるから匂いは付けたくないんだけど。
髪を整えられ、顔に筆で何かを塗られる。
何か妙に肌触りの良い服を着せられた。
「Sランク冒険者、シェル閣下~!」
大きな声が響き渡る。
大広間の中央に敷かれた絨毯を歩く。
両側には立派な服を着たおっさんが一杯いる。
王座の前で胸に拳を当てる。
「Sランク冒険者シェルだ。」
うん、教わった通りに出来た。
「シェル閣下より、献上の品が御座います。ひと~つ、妖精の水5樽。」
貴族達が首を傾げている。
「ひと~つ、ワイバーン2頭。」
騒めいた。
「ひと~つ、バジリスク1頭、以上。」
ざわめきが大きくなった。
「献上の品受け取った。シェルには王宮禁書庫の閲覧許可証を与える。」
「有り難き幸せ。」
って、これだけの為に俺は尻穴の中まで洗われたのか?
王宮と言う所は平民の俺には理解できない場所のようだ。




