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13 レイおじさん

学院の授業は古代語Ⅱだけ。

書庫で古代語の文書を読み込んでいることもあって大抵の文書なら辞書なしで読めるようになった。

教授に言われたのお仕事は妖精さんを集めて魔力のおやつをあげる事。

教授が目を近づけて妖精さん達を観察しているが、何を研究しているのかは判らない。

俺は週に2日授業や学院の書庫。

2日は王宮の書庫。

1日が教授のお仕事で週末はいつもの通りにギルドでお仕事。

朝のトレーニングは続けているし、木の上で寝るのも継続中。

長い休みには故郷の山に籠って集中訓練。

おかげで身長も筋力も格段に伸びた。



「おめでとう。」

夏休みを終えてギルドに魔獣素材の納品に行くとお姉さんに祝いの言葉を言われた。

「??」

「シェルが10歳になったのよ。」

「??」

「ギルドカードは10歳から年齢が表示されるの。」

「そうなの?」

「だから今月か先月がシェルの誕生月。ようやくシェルの歳が判ったの、良かったね。」

「はあ。」

歳が判ると良いの?

父さんは女性に歳を聞くのはグリフォンの尾を踏むのと同じって言ってたよ。


教授に報告したら、料理人を呼んでお祝いしてくれた。

陛下のおっさんまで来ているのは何故だ?

身長を測ったら126㎝。

順調に3㎝ずつ伸びている。

30歳で186㎝、ダンテに追いつける。

小さな事からコツコツと頑張ろう。



「困った問題が起きた。」

「はあ。」

宰相が暗い顔をしている。

めんどくさい事を頼まれそうな嫌な予感。

「レイスの瘴気が漏れ出て周囲に魔獣が発生している。」

「レイス?」

「魔導師のアンデッドだ。」

「うん。」

レイスは知っている。なんで瘴気ガ漏れるのかが判らない。


「380年程前に同様な事が起こり、Sランク冒険者が討伐を依頼された。瘴気の元が屋敷に住み着いたレイスと判ったものの倒すことは出来ず、レイスと交渉して屋敷には手を出さない代わりに瘴気を外に漏らさないようにすることで決着したと記録にある。」

「はあ。」

「この大陸には2人のSランク冒険者がいる。レイスの討伐を依頼したところ、アンデッドとは相性が悪いと断られた。」

「はあ。」

ますます嫌な予感。

「シェルはこの国の冒険者では最高のAランク。レイスと同じ闇魔法が使える。レイスに対抗できる光魔法も使える。王国としてシェルにレイスの討伐を依頼したい。」

「嫌。」

「何故だ?」

「レイスは嫌いじゃない。戦いは嫌。」

「レイスと会ったことがあるのか?」

「レイスは無い。レイスキングさんは時々山に来てた。」

「話をしたのか?」

「母さんが楽しそうだった。」

「そうか、シェルの母親も闇属性であったな。レイスキングとは知り合いなのだろう。ならばレイスもシェルの話も聞いてくれるかもしれぬな。」

「判らん。」

「Sランク冒険者でも倒せないのだ。シェルに倒せとは言わん。380年前の約束通りに瘴気を屋敷内に留めてくれれば屋敷には一切手を出さない。その約束を確認して欲しい。」

「・・・。」

「王国魔導士団でも教会の大司教達でも屋敷の結界の中には入れなかった。このままでは王都全体に瘴気が広まっていずれ人が住めなくなる。王都を救う為に、試せることは何でも試したい。魔導師団も教会も失敗したのだからシェルが失敗してもだれも責めることは無い。結界に触れるだけでもいいから行ってくれないか。」

ここに人が住めなくなるのは良くない。

「瘴気が止まれば良いの?」

「そうだ。瘴気の流出さえ止まってくれれば漏れ出た瘴気は教会の神官で浄化出来る。」

いざとなれば屋敷の結界の外にもう一つ結界を張ればなんとかなるかもしれない?

「屋敷の周りを壊すかも。」

「瘴気が酷いから屋敷の結界から200m以内には誰もいない。遠慮なく壊せ。」

「だったら行く。」



騎士団に護衛されて宰相と共に屋敷に向かう。

途中で兵士達が道を塞いでいた。

ここから先は立ち入り禁止のようだ。

神官の結界に守られた宰相と騎士団長が屋敷の見える所まで付いて来てくれた。

ここからは俺一人。

道を進んで屋敷の門の前に立つ。遠くから宰相達が心配そうに見ている。

「こんにちわ!」

大声で叫んだ。

挨拶は大事。父さんが言っていた。

「こんにちわ!」

もう一度叫ぶ。返答は無い。

困った。


”こんにちわ“

念話で呼びかけてみる。

“誰じゃ”

ビックリした。

“えっと、シェルです”

何も考えていなかったので思わず名乗っちゃった。

“シェルとはシェイドの息子のシェルか?”

えっ、俺のことを知っているの。

言われて思い出した。

ソウゾウシイお爺さんが母さんをシェイド、父さんをウィルって呼んでいた。

“うん。シェイドとウィルの息子のシェルだよ”

”良くここが判ったな。まあいい、中でゆっくりと話を聞こう“

門が開いた。


遠くで見ていた宰相達に親指を立てて大丈夫と合図を送って屋敷に入った。

後ろで門が閉じる。

石を敷いた道を行くと屋敷の正面。

扉が勝手に開く。中に入ると扉が閉じた。

うん、便利だ。

屋敷の中に入ると、どこに行けばいいのか気配で判った。

2階に上がって奥の部屋に行くと以前会ったことのあるレイスキングさんがいた。


“お久しぶりです”

“おう、久しぶりだ。シェイド様はお元気にしておられるか”

”ソウゾウシイっていうお爺さんが来て、任務に連れていかれた“

”ソウゾウシイ? ・・・、ひょっとして白い服で長い杖を持っていなかったか?“

“うん、先がグネグネ曲がった杖を持っていた”

”それは創造神様じゃ“

”ソウゾウシン?“

”この世界を作られた一番偉い神様じゃ“

“そうなの?”

確かに偉そうな態度だった。

“フムフム、シェルは創造神様の加護を頂いたようじゃの”

“うん、魔力が増えた”

“それは重畳”

”チョウジョウ?“

”この上なく素晴らしいという事じゃ“

“そうなの?”

“2000年程前に加護を頂いた者がいたらしいが、それ以外は記録が無い。ただ、加護を頂けてもそれを生かすのは難しい。鍛錬を怠るでないぞ”

“うん。小さな事からコツコツと頑張ってる”

”創造神様の言葉じゃな“

“うん”

“ところでここに来たのは何故だ。わしのことは知らなかったのであろう?”

”うん。レイスって聞いていたからレイスキングさんとは思わなかった“

”200年程前にレイスキングとなったのを王都の人間は知らぬようじゃな。わしとは知らずに訪ねて来たと言う事は何か理由があるのだな“

瘴気漏れの事を話した。

“それは済まぬことをした。ここ暫くはアイテムボックスの改良に取り掛かっておって、結界の事を忘れておった。さっそく張り直そう”

屋敷の結界が更新されたのを感じる。

”ありがとう“

”いや、わしの落ち度じゃ、よくぞ知らせに来てくれた。礼にわしの新型アイテムボックスの作り方を教えてやろう。自動整理機能で同じものが纏めて表示される優れものじゃ“

レイスキングが胸を張っている。

お礼にかこつけて新型アイテムボックスを自慢したいらしい。

“えっ、いいの”

”シェイド様には世話になってばかりだが恩を返すことも出来ぬ。シェルの手助けが出来れば儂の気が休まると言う事じゃ“

アイテムボックスの改修を教えて貰い、改修の苦労話も聞かせて貰った。

今研究中の変化薬に使う素材が足りないというので、俺のアイテムボックスを見せたら驚いて、ドラゴンの血やバジリスクの肝臓などを分けてくれと言われた。

使う予定もないので欲しいだけ上げたらめっちゃ喜んでくれた。

素材採取に行くのが面倒らしい。

話が弾んで俺の子供の頃の話になったが、めっちゃ恥ずかしくて困った。

レイスキングにおしめを替えさせた赤子はシェルだけだと楽しそうに言うのはやめて。

そんなことは覚えてない。

“シェルと話すのは楽しいぞ。また屋敷を訪ねて来い。それとわしのことはレイおじさんと呼べ、おしめを替えてやったのだからな”

“・・・、うん”

レイおじさんとおしめって関係あるの?

”困ったことがあればいつでも連絡しろ。念話の波長が判ったからこの大陸程度の距離であれば届く筈じゃ“

“うん、有難う。また来るね”

”楽しみにしておこう“



自動ドア?を通り抜けて屋敷の外に出た。

門の前には大勢の神官や兵士達、真ん中に宰相と騎士団長とギルマス。

話が盛り上がって宰相達の事を忘れていた。

「瘴気の流出が止まったのを確認した。レイスと話が出来たのだな。」

「レイスキング。」

「なんだと?」

「200年前、キングになったって。」

「そ、それでレイスキングは脅威では無いのだな。」

「うん、レイおじさん。良いアンデッド。」

「・・・、瘴気の件はなんと。」

「忙しくて忘れてた。結界を張り直した。安心。」

「ずいぶんと長い時間掛かったが、何か問題があったのか?」

「話が盛り上がった。また来いって。」

「・・・・。」

「とにかくシェルが問題を解決した。それでいいだろう。レイスキングと長時間交渉したんだ、シェルも疲れている筈だから少し休ませてやれ。」

「そうだな。レイスキングと向かい合うだけでも我らには無理だ。シェル苦労であった、ゆっくりと休むが良い。」

ギルマスのお蔭で寮に帰ることが出来た。

長時間なのはアイテムボックスの改修と昔話だけどまあいいか。


読んでくれてありがとうございます。

拙い作品ですが、継続して読んで下さっている方がいるという事が凄く作者の励みになっています。

投稿中の4作品はこれからも毎日更新する予定です。

見捨てずに読んで下されば嬉しいです。


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