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12 妖精の剣

「いかが致しましたか?」

「精霊が魔道具を作る。」

「精霊ですか?」

「シェルには沢山の精霊がついているの。その精霊たちが水の魔道具を作るって言っているみたいよ。そうでしょ?」

「うん。」

「是非、是非とも見学させて下さい。必要なものがあればすぐに用意いたしますので。」

“どうする”

”“いいよ””

”何かいる物はある?“

”この間倒したブルードラゴンの小さい歯“

”この間山で拾ったミスリル鉱石“

魔法袋から2つを出してテーブルの上に置いた。

小さな歯と言っても50㎝くらいはある。ミスリル鉱石は俺の頭位。

「それは何でしょうか。」

「ブルードラゴンの歯とミスリル鉱石です。」

「ブルードラゴン、・・・・。」

おっさんが絶句した。

“みんな、始めるよ”

「始めるそうです。」


ブルードラゴンの歯が小さな光の塊に包まれて段々と形を変えて行く。

小さな光の点一つ一つが妖精さん。

沢山の妖精さんが協力してくれている。

おっさん達だけでなくコマンも見入っている。

ブルードラゴンの歯が剣の形になっていく。

ちゃんと血抜きの溝もあるしガードもある。

柄頭が丸くなった。

ミスリル鉱石が光ってミスリルの細い糸が柄頭に巻き付いていく。

暫くしてミスリルの糸が微妙な動きを見せてから柄頭の中に吸い込まれる。

”“出来た~“”

およそ1時間、立派な剣が出来た。


「ありがとう。」

精霊さん達も疲れたらしく光が薄くなっている。

魔力をあげたら光が戻り、すぐにいつものように見えなくなった。

見えなくなる瞬間に小さな光が細かく別れたのが見えた。

小さな光の1つ1つが大勢の妖精さんが集まって出来た物らしい。

””嬉しい“”

妖精さん達から喜びの感情が送られてくる。

剣を持ってみた。

手にしっくりと馴染む。

切先をコップに向ける、って長すぎだろ。

50㎝程の歯が60㎝以上の剣になったので注ぎにくい。

”反対、水は柄頭から出る“

“へっ? 剣は何?”

”剣を腰に下げるとシェルがかっこよく見える“

そうなの?

俺が剣を持っていないので作ってくれたらしい。

柄頭を見ると先に小さな丸い突起がある。

突起をコップに向ける。

”魔力量で水の量が変わるから注意してね“

コップではやばそうな言い方。

水量の多い魔導具用に持って来たらしい桶に向けて魔力を少しだけ注いでみる。

あっという間に桶が水で一杯になった。

コップで汲んで飲んでみる。

「旨い。」

””“でしょう?”””

“ありがとうね”

もう一度妖精さんに魔力を上げた。

“”ワ~イ、ワ~イ“”

喜んでくれた。

「本当に美味しいわね。」

「私も頂いて宜しいでしょうか。」

「皆さんでどうぞ。」

皆がコップで汲んで水を口に含む。

固まっている。

「どうかしましたか?」

「これ程の水は飲んだことがありません。」

「私もです。」

おっさん達が一様に頷いている。

「うん、俺も。」

故郷の水よりも美味しい。

「これと同じ剣をもう1本造って頂けないでしょうか。」

「嫌。」

即答。

妖精さんから嫌悪の情が伝わって来たから。

「は?」

「妖精さんの好意。金儲けはダメ。」

「出過ぎたことを申しました、お忘れください。しかし、ブルードラゴンの歯はどのようにして手に入れたのですか?」

「襲って来たから殺した。」

「はい?」

「襲われたら躊躇なく殺せ、父さんの教え。」

「・・・、ではこの歯以外の素材もお持ちで?」

「うん。」

「私に売って頂けませんか。」

「嫌。」

「何故でしょうか。」

「金儲けは嫌い。帰る。」

煩そうなのでとっとと帰った。



鞘が要ると言う事でコマンが鞘師の店に連れて行ってくれた。

俺にはさっぱり判らないのでコマンに丸投げ。

鞘師が剣の寸法を測り、コマンが材料と模様を選ぶ。

「金貨70枚よ。」

「へっ?」

「お金よ、お金。買い物に来たんだから持って来たでしょ?」

「・・・・、忘れた。」

お金の使い方はだいぶ前に教えて貰ったが、買い物は初めて。

ギルドの報酬はカードに振り込まれるので現金は持っていない。

「はぁ。おじさん支払いは鞘を受け取る時でいい?」

「おう。Aランク冒険者だから問題ない。何よりもこんなに凄い剣の鞘を任せて貰えるだけで鞘師冥利に尽きる。受け取りの時に払ってくれればそれでいいぞ。」

「ありがと。」

コマンに来て貰えて良かった。

出来上がりは2週間後と言う事で仮の鞘を貸してくれた。

コマンに草原の風の家に連れていかれた。

家に着くとコマンが水樽の中身を捨てて浄化魔法を掛ける。

「ここにさっきのお水を入れて。」

「うん。」

水樽3つを水で満たした。

「本当に旨いな。」

ダンテ達も美味しそうに水を飲んでいる。

妖精さん凄い。



最近の王都は強盗が多い。

昨日も3人組の強盗に襲われたし、先週は学院の中で2回襲われた。

今は4人組の強盗。

麻痺させて縛り上げ、練習中の重力魔法で体を浮かせる。

後は縄尻を持って警備隊の詰め所に向かえば強盗さんは宙に浮かんだままついて来る。

妖精さんが早めに警告してくれるから簡単。

「おう、今日は2回目だなご苦労さん。」

「うん、そいつは闇魔法を使うから注意してね。」

男の一人を指さす。

「承知した。」

最初は色々と聞かれたが、今はそれだけで済むようになった。

詰め所には魔法を使えなくする首環があるから警告だけで大丈夫。

朝2人組を連れて来たばかり。

ちょっとめんどくさいけど重力魔法の練習も出来るからまあいいかと思っている。



採集依頼の完了報告に行ったらギルマスに呼ばれた。

「強盗捕縛ご苦労だった。」

そう言えば最近は強盗さんが襲ってこない。

「シェルの剣と魔法袋を狙った強盗だが、シェルがAランク冒険者だと知らされていなかった者が多くて、あっさりと依頼主を吐いてくれた。シェルに剣を作った場所を提供した魔導具屋と貴族7家が処分された。宰相は王都のゴミ掃除が出来たと喜んでいた。」

「魔導具屋?」

「最初は魔導具屋が裏ギルドで人を雇って襲わせたらしいが、うまく行かないので懇意の貴族に高額で買い取ると焚きつけて襲わせたらしい。財産没収で店主と貴族は処刑、店の幹部と家族は奴隷落ち。親族は国外追放になった。貴族も同様だ。」

「はあ。」

「国からも報奨金が出た。振り込んでおいたから確認してくれ。」

「うん。」

俺は重力魔法の練習をしていただけでお金が貰えたらしい。

お金は大切だ。

買い物にはお金がいるのだ。

剣の鞘以外は、まだ買い物した事が無いけど。



困った。

魔法袋が一杯になった。

ギルドの買取り場に行った。

「魔法袋が一杯。買取りお願い。」

いつものおっちゃんに声を掛けた。

「おう、シェルの魔法袋でも一杯になるか。よし、向こうの置き場に出せ。」

オーク集落殲滅事件で俺の魔法袋が沢山入るのを知っているおっちゃんが広い置き場を指示してくれた。

次々と魔獣を出す。

「なんで岩猪ばかりなんだ?」

「バカだから?」

「賢い魔獣はシェルを見て逃げるか。」

「うん。」

「岩猪ばかりだと値が下がる。他のは無いか?」

違うのをどんどん出す。

「待て待て待て。これ以上は保存庫に入らんし解体も間に合わん。」

出すのを止めた。

「グレートアウル、吸血大蝙蝠、ワイバーン。なんで飛行系ばかりなんだ?」

「寝ている時、襲って来た。」

「そうか、シェルは木の上で寝るんだったな。って、寝込みを襲われたのに何でいつも通りに眉間を1撃なんだ?」

「頭から突っ込んで来た?」

「はぁ。まあシェルだからな。残りは2週間後だ、それまではゆっくり休め。」

「うん。」



魔法袋の整理をしながら母さんと父さんが持っていたアイテムボックスの研究をする。

俺の魔力量が少なかったので父さんが魔法袋をくれたけど、お爺さんに魔力量を増やして貰った今ならアイテムボックスが作れる筈。

基本の魔法は魔法袋と同じなので魔法陣の構造は判っている。

ただ、収納空間を亜空間に構築するので隔壁を造るのに膨大な魔力がいる。

毎日疲れて眠るまで作業に没頭した。

10日掛かってようやく完成した。

父さんに貰った魔法袋同様に時間が停止しているので魔獣が腐ることは無い。

暖かいものは暖かいまま。

何よりも嬉しいのは魔法袋のように口を開けたり閉めたりする必要が無い。

大きなものでも触れるだけで収納できる。

大きなお皿に盛った料理をそのまま収納出来るし、平らにしたまま取り出せるので零れる事も無い。

うん、便利。


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