11 水の魔道具
新学期。
今年は古代語Ⅱだけにして書庫に籠ることにした。
練習も大事だが、知識も大切。
王都外での練習を増やすために3日は書庫、3日はギルド、1日は教授のお仕事になった。
「123㎝、去年よりも3㎝伸びたわ。」
やった~。
どうやとばかりに胸を張る。
「普通は年に6㎝位は伸びる年齢なのに、少し成長が遅いわね。」
ガ~ン!
そうなの? めっちゃへこんだ。
「大器晩成っていうから、そのうちググっと大きくなる?」
「・・・・。」
慰めてくれたらしいが、何で疑問形?
「大丈夫よ。男の子は伸び始めたら一気に伸びるから、たぶん。」
「・・・・。」
“たぶん”ってなんだ?
「腕周りとか太腿が大きくなったからその分身長に栄養が行かなかったのかもね。」
「うん。」
絶対にそうだ。
「まあそういう事にしておきましょう。」
結論が随分といいかげんな気がする。
「父上が喜んでいたぞ。」
昼食を食べていたらマエストに声を掛けられた。
友達二人と定食を持って俺のテーブルに着く。
「何で?」
「第3騎士団長がおとなしくなったって。」
「そうなの。」
「シェルに秒殺されたのを陛下に見られたからな。たかが平民の子供、俺なら簡単に勝てると貴族達に吹聴して王国騎士団長に推薦してくれるように頼んでいたらしい。1秒持たずに完敗だったから立場がないんだろ。」
「弱いのに?」
「弱い奴にはシェルの実力が判らないからな。」
「うん。」
大型魔獣は俺の魔力を感じて逃げるけど、ゴブリンや1角兎は襲い掛かって来る。
人間も一緒らしい。
「今度はシェルから1本取るって父上が張り切って訓練してる。」
「うん。俺、頑張る。」
「シェルの練習量は半端じゃないから父上では無理だな。」
「おいおい、息子が親を見放すな。」
友達らしい兄ちゃんが笑っている。
「父上も自分の歳を考えれば無理だと判る筈なんだけどな。」
「強い奴がいると倒したくなるのは武人の性分だ、諦めろ。」
「でも以前よりも若返ったからシェルには感謝しかないぞ。」
「そうなの?」
「毎朝夜明けとともにランニングしているよ。木の上で寝るのはさすがに危ないから母上に止めて貰ったけどな。」
あの巨体で木の上は無理だ。
「学院でも何人か夜中に木から落ちた奴がいるからな。」
「バカか?」
「バカだな。」
3人が大笑いしている。
何で笑っているのか判らない。
「木の上、変?」
聞いてみた。
「変。」
「なんで?」
「何でって、普通の人間なら寝ぼけて落ちる。」
「落ちた事無い。」
「それはシェルだから。」
「うん、シェル以外は落ちるな。」
もう一人も頷いている。
不可解だ。
学院の書庫で本を読んでいたら水の魔導具というのが書いてあった。
水が無くてひどい目に会った事が何度もある。
司書さんに聞いたら大きな魔導具屋さんなら扱っているらしい。
学院から近い魔導具屋さんの場所を聞いて早速行ってみた。
「こらこら、ここは子供の来る所では無い。」
玄関横に立っていたおっさんに追い返された。
子供はダメらしい。
教授が言っていた怪しいお店?
草原の風の家に行った。
「へ~、そんなこと言われたの。」
たまたまお休みだったコマンさんが一緒に行ってくれる事になった。
なんか悪い笑顔なんだけど大丈夫かな。
「ちょっと待った。うちは高級店だ、子供連れの冒険者は遠慮してくれ。」
さっきのおっさんに止められた。
「へ~、このお店は王宮にも出入り自由なAランク冒険者でも入れて貰えないの。」
コマンさん、何で店の奥に向かって大きな声で叫んでいるの?
「王宮に出入り自由な冒険者なんかいるものか。」
「王宮に行くと必ず宰相か大臣が出て来てくれるけど、ここでは店主すら出てこないんだ。ここの店主が宰相より身分が上とは知らなかったわ。シェル、陛下に頼んで一緒に来て貰おう。」
コマンさんが俺の手を引いて帰ろうとする。
陛下のおっさん呼びに行くの?
「しばし、しばしお待ち下さい。」
奥からおっさんが出て来た。
「何?」
「Aランク冒険者と言うのはあなた様でしょうか。」
「私じゃないわ。この子よ。さっき追い返されたからって私に付き添いを頼みに来たの。私じゃダメみたいだから陛下の付き添いを頼みに行くところよ。シェル、ギルドカードを見せてあげて。」
何だか良く判らないがギルドカードを出した。
「ええっ!」
金色のカードを見て、入り口に立っているおっさんが声を上げる。
「シェルが王宮に行くとすぐに宰相か騎士団長の所に案内されて、大抵は陛下も顔を見せるそうよ。シェル、そうよね。」
「うん。」
いつもそうだ。
「シェルが頼んだら陛下が付き添いに来てくれるかしら。」
「困った時は来いと言った。」
「じゃあ頼みに行こう。」
「うん。」
「しばし、しばしお待ちください。そのような方とは存ぜず店の者が失礼を致しました。ここは店先ですので、どうか店の中へお願いいたします。」
店の中・・・を通り抜けて奥の階段から2階に連れていかれた。
すぐにお茶とお菓子がテーブルに置かれる。
「本日はどのような物をお探しでしょうか。」
「水が出せる魔道具が欲しいんだって。」
「おい、水の魔道具を持ってこい。」
後ろに立っているおっさんが部屋を出て行った。
「陛下と会われた事があるのですか?」
「うん。」
即答したら疑わしそうな目で見ている。
「まことにご無礼致しました。どうかゴヨウシャ願います。」
なんか棒読みっぽい。
ゴヨウシャ? 何それ、美味しいの?
「ごめんなさいって謝っているの。許してあげる?」
俺が首を傾げていたらコマンさんが説明してくれた。
「うん。」
「水の魔導具にも色々と御座います。沢山の水が出る物、野営用のそこそこの水がある程度出る物、少量ですが美味しい水が出る物、どのような物をお探しでしょうか。」
「美味しい水。」
おっさんが後ろの男に目配せすると後ろの男も部屋を出て行った。
「すぐにお持ちしますので暫くお待ちください。シェル殿とはポーションを作られたシェル殿でしょうか。」
「うん。」
「シェルは商業ギルドもAランクよ。この店では2度も追い返されたけどね。」
何でコマンさんは嬉しそうなの?
「まことに申し訳ございません。2度と無いようきつく申し付けておきます。」
おっさんがテーブルに頭を擦り付けている。
それでなくても薄いのに、そんなに擦り付けるとハゲるよ。
さっき出て行ったおっさん達が部屋に入って来た。
箱をいくつか抱えている。
「こちらが一番美味しい水が出る魔導具です。注ぎ口をグラスに向けて魔力を送って下さい。」
水差しの様な物を差し出した。
箱は立派だったが魔導具は見るからにちゃちい。
魔力を送るとちょろちょろと水が出る。
“しょぼい”
精霊さんの声が聞こえた。
確かにコップ1杯出すだけで時間が掛かりそう。
“そんなに美味しい水じゃないね”
そうなの?
飲んでみた。普通の水。
いつも水筒に入れている故郷の山に流れていた川の水の方が断然美味しい。
”本当だ“
“でしょう”
精霊さんに伝えたら当然という感じで答えてくれる。
精霊さんも成長して時々俺に念話を送って来るようになった。
“この量じゃダメよね”
別の精霊さんも魔導具に興味があるらしい。
「こちらの魔道具は少し味が落ちますが量は出ます。」
ナイフ形の魔道具に魔力を送った。
数秒でコップが一杯になる。
“なにこれ、こんな水はだめよ”
“ほんと、味が全然ないわ”
精霊さんはもう味見をしたらしい。
俺も飲んでみた。
水だけど、なんか違う気がする。
”ねえ、私達でつくらない?“
”魔法式は判ったから作れるよね“
”造る~“
精霊さん達が喧しく騒いでいる。
「じゃあ造ろうか。」
““つくる~””
読んでくれてありがとうございます。
投稿初心者なので毎日新しい発見が一杯でワタワタしています。
校正が上手く出来ないので暫くはこのままです。
読者の数が増えるとめっちゃ嬉しくなって頑張れます。
これからも読んでやって下さい。




