10 精霊さんにお願いです
封印していた魔法を練習することにした。
山の空は危険。
空での動きは飛ぶ魔獣の方が圧倒的に早い。
バリアを蹴る方向転換が出来るようになったので今なら飛んでも魔獣と勝負になる。
俺の教えて貰った飛行魔法は精霊魔法。
周囲の精霊に呼び掛けた。
”我に力を与えたまえ“
沢山の精霊の力が感じられる。
精霊は埃のように漂っている。
人の目に見える小さな埃に成長するだけで数百年。
人に吸い込まれたり火で焼かれて数日で命を失う精霊が殆ど。
小さな人型になれる上位精霊まで数千年以上掛かる。
大勢いる下位精霊の力を借りるのが精霊魔法。
”精霊さん、浮遊魔法をお願いね“
精霊にとっていちばん易しいのは体を持ち上げる事。
もともと空中を漂っているのだからみんなが俺の下に潜り込めば体が浮く。
俺の体がふわっと浮いた。
大勢の精霊が俺を持ち上げてくれている。
眼には見えないが精霊の力は感じられる。
小さな事からコツコツと。
“ありがとう。これからもよろしくね”
挨拶は大切。
精霊達が俺の魔力を吸い取れるように体に薄く魔力を纏わせる。
精霊達が喜んでいるのが伝わって来る。
精霊の喜びを感じ取った他の精霊も集まって来た。
下位精霊なので1体1体の力は弱い。
だが大勢の力は強い。
精霊が見つけやすいように空に浮かんで魔力を与える。
自然の力を借りる属性魔法とは違い、精霊魔法は精霊に好かれないと発動出来ない。
幸いな事に小さい時から俺の周りにはいつも大勢の精霊が集まっていた。
精霊達に魔力を与え、もっと多くの精霊を集めて力を集める。
小さな事からコツコツと。
精霊には決して無理をさせない。
それが精霊魔法の極意と父さんに教えられた。
目立たない様に毎晩遅くに空に浮かんで精霊の力を集めること2か月。
精霊の力を体で充分感じる事が出来るようになると、王都の外に出た。
”精霊さん、飛行魔法をお願いね“
只持ち上げるのでは無く、方向と移動という難しい操作がいる。
立ったままゆっくりと俺の体が動く。
”うん、上手上手“
褒め乍ら魔力を与えると精霊さん達が喜んでくれる。
小さい頃は母さんと父さんがいたから大勢の精霊を集めなくても精霊魔法が使えたし、大勢の精霊を集めるとそれなりに魔力を消費するので練習させられたのは属性魔法ばかりだった。
日に日にお手伝いしてくれる精霊さんが増えているが、ソウゾウシイお爺さんのお蔭で精霊さんに沢山の魔力を上げても全く問題は無いほど魔力量が増えている。
精霊さんが疲れないように、少し飛んだら地上に降りて薬草採取。
週に2日は薬草採取がてら昼間の飛行訓練。
残りの5日は学院で夜の短時間飛行訓練。
授業の空き時間には書庫で精霊魔法の研究もする。
勿論身体トレーニングも欠かさない。
あっという間に半年が過ぎた。
夏休みになったので故郷の山に帰り、前回と殆ど同じメニューで訓練開始。
体が楽に動く。前回よりも身体強化を下げ、速度を上げて山を走る。
食事は飛行魔法の練習をしながら。
隠蔽を調整して夜は魔獣を遠ざけないようにする。
いつ襲われるか判らない緊張感が大切。
実際に夜行性の飛行魔獣に何度も襲われたが躊躇せずに殺せた。
勿論俺も探知魔法を発動していたが、精霊さんは悪意や殺意に敏感なので俺が気づく前に教えてくれる。
“ありがとうね”
感謝の言葉と共に沢山の魔力をあげたらめっちゃ喜んで、熱心に悪意や殺意を警戒してくれるようになった。
訓練の後半頃には早めに警報を出してくれるようになったので、襲われても余裕で倒せるようになっていた。
「雰囲気変わった?」
教授は俺を取り巻く精霊さん達に気が付いたらしい。
故郷の山には精霊さんが沢山いて大勢が王都に付いて来てくれたのだ。
「精霊さん。たくさん友達。」
「精霊と友達になったの?」
「うん。」
「精霊と友達になれるのはエルフだけって聞いたけど、シェルはエルフじゃないよね。」
「違う。」
「どうやって友達になったの?」
「魔力あげた。」
「シェルの魔力量はエルフ以上だから出来たのね。」
「うん。」
「精霊と友達になって何かするの?」
「飛ぶ。」
「飛ぶ? って、飛行魔法?」
「うん。」
「精霊魔法も使えるようになったの?」
「うん。」
「シェルが規格外なのは知っているけど、精霊魔法までとは思わなかったわ。見せて貰っても良い?」
「目立つ。」
「王都の外ならいい?」
「うん。」
精霊さんが俺の意思に合わせてくれるので、バリアを蹴っての方向転換にもちゃんとついて来てくれる。俺の魔力を吸収して精霊さんも日に日に成長している。
教授が俺を見上げて驚いている。
「飛行魔法とバリアを使った方向転換を組み合わせたのね。」
「うん。飛行魔法は遅い。」
久しぶりに王宮の書庫に行ったら騎士団長のおっさんに掴まった。
「一手どうだ?」
「うん。」
前回は調子に乗って寝込んだが、今日は冷静に出来そう。
団長のおっさんとの訓練は楽しい。
身体強化は普通にして飛行魔法で戦った。
剣速が速いし剣筋が読みにくいので面白い。
全力で戦える相手は団長のおっさんしかいない。
腕の筋力が付いたので団長の剣を流す事が出来るようになった。
「参った。」
初めて1本取れた。
団長さんが息切れして足が縺れたからだけど、1本は1本だ。
「ずいぶんと腕を上げたな。」
「頑張った。」
「おい、俺の相手をしろ。」
怖い顔のおっさんが来た。
「誰?」
「第3騎士団長だ。シェルなら5秒で倒せる。」
「何だと、餓鬼一人に総がかりで負けた騎士団の団長が大きな口を叩くな。」
「5秒要らない。」
「何だと?」
怖い顔のおっさんと向き合った。
「始め!」
縮地で懐に飛び込んで剣を振り抜く。
カーン!
ガガ~ン。
良い音を立てて飛んで行ったと思ったら訓練場の壁に当たって壁を壊した。
壁が無ければ場外?
第1騎士団の騎士より弱かった。
「1秒掛からなかったな。」
「うん。」
「お前らも総がかりでやるか? 治癒魔法士がいるから死ぬことは無いが、軽傷者は放置だ。全員に治癒魔法を掛ける程魔力が無いからな。」
第3騎士団らしい男達が首や手を振っている。
戦う気は無いらしい。
「この前は寝込んだらしいな。」
「身体強化、強すぎ。」
「済まなかった。」
「俺、悪い。勉強。」
「しかし強くなったな。」
「えへへ。」
ちょっと胸を張った。
「飛行魔法、見事である。」
陛下のおっさんも見ていたらしい。
「書庫の本に書かれていたのか?」
王子の兄ちゃんも覚えたいらしい。
「父さんに教わった。」
「何故今まで使わなかった?」
「遅い。空、危険。」
「バリアの方向転換が出来るようになったからか。」
「うん。」
「だいぶ筋肉が付いたようだな。」
「訓練。」
「今も木の上で寝ているのか?」
「うん。」
「屋敷を与えても意味が無いのが良く判った。」
「あっ、成人ありがとう。」
成人ナンチャラを貰った事を思い出した。
別に嬉しくもないが、何かを貰ったらお礼を言えと父さんに言われた。
「今は役に立つとは思えぬが、場合によっては役立つこともある。何も渡せぬのでは立場上具合が悪いからな。」
陛下のおっさんも色々と苦労があるらしい。
9月投稿開始の初心者ですので乱文、誤字はお許し下さい。
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