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魔法少女、嫁になる。  作者: アブラゼミ


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第48話 ミソラとクロカゲ①

ある日の夜。

ウスグラーイ領ウスグラーイ城のクロカゲの居室に、リアル・ワールドでも使っていたテレポート魔道具で移動してきたミソラがやってくる。

王都の王城のミソラの部屋と、ウスグラーイ領ウスグラーイ城のクロカゲの部屋をつなぐテレポート装置を使って、ミソラは毎晩クロカゲの部屋に来ているのだった。


「クロカゲさん、大事なお話があります」


開口一番、真剣な表情でミソラがいきなりそんな事を言う。


「…何だ?」


ただならぬ様子に、クロカゲが緊張の面持ちでミソラに問いかける。


「私達の式の日取りが決まりました。2ヶ月後の6月の第三日曜日です。こちらに色々まとめてありますので、ご確認をお願いします」


普段の底抜けに明るい様子とは違う、真剣かつ気品も感じさせるミソラのしゃべり方に気圧されながら、クロカゲが書類を受け取る。


「………場所は、王都の大聖堂。神父は最高司祭、参列者は1000人、式後は超一流レストランで披露宴と王都でパレード…!?」

「王女の結婚ならそれくらい当たり前です。私の顔を国民に売る機会でもありますから、盛大にやる予定です。魔道具で王国中に中継もします」

「…」


分かっていたとはいえ王女との結婚式の規模と内容にクロカゲが震え上がるが、一番震え上がったのはその予算の金額だった。


「こんな額…、ウスグラーイ領の1年の予算を超えてるぞ…! 俺払えないぞ…!」

「なんでクロカゲさんが払うおつもりなんですか。ちゃんと国費を積み立てて用意していた私の結婚資金を使います」


ミソラの言葉に、クロカゲがホッと肩をなで下ろす。


「でも…、正直この額は使いすぎな気がするな…」

「ケチくさい事言わないでください。王家の権威を示すためにもこのくらいは当たり前なんです。…ですが、一般国民の感覚からいえばクロカゲさんのご意見が正しいのかもしれません」


リアル・ワールドで庶民の感覚を学び、マジカル・ランドとは違う世界観を取り込んだミソラが神妙な表情になる。


「クロカゲさん、私は近い将来女王になります」

「あ、ああ…」

「そしてこのマジカル・ランドにはびこるおかしな慣習や法律や制度を、変えるつもりです」

「…」

「リアル・ワールドで学びました。色んな価値観や色んな考え方や、リアル・ワールドの歴史を。もちろんマジカル・ランドとリアル・ワールドは違いますが、変えなければならない事は変えないといけない。その必要があると思います」

「…ああ、そうだな」

「いきなり変えると混乱や反発が出るでしょうし、少しずつ変えていく予定です。クロカゲさんにはそのお手伝いをしていただきます」

「…ああ」

「ウスグラーイ領領主をしながらそれをするのは、無理があると思われます。なので数年以内に次の領主を引き継ぐ相手を考えておいてください」

「…分かった。考えておく」


意外と考えているミソラの言葉に、クロカゲも神妙な表情で頷く。


「でもその前に、しておかなければならない事があります」

「…何だ?」


結婚式の資料を受け取り、机の上に置いたミソラがクロカゲにズイと近づく。




「子作りをしましょう」

「………は?」



「子作りをしましょう」

「いや、あの…」



「子作りをしましょう」

「ちょ、ちょっと待てミソラ! どうしてそうなるんだ!?」



自分のシャツのボタンに手をかけようとするミソラを手で制し、クロカゲが慌てて問いかける。

それに対してミソラが、相変わらずの王女様モードで話し続ける。


「私が即位する頃には、私は20代後半か30代になっていると思います」

「あ、ああ」

「独身である方が男性人気は得られるでしょうが、国内の半分は女性です。子どもがいた方が女性達の人気が高くなると思います。『この女王なら子育ての苦労を分かってくれるだろう』と」

「そ、そうだな…」

「なので子作りをしましょう」

「いやいやいや! 早すぎるって!」

「クロカゲさん、私もう18歳ですよ?」

「いや、でも…」

「クロカゲさんは、私としたくないんですか?」

「いや、それは…」

「クロカゲさんは、私の事好きなんですよね?」

「…好きだ」

「じゃあしましょう」

「い、いやちょっと待て!」

「待ちません! 今夜私はクロカゲさんに私の初めてを…!」

「スリープ!」

「スヤァ」


追い詰められたクロカゲが、催眠の魔法でミソラを眠らせる。

「あ、危なかった…!」


最初は理論武装で、最終的には力業で迫ってきたミソラに押し切られそうになったクロカゲが、荒い息を吐きながら眠るミソラを受け止める。

小さいながらも柔らかくて女性らしい身体だ。最近はますますその魅力に磨きがかかっているように見える。さすがはプリンセスというほかない。


「…大事に、したいんだよ。君の事」


王から口酸っぱく言われてるのもあるが、好きだからこそ大事にしたいという気持ちがある。

クロカゲはミソラをベッドまでお姫様抱っこで運び、かけ布団をそっと掛ける。


「…おやすみ」


ミソラの頭をそっと撫で、クロカゲも自分のベッドに入り明かりを消す。

ドタバタして疲れたせいか、眠りはすぐに訪れた。




…翌朝、クロカゲが目を覚ますとすごく不機嫌そうなミソラが腰の上に馬乗りになっていて大変困る事になるのだが、それはまた別の話である。

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