表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女、嫁になる。  作者: アブラゼミ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/50

第47話 魔法少女、花嫁修業をする

「ありえない、ありえないありえないありえなーい!」


前・ウスグラーイ領領主の家で、現・ウスグラーイ領領主の秘書を務める女が声を上げる。


「クロちゃんのお嫁さんには私がなる予定だったのにい! 何よ王女様ってえ! 何よ結婚ってえ! そんなのあんまりよお!」


女の名はクーリエ。ウスグラーイ領の孤児院で育ったクロカゲの幼馴染みだ。


「ティル爺! なんとかしてよお! 王女様に呪いとかかけてさあ!」

「ヒャッヒャッヒャッ! 滅多な事言うでない。恐ろしい刑を受ける事になるぞ」


クロカゲにウスグラーイ領領主を押しつけた前・ウスグラーイ領領主の魔法使いの老人が、独特の笑い声を上げクーリエをたしなめる。

マジカル・ランドに死刑はないが、重罪人には死よりも恐ろしい刑罰がある。


「あの大臣みたいに一生頭に器具をかぶせられ、魔力を吸い取られ続ける廃人になりたいのかの?」

「うっ…」


先日反乱を起こし、クロカゲとマジカル・プリンセスにコテンパンにされ捕まり、家は取り潰し、領主も貴族の地位も剥奪、息子は色々な犯罪を暴かれ一生強制労働の刑、自分は一生廃人にさせられた大臣のニュースを思い出しクーリエが何も言えなくなる。

おかげでウスグラーイ領に本来入るはずだったお金が返ってきて、クロカゲの手により公共投資が充実されウスグラーイ領がちょっと豊かで便利になったが自分が同じ目に遭うのはゴメンだ。


「っていうかあ! ティル爺が交付金とかちゃんと確認してたらこんな事にならなかったんじゃん!」

「ヒャッヒャッヒャッ! そうは言ってものう。老眼で確認するのがつらいし国の制度とかよく分からんかったしのう」


御年90歳になるティル爺の、いい加減さに呆れつつクーリエがため息を吐く。


「クロちゃんが領主じゃなくなっちゃったら私の仕事がなくなっちゃうしい、そもそもクロちゃんを取られるのが嫌だしい、どうすればいいのよお~!」

「諦めるしかないのう、ヒャッヒャッヒャッ!」

「…」


ティル爺の言葉に、クーリエが口をへの字にして押し黙る。

そう、諦めるしかない。

自分がミソラに勝てる所なんて胸の大きさくらいだし、そもそもクロカゲは自分に振り向いてくれなかった。

ただそれでもアプローチし続ければなんとな~く結婚してくれるんじゃないかと考えていただけにショックは大きかった。

でもせめて、

せめて何か一矢報いたい。


「こんな所にいたのですか! クーリエさん!」

「にゃっ!?」


噂をしていたミソラが唐突に現れ、クーリエが声を上げる。


「い、いかがされたのですかあ? ミソラ様?」


余所行きの笑顔をとっさに作って、クーリエがミソラに問いかける。


「私に花嫁修業をつけてください! クロカゲさんの話はクーリエさんはお料理上手との事! 私にお料理を教えて下さい!」


ミソラのお願いにクーリエは、これだと思い立つ。

花嫁修業と称して、ミソラをいびってやろうと。




*************************************




「いいですかあミソラ様? 私の修行は厳しいですよお?」

「ハイ!」

「王女様とはいえ容赦はいたしません。よろしいですねえ?」

「ハイ! よろしくお願いいたします!」


はつらつと答えるミソラに、意地悪をしてやろうと考えるクーリエがほんの少し罪悪感を覚える。

本当にいい子だ。クロカゲが惹かれてしまうのも分かるくらいに。

でもせめてもの意趣返しをしたい。

クーリエは心を鬼にして料理修業を…




「できました!」

「これは………何かしらあ?」

「シチューです!」

「どこがシチューなのお!?」


紫色のデロンデロンを前にして、クーリエが嘆きの声を上げる。

おかしい。

一緒に作ってたはずなのに。

野菜の切り方とか火加減とかいちいち厳しい事を言いながらちゃんと作っていたはずなのに。

なのになぜこうなるのか。


「クーリエ先生! お味見してみてください!!!」


キッラキラの目でミソラがクーリエに言う。


「…」


紫のデロンデロンの前で、クーリエは固まる。

おかしなものは入れてないはずだ。

ちゃんと自分の鍋と同じ物を入れて作っていたはずだ。

だから大丈夫。そう言い聞かせてクーリエは紫のデロンデロンを1口味見する。


「うっ…!? ぐっ、おっ………!!?」

「おおっ! 震えるほどおいしんですね!」

「ち…、ちが………!?」


違う、と言おうとしても口と身体が痺れてしゃべれない。


「さすがクーリエ先生! クロカゲさんにも食べさせなくては! 行ってきます! ありがとうございました!」


紫のデロンデロンを注いだ皿を手に、ミソラがどこかへ走って行く。


「や、やめ……」


床に崩れ落ちながらクーリエが手を伸ばすが、ミソラは振り返る事なくクロカゲの仕事部屋へ向かっていく。

ミソラがクーリエの目を盗んでいらない物を鍋に入れていた事などつゆ知らず、クーリエの意識が薄くなっていく。


「(クロ、ちゃん………、逃げ、てえ…)」


口からこぼれる紫の泡で『ミソラ』のダイイングメッセージを書きながら、クーリエが意識を失う。

数時間後に目を覚ました時には不思議と何ともなかったが、クーリエは二度とミソラの料理を口にしない事と、料理を教えない事を堅く誓ったのだった。




ウスグラーイ領領主クロカゲの秘書クーリエ。

数年後にクロカゲに押しつけられ次のウスグラーイ領領主となる女である。

ミソラ「クロカゲさん! 是非こちらを、召し上がってみてください!」

クロカゲ「こ、これは何だ?」

ミソラ「シチューです! クーリエさんに教えていただきました!」

クロカゲ「(それがどうしてこうなるんだ…)」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ