第45話 元魔王の幹部、ご両親にご挨拶をする
「おお! そなたがウスグラーイ領領主クロカゲか! ミソラに聞いたぞ! ミソラを助け、この世界を救ってくれたそうだな!」
「…はっ!」
王城の王の間で、王とお妃を前にクロカゲが傅く。
その隣にはミソラがいて、すみれと早苗はもうリアル・ワールドに帰っている(クロカゲがテレポートで帰した)。2人には後日またお礼をするという事で話がついていた。
「しかし何故どこかに行っていたのだ?」
「国王様、こちらを見ていただきたく…」
クロカゲが何かの書類の束を、国王へと差し出す。
「これは?」
「大臣がウスグラーイ領への交付金を、横領しているという証拠です」
クロカゲの言葉に国王が、目をむいて書類をめくり出す。
そこには横領した金の流れから大福帳まで、動かぬ証拠が並んでいた。
「ううむ…、これは由々しき事だ…。すぐに大臣を呼び問い詰め処罰し、本来ウスグラーイ領に交付されるべき金を取り戻そう」
「ありがとうございます」
王の言葉に、クロカゲが深々と頭を下げる。
そんなクロカゲを見て王が、満足気に頷く。
辺境の会った事も無い領主で、御前試合でも魔法使いらしくない戦い方をしていた男だからどんな男かと思っていたが礼節もわきまえているまともな男のようだ。
「クロカゲよ、大儀であったな。此度の件も、大臣の件も並大抵の事では無かったであろう。そなたに褒美を取らせる」
「褒美、ですか?」
「うむ、何でも好きな物を褒美に取らせよう」
「何でも、ですか?」
「ああ、何でも好きな物を言いたまえ」
「でしたら…」
クロカゲが、隣に並ぶミソラの手を取る。
「ミソラ様を頂きたく」
「なっ…!?」
「えっ…!?」
「~~~!!!」
王と王妃は困惑と驚きの表情を浮かべ、ミソラは噛み殺しきれない笑みを浮かべている。
一方王は、まさかのお願いに慌てふためいていた。
「ダ、ダメだダメだ! いくらなんでもミソラはダメだ!」
「何でもとおっしゃいましたよね?」
「何でもと言っても限度というものがあろう!?」
「『王国を救った人間には王女を娶る権利が与えられる』という不文律が…」
「そ、それは… しかし、ミソラの気持ちが!」
「私は娶られても構いません! クロカゲさんのお嫁さんになりたいです!」
「そ、そんな…!?」
慌てふためきオロオロする王、
「ミソラ」
それとは対照的にクロカゲとミソラの様子を見て2人の関係に気づいた王妃が落ち着いた様子でミソラに話しかける。
「この方を選んだのですね?」
「ハイ! 選びました!」
「よろしい、ならばよいでしょう」
それだけの会話でミソラの気持ちを確認した王妃が、スッと立ち上がりクロカゲに歩み寄る。
「ウスグラーイ領主、クロカゲ。そなたとミソラの結婚を認めましょう。ですが将来の女王の伴侶となるため色々学んでいただかねばならない事があります。よいですね?」
「はっ…!」
一国の王と王妃を前に、王女を頂きたいと言ったクロカゲ。その胆力と覚悟を評価し王妃はクロカゲを認める。
一方王は、オロオロしながら1人だけ反対の意を示した。
「ダ、ダメだダメだ!? ミソラはまだ17だぞ! 早すぎる!」
「お父様、私もうすぐ18ですよ?」
「大臣の息子と見合いをさせたではありませんか」
「うぐっ…」
娘と妻に反論され、王が言葉に詰まる。
何とか突破口はないかとクロカゲを見るが、見た目もきちんとしており大臣の不正の証拠を集めてきた事から有能でもあるようだ。何より、今回の件で王国を救った功労者である。
「…クロカゲよ」
「はっ」
「………娘を頼むぞ」
「はっ!」
一国の王とはいえ、妻と娘に敵わない1人の父である王が諦めの表情でクロカゲに娘を託す。
これ以上反対しても「あなたは黙ってなさい」「お父様は黙ってて下さい!」とやり込められるだけだろう。
そんな王の複雑な内心を察し、クロカゲは王に同情した。
ミソラ「ホラ、両親のことなら大丈夫ですって言ったでしょう?(ドヤ顔)」
クロカゲ「…」




