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魔法少女、嫁になる。  作者: アブラゼミ


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42/50

第42話 君を好きな理由

「クロカゲさん、私の好きな所ってどこですか?」

「…うん?」

「クロカゲさんは、どうして私の事を好きになったんですか?」

「…」

「考えてみれば教えてもらった事ないんですよね。クロカゲさんが私を好きになった理由。何なんですか?」

「………教えない」

「何でですか!?」

「そんなの恥ずかしいだろ…」

「恥ずかしがらずに教えて下さい!」

「ミソラだって俺の好きなところなんて恥ずかしくて言えないだろ?」

「顔立ちと背が高い所です!」

「外見かよ…」

「もちろん内面も好きです! 私は教えました! さあ! クロカゲさんも教えて下さい!」

「………教えない」

「何でですか! 私が教えたんだからクロカゲさんも教えてください!」

「キミが勝手に教えたんだろ。俺は教えない」

「ケチー! クロカゲさんのケチー!」


半年ほど前。

こんなやりとりをしてからミソラはクロカゲに何度も自分を好きになった理由を尋ねた。

けれどもクロカゲは頑として教えなかった。

恥ずかしくて、言えなかったのだ――――――――――――――





*************************************




『ウオオオオオオオオン!!!!!』


動かなくなったウーリーンへの攻撃をやめた闇の巨人が、天に向けて吠える。

そして、王都の方へと顔と身体を向けた。


「いけません! 早く止めなくては!」

「皆、変身だよ!」

「ハイ!」「ええ!」


早苗に言われ、ミソラとすみれがマジカル・ステッキを構える。


「「「マジカル・チェンジ!!!」」」


マジカル・ステッキがそれぞれ赤色・水色・金色に光り輝き、3人の身体が不思議な光に包まれる。

それまで着ていた服から魔法少女のコスチュームに変化し、胸にペンダントが輝く。

髪の色が変わり、長く伸びて髪型もそれぞれ変わる。

マジカル・スカーレットは赤い髪のツインテール。

マジカル・ウィンディは水色のポニーテール。

マジカル・シャイニングは金色の腰まで届くロングヘアー。

3人が同時に手を叩く。

髪飾りやブレスレット、手袋やロングブーツなどがコスチュームを彩り魔法少女の姿を完成させる。


「灼熱の、炎の戦士! マジカル・スカーレット!」

「吹き荒れる、風の戦士! マジカル・ウィンディ!」

「金色の、光の戦士! マジカル・シャイニング!」


3人が並んで決めポーズを取る。


「「「魔法少女、見参!!!」」」


ここまで2分00秒。

そうこうしている間に…


「ああっ!? クロカゲさんがあんな遠くに!!?」

「当然ね、自我無くしてるんだから待ってくれる訳ないわよ」

「む、むしろよく待っててくれてたよね…。今までの魔王の幹部達…」


変身シーンの間に、闇の巨人が王都の方へ進んでいた。


「そっち行っちゃダメです! クロカゲさん!」


風の速さでマジカル・ウィンディが、闇の巨人に追いつきその脚に縋りつく。


『グオオオオオオオ!!!』


いきなり脚にひっついてきた魔法少女に、闇の巨人が振り払おうと暴れ回る。


「このっ! 暴れないでくだ、さい!」


振り払われたマジカル・ウィンディの風を纏った蹴りが、闇の巨人の胸を捉える。


『ウオオオオオオン!!!』


闇の巨人が蹴りの衝撃に押され、音を立てて倒れる。


「ああ!? 痛かったですよねクロカゲさん!? スミマセン!!!」

「何やってんのよアンタは! 攻撃してどうすんのよ!」

「じゃあどうすればいいんですか!?」

「…投げ飛ばすとか?」

「それです!!!」


光の速さで追いついてきたシャイニングの提案に頷き、ウィンディとシャイニング2人で闇の巨人の脚を持ち上げ振り回し投げ飛ばす。


「「どっ、せえええええい!!!」」

『グオオオオオオオ!!!』


投げ飛ばされ地面に叩きつけられた闇の巨人が、苦悶の声を上げる。


「ああ!? 痛いですよねクロカゲさん!? スミマセン!!!」


その様子を見てウィンディが、心配そうにオロオロする。


「シャイニング! 投げ飛ばすのもダメそうです!」

「仕方ないわね…。じゃあどっかに突き落とすとか?」

「もっとダメです!」

「じゃあどうすればいいのよ!」

「分かりません! どうすればいいんですか~!!?」

「ふ、2人とも…、落ち着いて…。ひとまず3人がかりでクロカゲさんの足を押してあっちに遠ざけよう!」


ようやく追いついたスカーレットが、脳筋コンビに呆れながらまともな提案をする。

ウィンディとシャイニングがスカーレットの提案に頷き、闇の巨人の右足を3人がかりで押し王都から遠ざけようとする。


「「「せええええの!!!」」」

『グオオオオオオオ!!!』


「「「せええええの!!!」」」

『ウオオオオオオン!!!』


「「「せええええの!!!」」」

『ウオオオオオオン!!!』


前へ進もうとする闇の巨人と、押し返そうとする魔法少女達3人。

ふと、スカーレットがある事に気づく。


「ふ、2人共! クロカゲさん、私達を攻撃してなくない!?」

「「!!!」」


スカーレットに指摘され、ウィンディとシャイニングが目を見開く。

ウィンディとシャイニングが闇の巨人を攻撃してしまったというのに、闇の巨人は2人を攻撃していない。

今だって自分達を押し返そうとはしているものの、蹴り飛ばそうとはしていない。


「じゃ、じゃあ…! 自我が残ってるって事ですか…!?」

「そ、それはどうかしら…!? でも、戻る可能性もあるって事かもね…!」

「ふ、2人とも! 一気に押し返すよ!!!」


踏ん張っていた3人が、より一層の力を込めて闇の巨人の脚を押す。


「「「せええええの!!!」」」

『ウオオオオオオン!!!』


闇の巨人の脚が宙に浮き、たたらを踏んで一気に後退する。

そしてそのまま後ろ向きに音を立てて地面に倒れる。


「ああっ!? クロカゲさん! スミマセン!!!」

「いちいち謝るんじゃないわよ。多分大丈夫よ。………多分」

「すごく不安なんですが!」

「う、うん。それよりどうやってクロカゲさんを元に戻すかだけど…」

「そんなの簡単チャピ、マジカル・プリンセスが攻撃すればいいチャピ」


突然現れたチャッピーに、魔法少女達3人が顔を見合わせる。


「マジカル・プリンセスの力でやっつければ、クロカゲは元に戻るチャピ。まあ元に戻っても死んじゃうチャピが! チャピピピピ!」

「黙れ」

「チャピー!?」


シャイニングのチョップがチャッピーの頭に炸裂し、チャッピーがしたたかに地面に叩きつけられる。


「チャッピーの言う事なんか耳を貸す必要ないわよ。それよりミソラ? なんでマジカル・プリンセスじゃなくてマジカル・ウィンディの姿なの?」

「…マジカル・プリンセスの力は強力すぎて、きっとクロカゲさんを傷つけてしまいます。チャッピーの言う通り、クロカゲさんを死なせてしまうのでしょう」


腰に差したプリンセス・ステッキを手で触れ、ミソラは自分のマジカル・ウィンディのコスチュームの胸のリボンに手を当てる。


「私がいきなりマジカル・プリンセスではなく、マジカル・ウィンディに変身したのは何か意味があるはずです。それはきっと、今この時のため」


手袋に包まれた手をグーパーと握りながら、ミソラが強いまなざしで前を見つめる。


「力に頼るのではなく、もっと大切なもので誰かを救う。それが私がマジカル・ウィンディになった理由だと思います。だからマジカル・プリンセスの力は使いません」

「…そうね、それでいいとしてこれからどうするの? ねえスカーレット? 魔法少女の物語に詳しいんでしょ? こういう時どうすればいいの?」

「え? そ、そうだなあ……こういう時は、合体技、かなあ?」

「「合体技?」」

「3人の力を合わせた合体技を放つの。それで…悪い人でも助けるというか、浄化させるというか…」

「合体技ですか! いいですね!」


合体技という言葉に心くすぐられたウィンディが目をキラッキラに輝かせる。


「合体技ねえ…。1回も使ったことないけどどうやるの?」

「ええっ? そ、そうだなあ……決め台詞を言いながら、アイテムを重ねて、心を一つにして技を放つとか?」


シャイニングの問いかけに、スカーレットが困惑気味にわたわたと答える。


「分かりました!」「分かったわ」

「ええっ!? い、今の説明で分かるの!?」

「大体分かったわ」

「ハイ! 大体分かりました!」

「…」


雑な説明で分かったと言えてしまう脳筋コンビ。この感覚派なところが次々新しい技を生み出せてしまう所なのだろうか。技が実質1つしかないスカーレットは複雑な気分になる。


「そ、それじゃあ3人でマジカル・ステッキを合わせて…」

「おお! 何だかワクワクします!」

「そうね、魔法少女最後の戦いって感じがするわ」

「…」


杖を合わせた3人が、それぞれワクワク・やれやれ・複雑な表情になる。

3人が持ったマジカル・ステッキがそれぞれ赤色・水色・金色の光を放ち出す。


「スカーレット・パワー!」

「ウィンディ・エモーション!」

「シャイニング・ブライト!」


3人の力が合わさり、ステッキの前に強大な光が現れる。

セリフも仕草も、打ち合わせも何もしていないのにスッとでてきた。

それはこれまでの変身とか必殺技と同じだった。




「「「マジカル・エクスプロージョン!!!」」」




3人揃ってマジカル・ステッキを闇の巨人に向ける。

しかし光は、闇の巨人に向かう事無くショボーンとその場で力なく消えた。


「あ、あれっ!? どうして消えちゃうんですか!?」

「何でなのよ! イケそうな感じじゃったじゃない!」

「…」


合体技が失敗した3人が、マジカル・ステッキを下ろしそれぞれ慌てふためいたり嘆いたり黙り込んだりし出す。


「チャピピピピ! お、おかしいチャピ!」


そんな3人を見て、チャッピーが嘲笑を上げる。


「わ、笑わないで下さい!」

「アンタねえ…!」

「…」

「チャピピピピ! 3人の気持ちが1つになってないなのに合体技なんて使えるわけないチャピ! どうするチャピ? やっぱりマジカル・プリンセスの力を使うチャピ? そうすれば全部解決チャピ! クロカゲは死んじゃうチャピが! チャピピピピ!」

「チャッピー!!! この…!」

「…待ちなさい。『3人の気持ちが1つになってない』…?」


チャッピーに掴みかからんとしたウィンディを手で制し、シャイニングがチャッピーの言葉の意味を考える。

そして、ハッと思い当たったように先ほどから押し黙っているスカーレットを見た。


「早苗? アンタまさか『まだ魔法少女を続けたい』なんて思ってるんじゃないでしょうね?」

「ええっ!? そうなんですか!?」

「………2人には、分からないよ」


自分の気持ちを見透かされたスカーレットが、ポツリ、ポツリと自分の気持ちを吐き出す。


「…2人と違って私には、何もないから。魔法少女じゃなくなっちゃたら、私には何も残らないから」

「「…」」

「…私ね、魔法少女になれてうれしかったの。平凡な自分でも、特別な何かになれるって。憧れてた魔法少女になれたって。だから、魔法少女じゃなくなっちゃうのが怖くて仕方ないの。これから先の人生はつまらないものになるから。だから…」

「バカね。何言ってんのよ」


スカーレットの言葉を遮り、シャイニングが心底呆れた様子で言葉を挟む。


「魔法少女じゃなくなったら何にもなくなる? これから先の人生はつまらないものになる? なんでそんな決めつけるのよ。バカなの?」

「す、すみれさん!? 言い方がキツすぎます!」

「いいえバカよ。早苗、私が保障してあげるわ。魔法少女じゃなくなっても、アンタは大丈夫って」

「な、何で…?」

「私がついてるからよ。魔法少女じゃなくなっても、この西園寺すみれが友達なのよ? 何だって相談に乗るし、何だって力になるし、何度だって愚痴も聞いてあげるわ」

「そ、そうです! 私も話し相手になります!」

「アンタは無理でしょ。違う世界の人間なんだし」

「そうでした!?」

「フッ、ハハッ、アハハハハッ!」


2人のやりとりに、スカーレットがお腹を抱えて笑う。




「…早苗さん。実は私も、ずっと魔法少女になりたいって思ってたんです」


スカーレットの笑いが収まるのを待って、ウィンディが話しかける。


「実は私、魔法が使えないんです」

「えっ? マ、マジカル・ランドの王女様なのに…?」

「はい。ゴールキンさんと一緒です。マジカル・ランドにごくまれに生まれる、魔法が使えない人間なんです」

「「…」」

「ずっと悩んでました。皆は魔法が使えるのに私だけ魔法が使えない事に。なんでマジカル・ランドの王女なのに私は魔法が使えないんだろうって」

「「…」」

「だから魔法少女になれた時はすごく嬉しかったんです。長年の夢が叶ったって。ずっと使いたかった魔法が使えるようになったって。魔法少女になれたおかげで、早苗さんやすみれさん、クロカゲさんにも出会えましたし…」

「「…」」

「だから魔法少女じゃなくなっちゃうのは、すごーく淋しいです。でも、後悔はありません」

「ど、どうして…?」

「だって私達には、素敵な未来が待ってるって信じてますから」

「…」

「魔法少女じゃなくなっても、魔法が使えなくなっても、私達は大丈夫です! 私たちなら絶対、大丈夫です!」

「…」


ウィンディの言葉に、スカーレットが憑き物が落ちたような表情になる。

それを見たシャイニングが、フッと表情を緩め笑みを浮かべた。


「早苗、大丈夫そう?」

「…うん、大丈夫。大丈夫に、してみせる」


目尻に浮かんだ涙を拭い、スカーレットが微笑む。

それを見てウィンディも、満面の笑みを浮かべた。


「では大丈夫ですね! さあ、クロカゲさんを助けましょう!!!」

「ええ!」「うん!」


外野で何やら言っているチャッピーを無視し、魔法少女達3人が再びマジカル・ステッキを重ね合わせる。

3人が持ったマジカル・ステッキがそれぞれ赤色・水色・金色の光を放ち出し、3人も光に包まれる。


「スカーレット・パワー!」

「ウィンディ・エモーション!」

「シャイニング・ブライト!」


3人の力が合わさり、ステッキの前に強大な光が現れる。




「「「マジカル・エクスプロージョン!!!」」」




3人揃ってマジカル・ステッキを闇の巨人に向ける。

3つの光が合わさった光の弾が、強い光の軌道を描きながら闇の巨人へまっすぐ向かう。


『ウオオオオオオオオン!!!!!』


光の弾が闇の巨人にぶつかり、光を放ちながら爆発する。


『ウ、ウオオオオオオオオ…』


やさしい光に包まれながら、闇の巨人が浄化されていく。


『オ、オオオオオオ…』


その姿がどんどん小さくなり、1人の、長身で細身の黒い影になる。

黒い影は、そのままその存在を……


「クロカゲさん!!!」


消滅する寸前で、変身が解けたミソラが抱き止めた。


「クロカゲさん、覚えてますか? あの時した約束を」

『オオオオ…』


消え去りそうになるクロカゲを抱きしめながら、ミソラが懸命に呼びかける。

消えないでという思いを込めて、強く。




「私をお嫁さんにするって、約束したじゃないですか…!」

『オ、オオ…』




「2人で、ゆびきりげんまんしたじゃないですか…!」

『オ…』




「ウソ吐いたら針千本のーます、ですよ。いいんですか、針千本飲む事になっても…!」

『…』




それは、2人が初めてした約束。

クロカゲはリアル・ワールドの呪いと信じ、ミソラはそれを利用した。

でも、ミソラの思いは本気だった。

それにミソラにはまだ、クロカゲから聞いていない言葉がある。




「私まだ、クロカゲさんから私を好きになった理由を聞けてません。だから…!」

「………ミソラ」




ミソラの言葉を、クロカゲの声が途中で遮る。




「君が好きだ」




顔を上げたミソラの目から、一粒の涙がこぼれる。


「君の隣にいるのが好きだ」


「君の笑った顔が好きだ」


「君の声が好きだ」


「君の存在が好きで、愛おしくてたまらない。

君を好きな理由がありすぎて、話しても話しきれないくらいたくさんある。

それくらい俺は君の事が好きだ。それが、俺が君を好きになった理由だよ」


クロカゲの長い腕が、ミソラの身体を抱きしめる。


「やっと、言ってくれましたね…」

クロカゲの胸に縋り付いたミソラが、大粒の涙をこぼして笑う。

「…うん?」

「『好きだ』って言葉、私、クロカゲさんから一度も言ってもらった事ありません…」

「…そうだっけ?」

「はい…。ずっと、その言葉を待ってました…」

「…」


ミソラの頭をクロカゲの手がやさしく撫でる。

そんな2人の姿に早苗はもらい泣きし、すみれはどこか満足げな表情を浮かべてフンと鼻を鳴らす。

かくして、

魔法少女達最後の戦いは幕を閉じたのだった。




「――――――待て、ウーリーンはどうした?」

「「「え?」」」


クロカゲの言葉に、3人がキョトンとした表情をする。


「ウーリーンだ。あいつはどうした?」

「どうしたも何も……アンタがやっつけちゃったわよ」

「やっつけたかもしれないが、アイツが全ての元凶だったんだ。君達の変身が解けたって事は戦いが終わったって事だが、油断はならない」

「…そう、ですね。早く取り押さえるか何かしないと」


クロカゲの言葉に早苗が頷き、皆がウーリーンを探す。

けれどもウーリーンの姿はどこにも見当たらない。

代わりに1人の男が所在なさそうに立ちすくんでいた。


「「「「…人間?」」」」


そこにいたのは、メガネをかけたどこにでもいそうな冴えない青年だった。

「マジカル・エクスプロージョン」を食らった感想


クロカゲ「死ぬかと思った」

魔法少女達「「「でしょうね!!!」」」



次週は2話更新です。

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