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魔法少女、嫁になる。  作者: アブラゼミ


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第39話 最終決戦②

「マジカル・ランドを乗っ取り、リアル・ワールドをも物にせんと企む悪しき者よ。成敗の時間です!」


プリンセス・ステッキをくるくると回した後パシッと掴み、ミソラは宣言する。


「マジカル・プリンセス、ミソラ! いざ、参ります!」

「「「…」」」


それまでの水色の衣装から、白とピンクを基調としたお姫様のドレスのようなコスチュームになったマジカル・プリンセスことミソラを見て、クロカゲと魔法少女達が言葉を失う。

そんな彼らに向けて、ミソラが申し訳なさそうな表情で振り返り話しかける。


「…隠していてスミマセン。チャッピーにナイショにするよう言われてたんです」

「ほ、本当に君が王女様なのか…?」

「…はい」

「マ、マジカル・プリンセスって、ミソラちゃんの事だったの…?」

「…はい」

「…」


クロカゲとスカーレットが呆然としてるのとは対照的に、シャイニングだけが険しい目をしてマジカル・プリンセスを見つめる。

その視線にバツが悪い表情をしながら、プリンセス・ステッキを腰に差しマジカル・プリンセスが頭を下げる。


「…皆さんを騙していた私にこんな事を言う資格はないのかもしれません。ですがお願いです。力を貸して下さい。この世界を救い、あちらの世界を守るために」

「…ああ、当然だろ」

「う、うん、任せて」

「…」


マジカル・プリンセスの言葉に、クロカゲとスカーレットが頷き、シャイニングだけ何も言わないが協力する気があるのは分かった。


『フフフ、フハハハハ!』


そんな彼らを見て、ジャ=アークが高笑いを上げる。


『やっと現れたか! マジカル・プリンセス! 貴様を手に入れれば我が目的は達成される!』

「…どういう意味ですか」

『そのままの意味だ! 貴様を我が物にすればこの世界を本当の意味で手に入れられるのだ!』

「何をおっしゃっているのか分かりませんが、お断りします! 私には心に決めた人がいるのです!!!」

「「「…」」」


マジカル・プリンセスの言葉に、スカーレットとシャイニングがクロカゲを無言で見つめ、クロカゲは居心地悪そうに身を竦ませる。


『我が真の力を解放しよう! バアアッ!』


ジャ=アークの身体が赤い光に包まれ、そのマントが放り投げられる。

マントを脱いだジャ=アークはこれまでより更に一回り大きく、大きな角と翼が生えより魔王らしい禍々しい姿になっていた。


『バアッ!!!』

「っ!」


ジャ=アークの口から赤い光線が放たれ、クロカゲが影のバリアでとっさに防ぐ。


『バアアアアアアアアアアっ!!!!!』

「くっ…!」


赤い光線に押され、影のバリアにヒビが入っていく。


「「「キャアアアア!?」」」


影のバリアが壊され、魔法少女達とクロカゲに光線が降り注ぐ。

バリアで低減されているとはいえ、強烈な攻撃だ。吹っ飛ばされた魔法少女達とクロカゲがダメージを食らう。


「クロカゲさん!?」

「ぐっ… 大丈夫だ…」


その中でも特にダメージを受けたクロカゲに、マジカル・プリンセスが心配そうに駆け寄るがクロカゲが問題ないと言わんばかりに手を振る。


「あの攻撃…、見た事ない攻撃だ…! あの野郎、全力を出してなかったのか…」

『その通りだ。ハハハ! 我が圧倒的な力を前にひれ伏すがよい!』

「…ならば、それを上回る力で攻撃するだけです」


いつの間にかジャ=アークの前に現れたマジカル・プリンセスが、グンっと力を溜めた蹴りを放つ。


「ハアッ!!!」

『ウグっ!?』


強烈な蹴りに、ジャ=アークの巨体が後退する。


「ハアアアアアア!!!!!」


そこから立て続けのパンチとキックのラッシュ。

それまでの風とは違うピンク色の光をまとった攻撃が立て続けにジャ=アークに襲いかかる。


『ヌウウウっ………ちょこざいな!』

「ハッ!?」


宙に浮いているマジカル・プリンセスに、ジャ=アークの破壊光線が襲いかかる。

襲いかかる前に……クロカゲが伸ばした影がマジカル・プリンセスを引き寄せた。


「クロカゲさん!」

「ミソラ…いや、ミソラ様。フォローは任せろ。君は思いっきり戦え」

「ハイ!!! 『様』はいりません!」


クロカゲの心強い発言に、マジカル・プリンセスが満面の笑みを浮かべジャ=アークに向かい飛びかかる。


『こしゃくな! …グウっ!?』


迎え撃とうとしたジャ=アーク。その身体が影に巻き付かれ動けない。


「プリンセス・アターック!!!」


空中で一度止まり、そこから再加速して攻撃する体当たり。プリンセス・アタックがジャ=アークを直撃する。


『ナメるなああ!!!』


ジャ=アークの右手が稲光に包まれ、マジカル・プリンセスに襲いかかる。


「ダークネス・フィンガー!!!」


しかしクロカゲの必殺技に阻まれマジカル・プリンセスまで届かない。


「プリンセス・シュート!」


ピンク色の光が軌道を描く蹴り技がジャ=アークを吹っ飛ばす。


「シャドウ・ジヤベリン!」

『グウっ!?』


影でできた投げ槍が、ジャ=アークを追撃する。


「プリンセスラーッシュ!!! ハアアアアアア!!!!!」


マジカル・ウィンディの時の必殺技、「サイクロンラッシュ」が更にパワーアップしたピンク色の光をまとったラッシュがジャ=アークに襲いかかる。


『グウウウウウっ!?  ……バアアアアアっ!!!』

「キャアアアア!?」

「っ…!」


しかしそれに耐えきったジャ=アークが、口から吐いた光線がマジカル・プリンセスとクロカゲに襲いかかり2人が吹っ飛ばされる。

クロカゲがとっさにバリアを貼ったがそれごと吹っ飛ばされてしまった。


「…くっ、スマン。ミソラ様…」

「様はいりません! 私は大丈夫です! まだまだイケますよね! クロカゲさん!」

「…ああっ!」


2人でいれば勇気100倍。

クロカゲとマジカル・プリンセスが立ち上がり再びジャ=アークに挑みかかる。

激しい戦いが、続くのであった。




*************************************




「…何よ、これ」


一方マジカル・シャイニングはその戦いを呆然と見ていた。

いや、見ている事しかできなかった。

炎の矢を構えていたマジカル・スカーレットも、今は諦めたように手を下ろしている。


「…次元が、違いすぎる」


自分達では入り込む隙がないほどの戦い。

それが、目の前で繰り広げられている。




「ハアアアアアア!!!!!」「オオオオオオオ!!!!!」



マジカル・プリンセスとクロカゲが、左右からジャ=アークに襲いかかり同時に攻撃する。

初めて連携したとは思えないほど息ピッタリだ。これまで1年近く築いてきた自分達のコンビネーションなんてかすんで見える。


「クロカゲ、アンタ、何者なのよ…」


他の幹部に比べれば弱かったとはいえ、今考えれば魔法少女3人を相手に1人で戦っていたクロカゲはおかしいのだ。

マジカル・ランドの人間が魔法使いとはいえ、強すぎた。

空手を続けてきたすみれから見ても、クロカゲの体術は相当な鍛錬を続けてきたものだと見えた。


「プリンセス・アターック!!!」


空中で一度止まり、そこから再加速して攻撃する体当たり。プリンセス・アタックがジャ=アークを直撃する。

直撃して離れた後は宙から落ちるだけのマジカル・プリンセス、その足下に影でできた足場が現れ、マジカル・プリンセスもそこに足場が来ると分かっていたように踏ん張る。


「ミソラ!」

「ハイ!」


同じ足場に上がってきたクロカゲの呼びかけに答え、マジカル・プリンセスとクロカゲが同時に構えを取る。


「ハアアアアアア!!!!!」「オオオオオオオ!!!!!」


2人同時にジャ=アークに飛びかかり、右手と左手のパンチがジャ=アークの腹に突き刺さる。


『グウウウウウっ!? …おのれ!!!』


しかしジャ=アークが反撃の光線を目から放つ。

光線をまともに食らい吹っ飛ばされるマジカル・プリンセスとクロカゲ、クロカゲがマジカル・プリンセスを抱きかかえ下敷きになって衝撃からマジカル・プリンセスを守る。


「クロカゲさん!?」

「…大丈夫だ! たたみかけるぞ!」

「ハイっ!!!」


再びジャ=アークに挑みかかるマジカル・プリンセスとクロカゲ。


「ハアアアアアア!!!!!」「オオオオオオオ!!!!!」


ジャ=アークの魔法を躱し、2人同時に攻撃を繰り出す。

その連携は自分達よりも取れており、2人の心が通じ合っているのが見て取れた。


「…っ」


シャイニングは自分の拳を強く握る。

分かっていた事だ。割り切っていた事だ。

けれどもこれだけのものを見せつけられて、思うところがないと言えばウソになってしまう。

クロカゲの作った影の土台を跳び上がり、マジカル・プリンセスが強烈な掌底をジャ=アークに食らわせる。

一瞬動きを止めたジャ=アークが、それでも稲光を纏った拳を叩きつけようとする所をクロカゲがバリアでカバー。持ちこたえている間にマジカル・プリンセスの飛び蹴りが炸裂。

ジャ=アークがたたらを踏んで後退する。

マジカル・プリンセスとクロカゲが攻撃をたたみかけ続けている展開。

しかし戦いは、実はジャ=アークが押している。


「…マズいわね、このままじゃ」


マジカル・プリンセスとクロカゲは決め手を欠いている。

クロカゲが防御しているものの、ジャ=アークの攻撃によるダメージは2人に着実に溜まっているのが見て取れた。

後一手あれば押し切れそうなのにその一手が足りない。

その一手に自分がなれない事にシャイニングが歯噛みする。

口惜しいがこの戦いに自分が入り込む隙がない。足手まといになるだけだろう。


「でも…」


自分にだって何かできる事があるはず。

マジカル・シャイニングは拳を握ってそのチャンスを待ち続けるのだった。




*************************************




「…クロカゲさん」

「…ああ、いくらなんでもおかしい」


いくら攻撃しても倒せないジャ=アークに、マジカル・プリンセスとクロカゲが同じ疑念を抱く。

ゴールキンのように身体が頑強でない魔法使いのジャ=アークがなぜここまで攻撃に耐えられているのか。


「…回復魔法を使っているな」


その理由を、クロカゲが見抜く。


「回復魔法、ですか?」

「ダメージを受けたそばから、回復してるんだ。それで俺達の攻撃に耐えてるんだと思う」

「…どうすればいいんですか?」

「ジャ=アークは回復魔法の詠唱をしていない。何かマジックアイテムを使ってるはずだ。そいつを壊して攻撃をたたみかける。マジックアイテムは俺が見つけて破壊するから、ミソラ様はそれまでアイツの注意を引いてくれ」

「ハイっ! 様はいりません!!!」

『話は終わったか? こちらから行くぞ!』


ジャ=アークの口から、炎の魔法が放たれる。

それを左右に分かれて躱したマジカル・プリンセスとクロカゲが、大きく回り込みながらジャ=アークに迫る。


「ハアアアアアア!!!!!」


クロカゲの指示通り、ジャ=アークの注意を引く事に徹したマジカル・プリンセスが肉弾戦でジャ=アークに挑みかかる。


「…」


その間、クロカゲが注意深くジャ=アークを観察する。

マジカル・プリンセスが最強の戦士とはいえ、負担をかける訳にはいかない。

既にこれまでの戦いでかなり消耗している。

戦いが長引けば不利になるのはこちらだとクロカゲは分かっていた。


「プリンセス・シュート! やあああああ!!!!!」


しかしマジカル・ランドを取り戻さんとするマジカル・プリンセスは、疲れを感じさせない様子で攻撃をたたみかけ続ける。


『ヌウウウッ!!!!?』


攻撃に押されたジャ=アークが地面を削りながら後ずさる。

その首元につけているペンダントが赤く光った。


「…っ! そいつか! シャドウ・ジヤベリン!!!」


影の投げ槍が、ジャ=アークのペンダントにまっすぐ襲いかかる。

が、届く前にジャ=アークの手に阻まれた。


『ペンダントを狙っているな! だが、そうはさせんぞ!』

「ミソラ!」

「ハイっ!」


クロカゲの呼びかけに答え、マジカル・プリンセスが再度ジャ=アークに向かい飛びかかる。


「プリンセス・フラーッシュ!」


ピンク色の強い光がジャ=アークの目の前で輝く。


『グオオオッ!? 目くらましか!!?』

「ええ、私はあなたの注意を引くための囮ですから」

「オオオオオオオ!!!!!」


ジャ=アークの目を潰したマジカル・プリンセスの言葉に応えるように、クロカゲが声を上げてペンダント目がけ突っ込む。


『バカめ! 目が見えずとも声を上げれば居場所はバレバレだ!』


ジャ=アークが、声がした方へ稲光を纏った拳を叩きつける。


「…ああ、だからそれは『影武者』だ」


自分の影で作った『影武者』に声を上げさせ、ジャ=アークを撹乱したクロカゲが音もなくジャ=アークの胸元まで飛び上がり影のかぎ爪を振り上げる。


「ダークネス・フィンガー!!!」

『グオオオオオッ!!?』


影のかぎ爪が、ジャ=アークの胸元をペンダントごとえぐる。

回復魔法を起動させていたペンダントは、粉々に砕け散った。


「今だ!!!」

「ハイっ! プリンセスラーッシュ!!! ハアアアアアア!!!!!!!!!」


クロカゲの言葉にマジカル・プリンセスが飛び上がり、ピンク色の光を纏った拳と蹴りのラッシュをジャ=アークに突き刺していく。




「ハアアアアアアアアアアッ!!!!!」

『グオオオオオオオオオオッ!!!!?』




思いを乗せた強烈なラッシュが10撃、20撃、30撃、40撃。




「ハアアアアアアアアアアッ!!!!!」

『グオオオオオオオオオオッ!!!!?』




正拳突きが、回し蹴りが、アッパーカットが、かかと落としが勢いを落とすことなく50撃、60撃、70撃、80撃、90撃。




「ハアアアアアアアアアアッ!!!!!」

『グオオオオオオオオオオッ!!!!?』




ピンク色の光が瞬き続け、91撃、92撃、93撃、94撃、95撃、96撃、97撃、98撃、99撃。





「これで! 決まりです!!! ハアアっ!!!!!」





一段と強いピンク色の光を纏った正拳突きが、ジャ=アークに突き刺さる。




「…」

『…』




無言のまま固まる両者。

ジャ=アークの身体が揺らぎ、音を立てて後ろ向きに倒れる。

その身体がゆっくりと崩れ、魔王ジャ=アークは消滅したのだった。

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