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魔法少女、嫁になる。  作者: アブラゼミ


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38/50

第38話 マジカル・プリンセス

魔法の国のお姫様として育てられた少女は厳しい教育を受け育てられた。

幼い頃から礼儀作法・習字・音楽・読書・運動を叩きこまれた。

同年代の子と遊ぶ事も禁じられ、家庭教師とのレッスンの日々。

疑う事を知らない少女は両親の期待に応えまっすぐに育っていった。



少女の唯一と言っていい娯楽は読書で、ある物語に夢中になった。

悪い魔王と戦う魔法少女達の物語。

魔法使いの男が主人公の物語が多いマジカル・ランドの出版業界に衝撃を与え、ベストセラーになった物語だった。

主人公は魔法を使えない落ちこぼれの少女。そんな少女が魔法のステッキで変身し、魔法少女になって仲間と協力して悪を懲らしめ世界の危機を救う。


「私がいます…!」


少女はマジカル・ワールドの住人には珍しい魔法が使えない人間だった。

マジカル・ランドの王女なのに魔法が使えない人間だった。

少女は物語の世界にのめり込み、魔法少女に夢中になった。


「いつか私も魔法少女になりたいです!」


少女は魔法が使えない代わりに高い身体能力を有していたが、いつか魔法が使えるようになりたいと願っていた。

そしてもう1つ、少女には夢があった。


「(いつか………素敵なお嫁さんになりたいです)」


素敵な恋をして素敵な相手と結ばれ幸せなお嫁さんになる。それが少女のもう1つの夢だった。

マジカル・ランドのプリンセスである少女は、大人になれば女王になり誰かと結婚し世継ぎを設けなければならない。

その相手を選ぶ権利が自分にはない事を……少女は自覚していた。

いつか父である国王が決めた相手と結婚しなければならない。

けれどもやっぱり好きな相手と結婚したいというのが少女の夢だった。


「…この本の作者の人、どんな人なんでしょう?」


絵も文章も1人で書いているという作者の事が気になったが、シャイなのか表に出てないらしくどんな人物なのか一切情報がない。

それはまるで……顔も名前も公開されてない自分と同じな気がした。

別に有名になりたいとか王女である事で周囲に特別扱いされたいとかではない。むしろ少女は目立つ事があまり好きじゃなかった。

ただ自分の正体を隠して学校に通いクラスメート達と交わってる自分が、自分じゃないような気がして後ろめたくてイヤだった。

そんなこんなで物語の作者に勝手にシンパシーを感じていた。




魔王ジャ=アークがマジカル・ランドに現れたのは突然の事だった。


「だ、誰だ貴様は!」

『我が名はジャ=アーク。この世界の王となる者だ!』


王である父と王妃である母がジャ=アークに立ち向かっているのをミソラは遠くの柱の陰から見ていた。

近衛隊は皆ジャ=アークにより石に変えられてしまった。ミソラは隠れているよう父に命じられていた。


『貴様達も石になるがよい! バアッ!!!』

「お父様っ!? お母様っ!!!」


ジャ=アークにより両親が石に変えられ、駆けだそうとするミソラ。


「行っちゃダメチャピ! キミも石にされちゃうチャピ!」


その前に謎の妖精が現れた。


「あ、あなたは誰ですか!?」

「チャッピーはチャッピーチャピ! マジカル・ランドを救うために現れた不思議な精霊チャピ! ここは危険チャピ! ひとまず離れるチャピ!」

「でも…! お父様とお母様が!」

「マジカル・ランドの人間はみーんな石に変えられちゃったチャピ! 君まで石に変えられちゃったらこの世界を救えないチャピ!」

「っ…」


チャッピーの言葉に、少女が頷きその場をそっと離れる。そして城の中でも安全な場所、迷路のような通路の先にある自分の部屋へと身を隠した。


「…ここまで来ればひとまず安心でしょう。聞きたい事があります。あなたは誰ですか?」

「ボクの名前はチャッピー。マジカル・ランドの精霊チャピ」

「精霊ですか?」

「精霊チャピ!」

「あのジャ=アークっていうのは何なんですか?」

「この世界を支配しに来た悪い魔王チャピ。自分の国を作るために、皆を石に変えたチャピ」

「そんな勝手な…!」

「勝手も何も、魔王はそういうものチャピ」

「………どうすればいいんですか?」

「チャピ?」

「残念ですが私は魔法が使えません。お父様やお母様、近衛隊の皆様でも勝てなかったジャ=アークに勝つすべが私にはありません。皆を、いえ、この国を救うためにどうすればいいですか?」

「これを使うチャピ」

「これは…?」

「マジカル・ステッキチャピ」

「マジカル・ステッキ?」

「ボクと契約して魔法少女になるチャピ。そしてこの世界とは別の世界、リアル・ワールドで魔法少女の仲間を作るチャピ。その魔法少女の仲間と一緒に魔王の幹部と戦って成長するチャピ。成長できたら、プリンセス・ステッキが使えるようになるチャピ」

「プ、プリンセス・ステッキ?」

「かつてこの国を救った王女様、伝説の戦士マジカル・プリンセスが使ってたステッキチャピ。それを使えば君はマジカル・プリンセスになれるチャピ」

「ちょ、ちょっと待って下さい!? 意味不明な情報が多すぎてさっぱり分かりません!!!」


マジカル・ステッキやらプリンセス・ステッキやらリアル・ワールドやらマジカル・プリンセス等初めて聞く訳が分からない単語にミソラが混乱する。

そんなミソラにチャッピーがひとつひとつ丁寧に説明していく。


「…つまりこのステッキを使えば私は魔法少女になれると」

「チャピ」

「この世界とは別の世界があって、そこに行き仲間を作れと」

「チャピ」

「昔この国を救ったのはゴールキンさんではなくマジカル・プリンセスで、そのマジカル・プリンセスが使っていたプリンセス・ステッキを使えば私もそのマジカル・プリンセスになれると」

「チャピ」

「すごいです! 私、魔法少女になれるんですね!!!」

「そうチャピ」

「あの物語の主人公のように、魔法少女になって仲間を集めて戦えるんですね! ハーッ! 燃えてきました!」

「燃えている所申し訳ないんだけどキミの正体はナイショにした方がいいチャピ。魔王はボクとキミを探してるチャピ。ボクの力とキミを手に入れたら、完全にこの世界を手に入れられるチャピ。だからボク以外の仲間にもキミの正体をナイショにした方がいいチャピ」

「なるほど! ヒーローみたいでカッコイイですね!」

「カッコイイチャピか? それで? どうするチャピ?」


チャッピーは、ミソラに向けて手を伸ばす。


「ボクと契約して、魔法少女になるチャピか?」


チャッピーの問いかけに、少女は一も二もなく頷いた。


「なります! 魔法少女になって、悪を懲らしめます!」


ノリのいい少女は、マジカル・ステッキをクルクル回しビシッと決めてこう言った。


「これからは普通の女の子、ミソラとして悪と戦います!」


こうしてミソラは、魔法少女になったのだった。

色々と気になる所はあったが、細かい事を考えるのが苦手な少女は考える事をやめてしまっていた。

リアル・ワールドに来てからのミソラの生活


チャッピーの不思議な力で自分の部屋にある物を全部持ってリアル・ワールドに移動。

チャッピーの不思議な力で作った家(山の中の木の上)で生活。

チャッピーの不思議な力で高校に編入。

チャッピーの不思議な力でマジカル・ランドから持ってきたお金(自分の貯金)をリアル・ワールドのお金に変換それで食費などをまかなう。

「市ノ瀬」と「美空」はチャッピーが適当につけた名前。

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