第37話 最終決戦①
「まず俺がジャ=アークとウーリーンの2人を奇襲する。いいな?」
「は、はい。危ないですけれど、よろしくお願いします」
「そうね。それくらいでしか役に立ちそうもないし精々頑張りなさい」
「…」
「ミソラ? どうかしたの?」
「い、いえ…、なんでも…」
朝から様子がおかしいミソラ、すみれが怪訝に思いクロカゲを見る。
クロカゲはその視線に気づいていながらも、気づかないフリをしてすみれを見ない。
「…」
何かあったと察するすみれ。しかしやぶ蛇をつつきたくないと思い2人のギクシャクぶりを無視する事にした。
「で? 奇襲した後はどうするの?」
「そこからはスカーレットの指示で動くのがいいと思う。ウィンディとシャイニングの近距離攻撃、スカーレットの遠距離攻撃。それを俺がサポートする」
「サポート? アンタにできるの?」
「できる」
すみれの疑問に、クロカゲがキッパリと答える。
「俺の魔法は元来サポート向きなんだ。君達に足りない部分を補う事ができると思う」
「足りない部分? 何よ」
「盾役と補助役だ」
「「「…」」」
「そんなのいるか? って顔してるがやってみれば分かる。まあ見てろ」
「あんまり期待しないわ。それよりジャ=アークってどんな奴なの?」
「どんな奴?」
「その、どんな力を使うとか、どんな戦いをするのかとか、どのくらい強いのかとか」
「分からん」
「アンタねえ…」
「ジャ=アークはとっても強い魔法を使うチャピ」
ミソラの肩からひょっこり顔を出したチャッピーが口を挟む。
「と、とっても強い魔法?」
「そうチャピ。ジャ=アークは魔法使いチャピ。雷や炎や破壊光線を使ってくるチャピ。物理攻撃はしてこないチャピ」
「ああ、そういえば仕置きで雷をバンバン落とされたな」
「物理攻撃をしてこないって事は……身体が弱いの?」
「弱くないチャピ。ゴールキンには負けるけど十分強いチャピ」
「当然よ、あんな化け物と戦うなんて二度とゴメンよ」
ゴールキンとの死闘を思い出し、すみれがフンと鼻を鳴らす。
「でもジャ=アークだって十分丈夫チャピ。魔法で強化もしてるチャピ。正直、みんなの攻撃じゃ倒せないと思うチャピ」
「「「「…」」」」
「ジャ=アークを倒すにはマジカル・プリンセスの力が必要チャピ。そのためにはプリンセス・ステッキが必要チャピ」
「マ、マジカル・プリンセス? プリンセス・ステッキ?」
「この国の本当の伝説の戦士チャピ。マジカル・ランドの王女様がプリンセス・ステッキで変身してなれるチャピ」
「王女様って…。どこにいるか分からないし、この国の人間も知らないんでしょ?」
「ああ、この1年近くマジカル・ランドのあちこちを探し回ったが見つけられなかった」
すみれの言葉に、クロカゲが頷く。
「それにプリンセス・ステッキとやらはどこにあるんだ? ジャ=アークとウーリーンの目を盗んで王城の隅から隅まで、王女様の部屋も探したが何もなかったぞ」
「え!? お、王女様の部屋に入ったんですか!?」
クロカゲの言葉に、朝からずっと口を利かず、今もずっと黙っていたミソラが大きな目を見開いて声を上げる。
「ああ。プリンセス・ステッキとやらは見つからなくても、王女様の写真でも見つけられたらと思ったんだが部屋の中は空っぽで何も見つけられなかった」
「そ、そんなの犯罪です! 女の子の部屋に勝手に入るなんて犯罪です!!!」
「同感ね。部屋の中でナニを探してたんだか」
「ふ、2人とも…クロカゲさんはやましい事はしてないと思うんだけど…」
「…」
早苗の小声の弁護は届かず、クロカゲが渋い表情になる。
「…ともかく、王女様もプリンセス・ステッキもどこにもないのにどうやってマジカル・プリンセスとやらを呼び出すんだ?」
「プリンセス・ステッキならジャ=アークが持ってるチャピ」
「「「「…」」」」
「プリンセス・ステッキはジャ=アークが持ってるチャピ。それを取り返せばいいチャピ。そしたら王女様が現れてマジカル・プリンセスが出てくるチャピ」
「「「「…」」」」
チャッピーの言葉に押し黙る4人。すみれがピクリと眉を動かしチャッピーに怪訝な顔で詰め寄った。
「…ねえ、なんでアンタそんな事知ってるの?」
「チャピ?」
「さっきからペラペラペラペラ、マジカル・プリンセスとかプリンセス・ステッキとか聞いた事ない単語を並べて、しかもそれをジャ=アークが持ってるとか何で知ってるの? そもそもあなた、何者なの?」
「チャ、チャピ…」
「前々から気になってたのよ。私達を魔法少女にしたり、変な力を使ったり、アンタ一体何者なの?」
「チャ、チャッピーは精霊チャピ! マジカル・ランドを救うために現れた、不思議な力を持つ精霊チャピ!」
「そんな説明で納得する訳ないでしょ」
「ま、まあまあ! すみれさん! そのことはひとまずいいじゃないですか! それより、明日の事です!」
「…だな。そのプリンセス・ステッキとやらをジャ=アークから取り返す作戦を考えよう」
「う、うん。ここまで来たらチャッピーの言葉を信じるしかないと思うの」
「…」
ミソラ達の言葉に、納得は行かないもののそれを飲み込んだすみれが、不服そうな顔を露わにして腕を組んで押し黙った。
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「ブラック・アウト」
クロカゲの言葉と同時に、世界が闇に包まれる。
『クロカゲ! 何の真似だ!』
「クロカゲさん、これじゃ何も見えません!」
ジャ=アークとウーリーンが怒りの声を上げるがクロカゲはそれを無視する。
「ダークネス・フィンガー!!!」
影で覆われたかぎ爪が、魔王ジャ=アークの身体を袈裟斬りに斬りつける。
『グワアアア!!!』
「ジャ=アーク様!? クロカゲさん! 何をしたんですか!」
クロカゲがジャ=アークを攻撃した事を察したウーリーンだが、何も見えないので何もできない。
暗闇の中で周囲が見えていて動けるのはクロカゲだけ、そのクロカゲがウーリーンの背後に回り背中から攻撃する。
「ギャア!?」
クロカゲがウーリーンを攻撃した後に、クロカゲの魔法の効果が切れ辺りが明るくなる。
「今だ!」
クロカゲが声を上げると共に、通路で待機していた魔法少女達が一斉になだれ込んだ。
「スカーレット・アロー! 乱れ打ち!」
マジカル・スカーレットの炎の矢が、ジャ=アークに襲いかかる。
『グワアアアア!!?』
「シューティング・スター!」
「サイクロンラーッシュ!!! ハアアアアア!!!!!
魔法少女達の必殺技が、次々魔王ジャ=アークに襲いかかり、ジャ=アークの巨体が背中から音を立てて倒れる。
「クロカゲさん! あなた、裏切りましたね!」
「黙れ! 俺は元々マジカル・ランドの人間だ! ダークネス・フィンガー!!!」
「ギャー!?」
鋭い影の爪が、ウーリーンの背中を引き裂く。
前のめりに倒れたウーリーンはピクリとも動かない。
「ここですか! それとも、ここですか!」
「ダメ! こっちにはないわ!」
『…何をしておるのだ、お前達!!!』
自分のマントをまさぐっている魔法少女達をギロっと見ながら、ジャ=アークが赤い目を輝かせる。
「雷の魔法だ! しゃがめ!」
クロカゲの言葉に、ウィンディとシャイニングがとっさにしゃがむ。
その頭上に影でできた傘が現れ、ジャ=アークの雷の魔法を防いだ。
『ヌウっ!? クロカゲっ!!!』
「トワイライト・ソバット!」
『グウウウウウっ!?』
頭を起こしかけたジャ=アークの、顔面をシャイニングのソバットが直撃する。
「ウィンディ! 今度は下を探して! シャイニングは肩の辺りを!」
「ハイ!」「ええ!」
スカーレットの指示に従い、ウィンディはジャ=アークの腰の辺り、シャイニングはマントの肩の辺りを探る。
『ヌウっ! か、身体が動かぬ! クロカゲ! 貴様の仕業だな!!!』
「2人とも急げ! あまり長くは持たん!」
ジャ=アークの身体を、影でできた何本もの腕で押さえ込みながら、クロカゲが叫ぶ。
「ここですか! それともここですか!?」
「ああもう! どこに隠してるのよ!」
『…プリンセス・ステッキを探してるな! お前達!!!』
クロカゲの影の腕を引きちぎりながら、ジャ=アークが立ち上がる。
「2人とも離れて! スカーレット・アロー!!!」
2人に指示を出し、スカーレットが炎の矢を放つ。
直撃する炎の矢。それにビクともせずジャ=アークが仁王立つ。
大きさ10mはありそうなジャ=アークの巨体。
その威圧感に魔法少女達が気圧される。
「なんてタフさ…!」
「ハイ…! あれだけ攻撃を食らわせたのに…!」
必殺技を次々食らわせても、まったくダメージを感じさせないジャ=アークの様子に魔法少女達がおののく。
『プリンセス・ステッキならここだ、魔法少女達よ』
そんな魔法少女達に向けて、ジャ=アークが兜を外し中からプリンセス・ステッキを取り出す。
「あんな所に…!」
「返して下さい!」
『返してと言われて返す訳なかろう! 愚か者!!!』
怒り狂った様子で、ジャ=アークが声を上げる。
その口が光り輝き始めた。
「破壊光線だ! 跳べ!!!」
クロカゲの指示に、魔法少女達がクロカゲが影で作った足場を踏み台にして一斉に跳び上がる。
その足下を破壊光線が一掃した。
『ヌウっ…! クロカゲ…!』
「お前の魔法攻撃は知ってる。…あんまり詳しくは覚えてないけどな」
「覚えてないんですか!!?」
「相変わらず頼りになるのか頼りにならないのか分からない情報ね…」
「で、でもおかげで私達ノーダメージだよ!」
スカーレットの言うとおり、大ダメージを食らっていてもおかしくない攻撃2つをノーダメージで済んだことは大きい。
『ちょこざいな!』
「爆発魔法だ! 下がれ!」
ジャ=アークの両手が地面に突く前に、クロカゲが指示を出し魔法少女の前に影のバリアを張る。
後ろに飛び下がった魔法少女達がいた地面が爆発し、飛び散る床の破片が襲いかかるが、影のバリアがそれを防いだ。
「スカーレット・アロー!!!」
『グウっ!?』
「ウィンディ! シャイニング!」
「シューティング・スター!」
「トリプル・ハリケーン!」
『グアアッ!?』
「チャンスだ!」
立て続けに魔法少女達の必殺技を食らい体勢を崩すジャ=アーク。
クロカゲの影の手が、プリンセス・ステッキに伸びる。
『カアッ!』
しかしジャ=アークの目から出たビームに阻まれ、プリンセス・ステッキに届く前に打ち消される。
「チッ…」
『…やはり貴様はあの時消しておけばよかったな、クロカゲ!!!』
「勝手な事言ってんじゃねえ。お前の都合で消されてたまるか」
「そうです! あなたの勝手でこれ以上振り回さないで下、さい!」
ウィンディの回し蹴りが、ジャ=アークの巨体を蹴り飛ばし後退させる。
「返してもらうぞ、この世界を! ダークネス・フィンガー!!!」
更にクロカゲの攻撃が追撃を加えジャ=アークがバランスを崩す。
「シャイニング!」
「ええ! シューティング・スター!!!」
更にシャイニングの光速の体当たりが、ジャ=アークの足を直撃する。
『ヌ、ヌウッ!?』
「スカーレット・アロー!」
『グワアっ!?』
完全に体勢が崩れたジャ=アーク、その胸に炎の矢が直撃しジャ=アークがたたらを踏んで後退する。
「ウィンド・カッター!」
『ヌウッ!? …なんだこの攻撃は! そよ風ではないか!』
「ええ、私はただの目くらましです」
中距離攻撃はへっぽこなのに、攻撃を放ったウィンディがニヤリと笑う。
その言葉の意味を考え魔法少女達を見やるジャ=アーク。
視界の中に、クロカゲがいない。
派手で目立つ魔法少女の技に気を取られてる内に、見失ってしまったのだ。
「ウオオオオオオオオっ!」
いつの間にかジャ=アークの頭上に現れたクロカゲが声を上げながら飛びかかってくる。
『バカめ!』
ジャ=アークの目からビームが放たれ、クロカゲの姿が消える。
『ハハハハハハ! バカめ! 声を上げれば居場所がバレバレではないか!』
「ああ、だからそれは『影武者』だ」
魔法少女達が声を上げながら突っ込んでくる事から思いついた、自分の影で作った影武者でジャ=アークを欺いたクロカゲが、ジャ=アークの背後でニヤリと笑う。
「ダークネス・フィンガー!!!」
一際大きな影のかぎ爪が、ジャ=アークを手と背中を引き裂く。
『グワアアアアアアアっ!!!』
大ダメージを食らったジャ=アークが、前のめりに崩れる。
その手から遂に、プリンセス・ステッキが離れた。
「プリンセス・ステッキが…」
ジャ=アークの手から離れたプリンセス・ステッキが不思議な光を放ち宙に浮く。
その光が大きくなり、プリンセス・ステッキが激しく回転する。
「何!? 何が起きてるの!?」
「ま、まぶしい!?」
「マジカル・プリンセスチャピ! プリンセス・ステッキがマジカル・プリンセスを呼んでるチャピ!」
目映い光を放ちながら、プリンセス・ステッキがゆっくりと宙から本来の持ち主の元へと向かっていく。
そう、マジカル・プリンセスことマジカル・ランドの王女の元に。
その人物が右手で、プリンセス・ステッキをしっかり掴む。
「まさか…!? 君が王女様だったのか…!?」
「そ、そんな…! そんな事って…!?」
「い、一体どういう事なのよ!」
「…隠していてすみません。そうです。私がマジカル・プリンセスです」
プリンセス・ステッキを手にした少女が、いつも通りの丁寧な口調で自らがマジカル・プリンセスだと名乗る。
その衣装はそれまでのマジカル・ウィンディのコスチュームから、まるでお姫様のドレスのようなコスチュームへと変化していた。
「マジカル・ランドを乗っ取り、リアル・ワールドをも物にせんと企む悪しき者よ。成敗の時間です!」
プリンセス・ステッキをくるくると回した後パシッと掴み、マジカル・ランドの王女は宣言する。
「マジカル・プリンセス、ミソラ! いざ、参ります!」
マジカル・ランド王女 ミソラ
年齢:17歳(王立学校11年生)
身長:152cm
体重:43kg
特技:スポーツ全般
趣味:読書
家族構成:父と母
部活:帰宅部
得意科目:国語・歴史・古文書解読・体育
苦手科目:魔法学
好きな食べ物:焼き魚
苦手な食べ物:酸っぱい物
最近の悩み:
リアル・ワールドに理解できない習慣がある事
リアル・ワールドの食べ物がおいしすぎてちょっと太った事
皆に隠し事をしている事
お見合い相手が生理的に無理だった事
将来女王としてやっていけるか不安な事
背と胸の成長がここ1年止まってる事
定期的に縛られないと落ち着かない身体になってしまった事
次週は4話更新です。




