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魔法少女、嫁になる。  作者: アブラゼミ


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35/50

第35話 最終決戦、前夜

「マズイことになった」


ゴールキンとの戦いから3日後。ウスグラーイ領ウスグラーイ城に集められた魔法少女達はクロカゲの言葉と深刻な様子に何やら大変な事が起きたと悟った。


「な、何ですか?」

「ジャ=アークが自らリアル・ワールドに侵攻すると言い出した」

「「「!!!」」」


マジカル・ランドを滅ぼした魔王ジャ=アーク。

そんなのがリアル・ワールドに来たらどうなるか。


「わ、私達の世界がメチャクチャになっちゃう…!」

「いけません! それは絶対に阻止せねばなりません!」

「ああ、今ウーリーンにリアル・ワールドとマジカル・ワールドの境目を広げさせてる最中だが、それが終わり次第リアル・ワールドに来てしまう」

「いつ来る予定なの?」

「ウーリーンの話じゃ後3日はかかると言っていた。だからそれまでに何とかしないと…」

「…奇襲しかないと思う」


早苗の言葉に、ミソラ・すみれ・クロカゲの3人が目を見開く。


「ジャ=アークがリアル・ワールドに来る前に、奇襲して倒す。それしかないと思う」


大人しい早苗にしては過激な提案。

しかしそれしかないというのは他の3人も同感だった。

ただ1人、クロカゲが渋い表情になる。


「…確かに、それしかないと思うが。君達を危険な目に遭わせる訳には…」

「何言ってんのよ。アンタ1人でどうこうできる訳ないでしょ」

「その通りです! これは私達の問題でもあります!」

「…うん、私達の世界をメチャクチャにされる訳にはいかないよ」

「…」


何を言っても聞かなそうな魔法少女達に、クロカゲが更に渋い表情になるが確かに1人でどうにかできる気はしない。

クロカゲは、ため息を1つ吐いて自分の気持ちに折り合いをつける。


「…分かった。で? いつにする?」

「すみれちゃん、身体は大丈夫?」

「問題ないわ」

「…ならなるべく早い方がいいね。冬休みに入ってるし、今日と明日で心と身体の準備を整えて、明後日でどう?」

「明後日ですか…」

「急と言えば急だけど、いつかは来る話ですものね。準備ができるだけマシよ。私はいいわよ」

「俺もいい。できる限りの準備をしておこう」

「…分かりました。私も覚悟を決めましょう」


こうして魔法少女達+魔王の幹部の最後の戦いが始まる事が急に決まった。




*************************************




その日の夜、ウスグラーイ領ウスグラーイ城。

風呂から上がったクロカゲが、髪をタオルで拭きながら自分の部屋に入る。


「こっちでしょうか? それともこっちでしょうか?」

「…」


自分のベッドの上に枕を並べるミソラを無視して、クロカゲがコップに水を注いで呷る。

いよいよ明後日に、最後の戦いが始まる。

もう後戻りはできない。

この日のために準備してきたとはいえクロカゲは、緊張を覚えていた。


「…ミソラ」

「ハイ! なんでしょう!」


そしてもう1つ。彼は決着をつけないといけない事を抱えていた。


「大事な話があるんだ」

「ハイ! なんでしょう!」


ベッドの上で正座するミソラの隣に座り、クロカゲがひとつ息を吐く。


「この戦いが終わったら…」

「待って下さい! それは死亡フラグという奴です!?」

「死亡フラグ?」

「はい! プロポーズは大歓迎ですが戦いが終わった後でお願いします! そうですね… 何でもない日に、一緒にいる時にさりげなく指輪を…」

「…君は何を言ってるんだ? まあいい、とにかくこの戦いが終わったら…」


ミソラの意味不明な発言をいつもの事と受け流し、クロカゲはミソラの目をまっすぐ見据える。


「この戦いが終わったら、俺の事は忘れてくれ」

「えっ…」


クロカゲは、すみれとの約束を破る事にしたのだった。




*************************************




「この戦いが終わったら、俺の事は忘れてくれ」

「えっ…」


クロカゲの言葉に、大きな目を見開いて固まるミソラ。

そんな彼女の顔をまっすぐ見つめながら、クロカゲが話を続ける。


「俺と君は元々違う世界の人間だ。だから俺の事は忘れてくれ」

「なんで…、そんな…」

「分かるだろ? リアル・ワールドとマジカル・ワールドは今たまたま繋がってるだけだ。戦いが終わればまた別々の世界になる。もう会えなくなるんだよ」

「それは…! 私がここに残れば…!」

「ダメだ」


ミソラの言葉を、クロカゲがキッパリ否定する。


「君はリアル・ワールドの人間だろ? ご両親になんて説明するんだ?」

「両親の事はなんとかなります!」

「ならない」

「なります!」

「ならないだろ…」

「なりますったらなります! なんとかなるんです!!!」


顔を真っ赤にしてなんとかなると言い張るミソラ。そんな彼女をクロカゲが、何とも言えない表情で見つめる。

ミソラが、クロカゲに掴みかかる。


「クロカゲさんは…! 私と一緒にいたくないんですか!?」

「………一緒にいたいよ」


ここで「いたくない」と言えば、ミソラは納得しないまでも自分の事を諦める。

そう分かっていても、クロカゲはウソを吐けなかった。

この気持ちに、ウソは吐けなかった。


「…一緒にいたいさ、これからもずっと」

「でしたら! 一緒にいればいいじゃないですか! これからもずっと!!!」

「それは……、できないさ…」

「っ!!!」


クロカゲの言葉に、ミソラの頭に血がのぼる。

血がのぼったが…。彼の真意が分かり一瞬で怒りを飲み込む。

クロカゲは、自分がここに残りたいと言えば全てを引き受ける覚悟がある。

それくらい自分の事を好きでいてくれている。

それほどの覚悟と思いがある上で…、自分の事を諦めようとしてるのだ。


「…もういいです! クロカゲさんのバカぁ!!!」


クロカゲのベッドから自分の枕を取り、ミソラが自分のベッドへと足音を立てて向かっていく。

そのまま布団の中に潜り込み、クロカゲにそっぽを向くようにしてふて寝し始めた。


「………お休み」


クロカゲは、そんなミソラに聞こえるか聞こえないかくらいの声をかけて明かりを消した。




*************************************




「おやクロカゲさん、どうされたんですか?」


マジカル・ランドの王都にある大きな城の大きな広間。

元はマジカル・ランドの王の応接間として使われていた場所。そこが魔王ジャ=アークの間となっている。

その中で何やら大量の魔法陣を書いているウーリーン。それを冷めた目で見たクロカゲが何気ない様子でジャ=アークに話しかける。


「ジャ=アーク様、見てもらいたい物がございます」

『見てもらいたい物だと?』

「クロカゲさん、今忙しいんです。後にしてもらえませんかぁ?」

「いやいや、今見てもらわないといけないんだ。俺が作った新しい魔法をな」


そう言ったクロカゲが、ジャ=アークとウーリーンの返事を待たずに右手の中指と親指を合わせてパチンと鳴らす。


「ブラック・アウト」


クロカゲの言葉と同時に、世界が闇に包まれる。

それが、最後の戦いの合図だった。

ミソラの立てた作戦:正面から突っ込んで殴り倒す

すみれが立てた作戦:正面から突っ込んで蹴り飛ばす

早苗・クロカゲ「却下」



次週は2話更新です。

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