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魔法少女、嫁になる。  作者: アブラゼミ


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第33話 シャイニングVSゴールキン

「待たせたな、魔法少女よ。さあ、勝負を始めよう!!!」


ウーリーンにより人払いの魔法がかけられた公園に、ゴールキンが降り立つ。

しかしマジカル・ウィンディとマジカル・スカーレットは腕を組んだまま動かず、マジカル・シャイニングだけが前に出てきた。


「…どういうつもりだ?」

「見た通りよ、アンタの相手は私がするって事」


たった1人で自分に挑もうとするマジカル・シャイニング。


「…」


その様子から、伊達や酔狂で自分に挑もうとしている訳ではない事を悟りゴールキンが表情を引き締める。

そんなゴールキンを見ながら、シャイニングは後ろにいる2人の方を振り返らずに問いかける。


「…ミソラ、早苗。ゴールウィンってALTが学校に来なかった?」

「ゴールウィン? ゴールウィン先生の事ですか? ガイシケイの会社にお勤めで、おばあさんが日本人だっていう日本語のお上手な…」

「え? ミソラちゃんの学校にも来てたの?」

「………そう、やっぱりそうだったのね」


背中にかかる金髪をサラッと流し、シャイニングがニヤリと笑う。


「フッ、騙すような真似をしてすまなかったな」


シャイニングに応えるように、ゴールキンがニヤリと笑う。


「いいわよ、色々お話できて楽しかったわ。それに私達を強くするためにしてたんでしょ?」

「…さあ、どうだろうな」

「そうね、どうでもいいわね」


2人の話の意味が分からず首を傾げるウィンディとスカーレットをよそに、シャイニングとゴールキンが2人だけで話を続ける。


「始めましょう、ゴールウィン先生」

「いいや、ゴールキンだ」


それ以上、言葉はいらなかった。

シャイニングとゴールキンが互いに構えを取る。

そして、

どちらともなく駆け出し戦いが始まった。




*************************************




「ミソラちゃーん、すみれちゃーん」


話は3日前に遡る。

ミソラとすみれの話し合いが終わった後、すみれが早苗に連絡を取り公園に集まった。


「早苗さん…! その、お久しぶりです。この間は……スミマセンでした」

「ううん、いいからいいから。それより話がまとまったんでしょ?」

「ええ、私がゴールキンと戦う事になったわ」

「ハイ! そうなりました!」

「どうしてそうなったの!?」


ミソラがゴールキンと1人で戦おうとするのを防ごうという事で説得に向かっていたはずのすみれが、ゴールキンと1人で戦うという超展開に早苗が困惑する。


「とにかく、そうなったから」

「ハイ! そうなりました!」

「…」


詳しい説明を省く脳筋コンビに、早苗が呆れる。

呆れるものの、2人の間で話がまとまったなら自分は口出しすべきでないと早苗が結論づける。


「分かった。それじゃあ次の戦いはすみれちゃんがゴールキンと戦うって事で…」

「次じゃないわ」

「え?」

「これで最後よ」

「「っ!」」


ゴールキンを倒すという宣言に、ミソラと早苗が戦慄する。

口だけの虚勢じゃない。すみれは本気でゴールキンを倒そうとしている。


「な、何か……作戦があるの?」

「あるわ。ゴールキンはこっちの攻撃を必ず受けてくる。だからその攻撃でゴールキンを倒しちゃえばいいのよ」

「倒すったって…、あの人、すごく身体が硬いんですよ。どうやって倒すおつもりなんですか?」

「決まってるじゃない。強烈な攻撃を叩き込み続けるのよ」

「た、叩き込み続けるって……」


作戦というにはかなり雑な脳筋作戦に、早苗が戸惑う。


「いくらゴールキンとはいえ限界があるはずよ、その限界を超えるまで攻撃を続けるの。それしかないわ」

「で、でも……そんな事できる訳…」

「できるわ」


豊かな胸に手を当て、すみれが断言する。

「私は空手をしてたもの。連続で攻撃を打ち込むのは慣れたものだわ」

「ですが…それは小学生の頃までのお話ですよね? 今は…」

「今は、っていうかこのひと月の間クロカゲの所に通ってその練習をしてきたわ」

「「!!」」


すみれの発言に、ミソラと早苗がそれぞれ違った反応を示す。

早苗はすみれがそんな事してたとは知らなかったという驚き、

ミソラはクロカゲと2人きりだったというすみれに対する警戒だ。


「安心なさいミソラ。私とクロカゲは新しい技の練習をしてただけよ。やましい事は何もないわ」

「………信じましょう。それで、その新しい技とやらはできたんですか?」

「もう少しで完成するわ。そのために今日もクロカゲの所に行かないといけないんだけど……アンタも来る?」

「…いえ、私は私でやらないといけない事があるので今日は遠慮します」

「そう」


ミソラの発言が強がりだと気づいていながらも、気づいていないフリをしてすみれが突き放す。

元よりやましい事など何もないし、そもそもクロカゲが自分の気持ちに気づいてくれないからという事もあり意趣返しだ。


「あの……すみれちゃん」

「何かしら?」

「すみれちゃんに作戦がある事は分かったし、そのために準備してるのも分かった。そして何だかよく分からないけどゴールキンを倒さないといけない理由があるって事も。でも、ひとつだけ約束して」

「何?」

「無茶だけはしないって事。約束できる?」

「…」


有無を言わさない早苗のまっすぐな瞳に、すみれが目を細める。

一番年下で気弱で遠慮しいな女の子。

でもずっと魔法少女のリーダー格として行動してきた早苗のリーダーシップは本物だ。部活動の部長とかにも向いているかもしれない。


「ええ、約束するわ」


すみれの言葉に、早苗が頷く。

かくしてゴールキンとの戦いをマジカル・シャイニング1人がするという事に決まったのだった。




*************************************




「シューティング・スターっ!!!」

「ムウ!?」


シャイニングの光速の体当たりがゴールキンの身体を直撃する。


「ライトニング・ストライク!」


ガードが間に合わなかったゴールキン、その脇腹に光をまとった回し蹴りが突き刺さる。


「ムウっ! ………中々だ!」


しかしそれを受けきったゴールキンの裏拳がシャイニングに襲いかかる。

とっさにガードしたシャイニングだが、吹っ飛ばされ後退する。


「スパーキング・ナックル!」


しかしシャイニングの勢いは衰えない。

勢いよく突っ込んでいって、稲光のような鋭い正拳突きがゴールキンの腹を捉える。


「ムウっ!!! ムンっ!!!」


それも受けきったゴールキンが前蹴りを放つ。


「っ!」


とっさにガードしたシャイニングだったが、そのガードごと吹っ飛ばされ公園のフェンスまで跳ね飛ばされる。


「「シャイニング!」」

「…ぐっ、大、丈夫よ」

「どうした? 威勢がよいのは最初だけか?」

「…まだまだ、これからよ。ハッ!」


フェンスを足場にして、シャイニングがゴールキンへと突っ込んでいく。


「…」


シャイニングの連続攻撃、それを受け止め続けているゴールキンを見ながらスカーレットが思案を巡らせる。

今のところ勝負は五分どころか、シャイニングが押されている。

ゴールキンはシャイニングの攻撃を受け続けているがその姿には余裕がある。

一方シャイニングは技の勢いこそ衰えていないものの、かなり無理をしているような気がしていた。

スカーレットがすっと目を細めてゴールキンのマントを睨む。

クロカゲの話ではゴールキンはあのマントから蘇らせられたという。

ならばあのマントを炎の矢で射ればゴールキンの存在は消滅するんじゃないか。


「ダメですよ、スカーレット」


一方そんな事はまったく知らないウィンディが、知らないまでもスカーレットがこの戦いに手を挟もうとしている事を察し声をかける。


「この戦いはシャイニングの戦いです。私達はそれを見届けましょう。そう約束しましたよね?」

「…うん、でもこのままだと…」

「本当にそうでしょうか?」

「えっ?」

「気づきませんか? 先ほどからゴールキンが、反撃していません」

「…あっ!」


ウィンディに言われて気がつく。

先ほどからゴールキンはシャイニングの攻撃を受け続けているだけで、反撃をしていない。

いや、反撃できなくなっているのだ。


「ヤアッ! ハアッ!!」

「ぬうううううう!!!!?」


シャイニングの二段回し蹴りが、ゴールキンを後退させる。


「き、効いてるの…!?」

「ハイ、元々シャイニングは戦いの中で調子を上げるタイプ。身体があったまってきて調子が出てきたみたいです」

「で、でも今までは全然歯が立たなかったのに…」

「…これまでは、シャイニングの調子が出る前に戦いが終わっていたせいかもしれません」

「えっ?」

「これまでの戦いは、きっとシャイニングの調子が出る前に終わっていたんです。そのせいでシャイニングの活躍は少なかった。それにシャイニングは私達に合わせ無意識に力をセーブしていたのかもしれません。どうやらシャイニングの実力を見誤っていたのは私達の方だったようです」

「じゃ、じゃあ…シャイニングはそれが分かっててゴールキンと1人で戦いたいって言い出したの?」

「多分シャイニングは気づいてないはずです。今だって夢中で戦ってるんだと思います」

「やあああああ!!!!!」


クロカゲのアドバイスも忘れ、「ハアアアアアア!!!!!」とか「やあああああ!!!!!」とか言いながら攻撃を繰り出し続けるシャイニング。

体温が上がってるせいか、顔は上気しており身体から湯気もでている。

そしてその攻撃は、鋭さと速さを増していた。


「ムウウウウウウウウ!!!!! まだまだぁ!!!」


しかし敵もさすがに伝説の戦士。

攻撃の切れ間を見逃さず、重い一撃を繰り出してくる。


「グウっ!?」

「「シャイニング!!!」」

「…まだ、まだよ! ハアッ!!!」


膝蹴りを腹に食らい一瞬動きが止まったシャイニングだが、それでも戦意を落とす事無く正拳突きを繰り出す。


「ハハハハハハ!!! そうだ! もっと来い!」

「わ、笑ってる?」

「…ゴールキンも燃えているようですね。強者との戦いに」


最高の戦いをしたいという願いが叶い、高笑いを上げるゴールキンにスカーレットとウィンディが戦慄する。

強者にしか分からない境地、ずっと飢えていた強い相手との戦い。

それが叶ったゴールキンはこれまでとは違う表情をしていた。


「ハアアアアアア!!!!!」

「ムウウウウウウ!!!!!」


もはや2人が入る余地がない。

すさまじい戦いにスカーレットとウィンディが息を呑む。


「が、頑張れ…」


スカーレットが、震えながらシャイニングに声援を送る。


「シャイニング! 頑張れ!!!」

「頑張って下さい!!!」

「やあああああ!!!!!」


2人の声援を受けて、シャイニングの攻撃が更に勢いを増す。


「ムウウウウウウ!!!!? まだまだだ!」


攻撃を受けきったゴールキンの反撃に、三度シャイニングが跳ね返される。

しかし今度は体勢を崩さない。

ガードを取ったまま後退しながらも踏みとどまる。


「…ハア、ハアっ……!」

「…フウッ、ムウっ…!」


双方荒い息を吐きながら睨み合う両者。

言葉は交わさずとも両者の思いは通い合っていた。


「………行くわよ?」

「来おおおい!!!」


最後の攻撃を繰り出すというシャイニングの宣言。

それに応えるようにゴールキンが構えを取り声を上げた。


「…っ! シャイニング・ストリーム!!! やああああああ!!!!!!」


目にもとまらぬ速さで、閃光を走らせながら突撃したマジカル・シャイニングの拳と蹴りが次々とゴールキンの身体に突き刺さる。


「やああああああああ!!!!!」

「ムウウウウウウウウ!!!!!」


鍛え上げた肉体でそれを受け止めるゴールキン、それを撃ち抜かんとするマジカル・シャイニングの我慢比べが続く。


「やああああああああ!!!!!」

「ムウウウウウウウウ!!!!!」


10撃、20撃、30撃、40撃。


「やああああああああ!!!!!」

「ムウウウウウウウウ!!!!!」


41撃、42撃、43撃、44撃、45撃、46撃、47撃、48撃、49撃。



「やああああああああ!!!!!」

「ムウウウウウウウウ!!!!!」



50撃に渡るラッシュの最後、渾身の正拳突きがゴールキンの腹に叩きこまれる。

そこで、2人の動きが止まった。


「………」

「………」


正拳突きのポーズのまま固まるマジカル・シャイニングと、50撃ものラッシュを受け止めたゴールキン。


「………かはっ」


全てを出し尽くしたマジカル・シャイニングが片膝を突く。


「………見事」


それを見つめるゴールキンが笑みを浮かべる。

その身体はひび割れていて、頭から砂のように崩れ始めている。

強い風が吹いた。ゴールキンの身体が金色の灰になりその存在を消滅させる。

膝を突きながら右拳を突き出しているマジカル・シャイニングが、意識を失い前のめりに倒れる。

その表情は、全てを出し尽くした勝者のものだった。

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