第32話 マジカル・シャイニング
「私と一緒に魔法少女になって悪者と戦って下さい! お願いします!」
「何言ってるのあなた?」
春、校門の前に待ち構えていた青髪の少女にそう言われ少女は戸惑った。
肩に謎の生き物を乗せた少女は小柄だが、近所の高校の制服を着ていた。
そして話が通じないタイプだというのを第一声で察した。
「ちょっとちょっとミソラちゃん。いきなりそう言っちゃダメって言ったでしょ。えっと、ゴメンね? 急にこんな話をして。私の名前は赤城早苗。近所の市立中学に通ってるの。もしよかったら、少しだけ話を聞いてもらってもいいかな?」
「ま、まあ、少しだけなら…」
制服を着た少し茶髪がかった髪の女の子。こちらはまだ話が通じそうな気がしてついそう言ってしまった。
けれどもその話は荒唐無稽なものだった。
「マジカルワールド? 魔王ジャ=アーク? あなた達本気で言ってるの? アニメか何かの話なの?」
「違います! 現実の話です!」
ズイと近寄って来る青髪の少女。その目は本気を通り越して狂気に見えた。
「な、何だかよく分からないけどお暇するわね!」
そう適当な事を言って逃げ出そうとしたその時に魔王の幹部の1人ジュモクンが現れた。
公園の遊具を怪物に変えたジュモクン、それに変身して戦う青髪の少女と赤髪の少女。
目の前で繰り広げられる戦いを見させられ、もはや信じるしかなかった。
そして成り行きで自分も魔法少女になってしまった。
最初の内は「やっぱなし! 魔法少女になんかならないわ!」と主張したが、自身の発表会をぶちこわしにされ少女は怒った。ミソラの学校の体育祭をぶちこわしにされた時はもっと怒った。自分は友達のために怒ったのだと気付いたのはそのずっと後になってからだった。
青空のように快活な性格で元気なミソラ。
それまでの人生では交わる機会のなかった同世代の女子との交流はすみれの人生に新しい風を吹かせてくれた。
たまに話が通じない事があるが、一緒に居るとこっちまで引っ張り上げられて元気になってしまうミソラの存在が色々悩んでいたすみれの救いになっていた。
しかし、魔法少女になった事で新たな悩みがすみれの中に生まれていた。
1人目の魔王の幹部、ジュモクンはスカーレットが倒した。
3人目の魔王の幹部、ドロローンはウィンディが倒した。
4人目の魔王の幹部、ミズ・シズクティーヌもスカーレットが倒した。
それだけではない。魔王の幹部が使い魔として召喚する怪物もスカーレットかウィンディが倒していた。
マジカル・シャイニングが敵を倒した事は一度もない。
2人はそんな事気にしていないだろうが、すみれはその事がずっと気になっていた。
そしてもう1つ、自分でも驚くくらいの気持ちにぶつかっていた。
「…どうした? 俺の顔をじっと見て」
「な、何でもないわよ!」
髪と身だしなみを整え、イメチェンしたクロカゲにすっかり心奪われてしまったのだ。
クロカゲの素材を見抜き、変身させたミソラは慧眼だったと言えるだろう。
そしてそんなミソラの手により変身したクロカゲの事がすみれは気になって仕方なかった。
自分でも信じられないくらい四六時中クロカゲの事ばかり考えてしまうようになり、クロカゲに会う度にドキドキし、言葉を交わすだけで胸が高鳴った。
と同時に一方で、クロカゲはミソラのものだという事を理解しており引くべきだという気持ちもあった。
恋と友情の狭間ですみれは悩み、葛藤し、もがいていた。
けれどもそんな自分に決着をつけるという覚悟を決めた。
ゴールキンを倒し、クロカゲの事をすっぱり諦めるという覚悟を。
それがマジカル・シャイニングこと、西園寺すみれのケジメだった。
ミソラが早苗とすみれを魔法少女に選んだ理由
ミソラ「勘です!」




