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魔法少女、嫁になる。  作者: アブラゼミ


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30/50

第30話 魔法少女、お昼ご飯を食べる

待ちに待ったお昼休みの予鈴が鳴り、教壇に立つ古文のおじいちゃん先生が授業を途中で終了する。

おじいちゃん先生が外に出ると同時にかしましい声が教室に響く。

すみれはいつものようにお昼ご飯と水筒を持って外に出る。


一人で行動するのはすみれだけではない。

女子校の人間関係は意外と他人に無関心で、仲のいい友達と行動する子達もいるが単独行動をする女子は結構いる。すみれも誘われればクラスメートとお昼を一緒にする事があるが、普段は1人ランチだ。

お昼を食べる場所はいつもバラバラで、すみれは特に決めていない。

教室の自分の席で食べる事もあるが、今日は晴れているので外で食べる事にした。

校舎内は広いので人がいない穴場が多い。今日は屋上に行く事にした。

『立ち入り禁止』のロープを潜り、施錠もされていない屋上のドアを開ける。

先輩がやっているのを見て、初めて行った時はいけない事をしているようでドキドキしたが、もう何度もやっているので慣れてしまった。

それでも外の空気は気持ちいい。すみれはスカートの下にタオルを敷いて慣れた様子で腰掛ける。


晴れ渡る空は澄み切っていて、日差しは暖かいが風が少し冷たい。

水筒に入れた温かい紅茶を1口飲んで、すみれが一息吐く。

お昼は自分で作ったサンドイッチだ。6枚切りの食パン2枚にレタスとハムとコロッケとトマトを挟んだ女子高生が作ったにしては男らしいサンドイッチ。


「…仕方ないじゃない。お腹減るんだから」


誰に言い訳する訳でもなく、すみれが独りごちる。

2時間目と3時間目の間にミックスナッツをつまんだけど、お腹ペコペコなすみれがサンドイッチにかぶりつく。

かぶりついて口の端についたトマトの汁は、指で舐めとる。

女子校で男子の目がない分こういう所はややがさつになっていると思う。

まあ、そんな事気にする相手こっちから願い下げだが。


「…さて、クロカゲに話をつけたんだけどどうしたものかしらね」


もう木曜日のお昼なのにミソラと話ができていない。

3日後には、ゴールキンとの再戦なのに。


「…向こうが連絡断ってるんだから、仕方ないじゃない」


そう、仕方ない。

仕方ないんだけど話をしないといけない。

話をしないといけないんだけど…


「おや? すみれさん?」

「え?」


突然名前を呼ばれ、すみれが振り向く。


「ゴ、ゴールキン先生!?」

「NO! ゴールキンじゃなくて、ゴールウィンです」

「ス、スミマセン、ゴールウィン先生…」


今月だけALTをしてるゴールウィン先生だ。今日の午前にその最後の授業が終わった。すみれが慌てて立ち上がる。


「ああ、座ってていいですよ。ワタシもここでお昼を食べようと思っただけですから」

「そうなんですか…って、いいんですか? 先生が屋上でお昼なんか食べて」

「ワタシは期間限定のteacherですからね。問題ありません」

「…」


問題あるでしょ、と突っ込みたいのをこらえ、すみれがランチを再開する。

ゴールウィンが広げたお弁当はチキンオーバーライスだ。外で買ってきたらしい。


「すみれさんはよくここでlunchするんですか?」

「いえ、そういう訳では…普段は教室や中庭のベンチが多いです」

「そうですか。そのsandwitchはすみれさんの手作りですか?」

「は、はい…」


あまり人に見せられるものではないため、すみれが急いでサンドイッチを隠すように食べる。


「すみれさん、何かお悩みですか?」

「えっ?」

「午前の授業も心ここにあらずといった感じでしたし、何かお悩みじゃないですか?」

「…」


心ここにあらずなんて、よく知ってるわねと思いつつもゴールウィン先生のおばあさんが日本人だという話を思い出しすみれが気を取り直す。


「すみません、ちょっと、友達の事で悩んでて…」

「お友達、ですか?」

「…はい、まあ向こうがそう思ってるかどうかは疑問ですが…」


そう、ミソラには謎が多い。

どこに住んでるか分からないし、自分の事をあまり話さない。

これまで何だかんだとはぐらかされてきたのだ。


「(あの態度、今までは天然だと思ってたけど本当はわざと…?)」

「……すみれさーん、オーイ、すみれさーん」

「あっ、スミマセンゴールキン先生…」

「Goldwinです。どうやら相当深刻なようですね」

「はい…」

「Hmmm…どういう事かは分かりませんが、すみれさんはそのお友達の事が好きなんですね?」

「ハア? い、いえそんな事は…」

「loveじゃなくてlikeって意味ですよ。だから、どう思われてるか不安になるんです」

「それは……そうかもしれません」

「Hmmm…すみれさん、そのお友達と連絡は取れてますか?」

「へっ? い、いえ…。電話もメッセも出てくれなくて…」

「でしたら直接会いに行きましょう!」

「はい?」

「そのお友達の学校は分かりますか?」

「それは……はい」

「ならその学校に行けば会えますよね?」

「いや、あの…」

「会えますよね?」

「…」


すみれは無言でゴールウィンの話に頷く。

そう、会おうと思えば学校に押しかければいつでも会えたのだ。


「…」


そう分かっていたのに、行動しなかっただけなのだ。


「…でも、それで避けられてしまったら…」

「すみれさん。やらずに後悔するより、やって後悔ですよ」

「…」

「人間関係は特にそうです。上手くいかない事もありますが、少なくとも行動せずに後悔するよりはいいはずです」

「…それは、先生のご経験ですか?」

「Yes」

「…」


ゴールウィンの言葉に、すみれが頷く。


「分かりました。すぐに会いに行ってきます」

「Excellent! 頑張って下さい」

「はい」


差し出された手をがっちり握り、すみれがゴールウィンに頷く。


「…」

「? どうかしましたか?」

「いえ、なんでも」


すみれはお行儀悪くサンドイッチの残りを頬張り、紅茶で流し込んでその場を後にする。

覚悟は決まった。もう逃がさない。いや、逃げない。

すみれは学校を早退しミソラの学校へ行く事を決めた。


「…フッ、よい顔になったな」


そんなすみれの後ろ姿を見送りながら、ゴールウィン、もといゴールキンはしみじみつぶやくのだった。

・これまでのゴールキン

ウーリーンに姿を変えさせて人間界に潜入

ウーリーンに色々ねじ曲げさせて外資系の会社に入社

ウーリーンに色々ねじ曲げさせてALTに就任

稼いだお金の3分の1は自分のために使い、3分の1はウーリーンにあげ、3分の1は恵まれない子供達のために寄付


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