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魔法少女、嫁になる。  作者: アブラゼミ


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第21話 魔法少女、仲直りをする

「すみれちゃん…」




黒い瘴気に包まれた矢が胸に突き刺さり、保健室のベッドに横たわっているすみれに向けて、早苗が呆然と手を伸ばす。


「触っちゃダメチャピ! 呪いの矢チャピ!」


チャッピーに言われ、早苗が伸ばしかけた手を引っ込める。


「呪いの矢…? チャッピー、それって何なの?」

「相手を半日後に呪い殺してしまう矢チャピ。マジカル・ワールドでも禁忌にされてる代物チャピ。……まさかこんなものを使ってくるとは思わなかったチャピ」

「ミズ・シズクティーヌは私を狙って矢を放ったんです。それを、すみれさんが庇って…」

「チャッピー!」

「チャピ!?」

「どうすればいいの!? すみれちゃんを助けるにはどうすれば!!!」

「お、落ち着くチャピ早苗。矢を放った相手を倒すか、呪いをやめさせれば呪いは解けるチャピ」

「倒すか、呪いをやめさせればって…」

「ミズ・シズクティーヌは私に言いました。『その子を助けたかったら、虹のカケラを持ってコスモス公園に来なさい』って」

「そんな…、どうすれば…」

「ボクがミズ・シズクティーヌを逃げられないようにするチャピ」

「チャッピー?」

「公園に結界を張るチャピ。そうしたらいつもみたいにテレポートでマジカル・ワールドに逃げられなくなるチャピ」

「それなら…! ミズ・シズクティーヌを倒せば…!」

「でもどっちか1人しか戦えないチャピ」

「どうしてですか?」

「結界を張っている間はボクは動けないチャピ。その間ボクをどっちかが守らないといけないチャピ。だからミズ・シズクティーヌと戦えるのはどっちか1人チャピ」

「それなら私が…!」

「ミソラちゃん」


ミソラを制し、早苗が何かを決意した表情になる。


「ミズ・シズクティーヌは私が倒すよ。ミソラちゃんはチャッピーを守ってて」

「ですが…!」

「遠距離攻撃が主体のミズ・シズクティーヌに接近戦主体のミソラちゃんは分が悪いよ。これまでの戦いだって、近づくのが難しかったじゃない」

「ですが、早苗さんの炎もミズ・シズクティーヌの水と相性が…」

「…そこは私に考えがあるから。お願い、私に戦わせて」

「………分かりました。では早苗さんに任せます」


早苗の言うことを信じ、ミソラが頷く。

それから少し逡巡した表情をした後、早苗にこう言った。


「早苗さん。すみれさんからは言うなって言われたんですけどすみれさんが駄菓子を食べたことなかったり、出店の物を食べたがらなかったのにはちゃんとした理由があるんです」

「理由?」

「すみれさんは子どもの頃ひどいアレルギーだったそうです」

「え…?」


「食べられない物が多くてお菓子なんてほとんど食べられなくて…。今は大丈夫だそうなんですが、食べた事ないものは躊躇してしまうんだとか」

「…」

「それとなんでも…、おじいさまがご病気になられてからすみれさんの家の会社の経営が苦しいとか…」

「えっ…?」


「すみれさんのお小遣いは、アルバイトで稼いでいるそうです。でも勉強道具とかを買ったら全然足りないんだとか…。それと軽音部のライブに行きたがらなかったのは、せっかく皆でいるんだから何か皆で楽しめるレクリエーション系に行きたかったそうなんです」

「そんな…」

「素直じゃないですよね。ツンデレです」

「…」


「早苗さん、すみれさん言ってました」

「何を…?」

「『早苗に言い過ぎちゃったわ。どうして私って、あんな言い方しかできないのかしらね』って」

「…っ」

「私に代わりに謝っておいてくれっておっしゃいましたけど、お断りしました。自分でごめんなさいしてください、って」

「…」

「早苗さん。すみれさんとお互い2人でごめんなさいしましょう。約束できますか?」

「…うん」

「よし! さあ、コスモス公園に行きましょう!」




*************************************




「来たわねお嬢ちゃん達、虹のカケラは持ってきたのかしら?」

「そんなものはありません!」

「そう。じゃあワタクシは帰るわ。あの子死んじゃうわね」

「させないチャピ!」

「なっ!?」


結界に阻まれ、ミズ・シズクティーヌがマジカル・ワールドに帰る事に失敗する。


「公園に結界を張ったチャピ! お前はもう逃げられないチャピ!」

「へえ…、でもあなたを倒せばこの結界も解けるんでしょ?」

「させません!」


ミズ・シズクティーヌが放った水の矢を、マジカル・ウィンディに変身したミソラが防ぐ。


「あなたの相手は私だよ。ミズ・シズクティーヌ」


そしてマジカル・スカーレットが、ミズ・シズクティーヌの前に立ちはだかった。


「へえ? 3人がかりでも勝てなかったワタクシを相手に、あなた1人で倒そうってつもりかしら?」

「うん。これは私が……どうにかしないといけない問題だから」


並々ならぬ決意を滲ませるマジカル・スカーレットと対照的に、ミズ・シズクティーヌは余裕の笑みを浮かべる。


「炎が水にどう勝つって言うのかしら? 見せてみなさいよ!」


言葉と同時に、ミズ・シズクティーヌの水の矢がスカーレットに襲いかかる。


「スカーレット・アロー! 乱れ打ち!!!」

「…っ!? ちいっ!」


1本の水の矢が数本の炎の矢に打ち消され、飛んで来た流れ矢を避けながらミズ・シズクティーヌが悪態を吐く。


「(相性の悪さを手数の多さでカバーしようって訳ね。なるほど、考えたじゃない。しかも…)」


威力は落とす分、手数を増やす事で対抗してきたスカーレットの戦略にミズ・シズクティーヌは素直に感心する。

今度は複数本の水の矢での攻撃、今度も炎の矢の乱れ打ちで応戦したスカーレットが、打ち消せなかった水の矢を躱す。


「(あの2人ほどじゃないけど、この子だって動ける。打ち消せない水の矢は躱してしまえばいいって寸法ね)」

「スカーレット・アロー! 乱れ打ち!!!」

「ちいっ! …厄介ね!」


今度はスカーレットからの攻撃に、ミズ・シズクティーヌが水の矢で応戦する。

ただ乱れ打っているだけじゃない。

毎回毎回炎の矢の飛んでくる本数や角度や速度が違うのでその都度対応しないといけない。


「でもそんな弱火じゃワタクシの水は打ち消せなくてよ!!!」


水の矢から水の渦に攻撃を切り替えて、乱れ打ちの炎の矢をまとめて打ち消しスカーレットに直撃させたミズ・シズクティーヌが勝ち誇った笑みを浮かべる。


「スカーレット!!!」

「くっ…! 大、丈夫…」

「どうしてそんなにムキになって戦うのかしら? 虹のカケラをとっとと渡すか、あんな子見捨ててしまえばいいじゃない」

「そんなの、できない…」

「ハア?」

「私達は約束したの…。ジャ=アークを倒して、マジカル・ワールドを取り戻すって…!」

「あなた達には関係ない事じゃない。なんで違う世界のためにそこまで頑張るの?」

「そんな事、決まってるよ…」


スカーレットが、それまで思っていた事を吐露する。


「正直、最初は魔法少女になれたってだけでよかったの…。ずっとなりたいって思ってた、でも自分にはなれないと思ってた魔法少女になれただけで…。でも今は、チャッピーのためにマジカル・ワールドを取り戻したいって思ってるの…」

「チャピ…」

「それにすみれちゃん…。私、まだ、すみれちゃんに謝れてない…! あなたを倒して、すみれちゃんに謝らないといけないの…!」

「あなた、あの子を嫌ってたんじゃなかったの?」

「好きじゃないよ。正直まだ、好きじゃない。でもこれから好きになれるかもしれないし、自分の事の方がもっと嫌い…!」


スカーレットが、今までにない気合いのこもった様子で膝に手を当てながら立ち上がる。


「あなたがどれだけ強かろうと! 私はあなたを倒してすみれちゃんを助ける! そしてちゃんと謝るの! 何も知らないのに決めつけて嫌っててごめんなさいって!」


スカーレットが右手に握ったマジカルステッキが赤く光り輝く。


「スカーレット! マジカルステッキが!」

「えっ? 何?」

「マジカルストーンを使うチャピ! マジカルステッキにはめ込むチャピ!」

「わ、分かった!」


何に使うか分からないけど、ジュモクンを倒した時に手に入れていたマジカルストーンをチャッピーに言われたとおりマジカルステッキにはめ込む。


「こ、これは…!?」

「新しい力です!」

「チャピ!」

「また都合良くあなたたちだけパワーアップするの!?」


ミズ・シズクティーヌの嘆きをよそに、スカーレットのマジカルステッキがパワーアップし一回り大きくなる。

そして、それまでの小さな弓からアーチェリーの弓のような大きな弓に変化した。


「スカーレット!」

「うん! 分かってる!」


マジカル・スカーレットが弓を引き炎の矢をつがえると、今までとは桁違いの大きさの炎の矢が燃え盛る。




「スカーレット・アロー! フェニックス!!!」




スカーレットの放った炎の矢が炎の鳥になり、飛んでくる。


「キイイ! こっちも最終奥義よ! ウォータードラゴン!!!」


それに対して負けないくらいの大きな水の龍を出したミズ・シズクティーヌが、炎の鳥に襲いかからせる。

水の龍の大きな口に飲み込まれた炎の鳥、しかし消される事無く水の龍の身体の中を飛び回り、水の龍を炎で燃やし尽くす。


「キイイ! キイッ! キイッ!」


ミズ・シズクティーヌが、奇声を上げながら水の塊を炎の鳥にぶつける。

けれども水の塊はあっけなく炎の鳥の翼に打ち消される。

炎の鳥はそのまま速度を上げ、ミズ・シズクティーヌの顔から全身へ直撃した。


「こ、このワタクシが~~~~!!!!?」


炎に包まれ、ミズ・シズクティーヌが絶叫する。

そして、ミズ・シズクティーヌの存在は消滅したのだった。




*************************************




「うっ…」

「すみれちゃん! 起きて! すみれちゃん!」

「早苗さん! そんなに揺さぶっちゃダメですよ!? ちょっと乱暴すぎです!」

「放してよミソラちゃん! やっぱこの顔見てたらうらやましいの! 肌キレイだし、スタイルいいし、背も高いし、胸も大きいし、すみれちゃんだけズルい!」

「早苗さん!? 私怨と本音が出てますよ!?」

「…」

「わ、私だって…いつかきっと! これくらい背も高くなってスタイルもよくなって胸も大きくなりたいの!」

「私もです! 一緒に頑張りましょう!」

「…いや早苗はともかくミソラはもう無理でしょ。成長期終わってるでしょ」

「すみれちゃん!」

「すみれさん!? あんまりです!!?」

「…うっるさいわね。こっちは今起きた所なのよ…」


寝起きにミソラの大声で、痛む頭を抑えながらすみれが身体を起こす。


「あ…、すみれちゃん…」

「早苗」


すみれが、早苗の身体をギュッと抱きしめる。


「あなたが私を助けてくれたんでしょ。ありがと」

「…っ。すみれちゃん、ご、ごめんなさい…」

「私だって言い過ぎたわ。ごめんなさい」


すみれの腕の中で、早苗が大声で泣き始める。

そんな早苗を見て、ミソラがもらい泣きをする。

そしてすみれは……何も言わずに早苗の頭を撫で続けるのだった。

こうして魔法少女達は仲直りをし、絆を更に深めたのだった。



………

……



「あのお嬢ちゃん、絶対に許さないわ…! ワタクシの美しい顔と身体を焼くなんて…!」


マジカル・ワールドの水瓶から、ミズ・シズクティーヌが姿を現す。

やられても復活できるよう、分身を残機として残していたのだ。


「今はまだ、力が足りてないけど、力を取り戻したら復讐を…!」

「困りますねえミズ・シズクティーヌ。勝手な真似をされては」

「なっ…!?」


身体を背後から何かで貫かれ、ミズ・シズクティーヌが震えながら振り返る。


「ウー、ちゃん…!?」


そこにいたのは、魔王ジャ=アークの付き人ウーリーンだった。


「ジャ=アーク様はおっしゃいましたよねえ? あなたに与えられたチャンスは『今日1日だけ』ですよ。それにいくら苦戦しているとはいえ魔法少女に対してあの呪いの矢を使うなんてあなたには悪役の美学が足りません」

「何、を…!?」

「悪役でもしていい事としちゃいけない事があるという事ですよ。それにあの呪いの矢はジャ=アーク様に使う用に用意していたのに、困りましたねえ」

「なっ…!? あなた…!?」

「あなたには関係ない事ですよミズ・シズクティーヌ。あなたはここで消えるのですから」


ウーリーンがミズ・シズクティーヌの背中に突き刺している手を動かし、その存在を真っ二つにして消滅させる。

残機として残していた分身は一体だけだ。ミズ・シズクティーヌの存在はこれで完全に消滅した。


「やれやれ…。強さは確かでしたがいけませんでしたね。まさかこちらをも出し抜こうとしていたとは。まあドロローン殿のように頭が足りないのも問題でしたが」


水のついた手を振り、ウーリーンが意地の悪い笑みを浮かべる。


「やはり頼りになるのはゴールキン殿だけのようですね。まあこれまでの皆さんも捨て駒にしてはよくやってくれましたが」


切れ長の目に野心を覗かせ、ウーリーンがほくそ笑む。

ウーリーンにとって魔法少女達との戦いは遊び。その気になればいつでも自分が…


「精々楽しませて下さいよ、魔法少女の皆さん」


誰にも聞こえないウーリーンの声が、廊下にこだまする。

その影は、身体に似つかわしくないほど禍々しく巨大なものだった。

ウーリーン

年齢:???歳

身長:120cm

体重:80kg

特技:???

趣味:茶をたしなむ事

好きな食べ物:おまんじゅう

苦手な食べ物:アルコール類全般

最近の悩み:魔王の幹部達が使えない

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