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魔法少女、嫁になる。  作者: アブラゼミ


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19/50

第19話 魔法少女、仲間割れをする

『ミズ・シズクティーヌよ』

「…はっ」

『いつになれば虹のカケラを手に入れられるのだ』

「…申し訳ございませんジャ=アーク様、次こそ必ず…」

『ミズ・シズクティーヌ!』

「は、はっ!」

『今日1日だけ猶予をやろう』

「今日1日…!?」

『今日中に魔法少女達を倒し虹のカケラを手に入れるのだ。よいな?』

「は、はっ!」


ジャ=アークから解放され、城の廊下を進むミズ・シズクティーヌが焦った様子で爪を噛む。


「今日1日ですって…!? 冗談じゃないわ! どうしろっていうのよ!?」


髪をくしゃくしゃに掻き、地団駄を踏んでミズ・シズクティーヌが悪態を吐く。

あれこれ手を尽くして魔法少女達に挑んでいるものの、まったく成果を上げられず追い返されてる現状。しかし今回しくじれば消されてしまう。

何か、何かこの状況をどうにかできるものを…

ミズ・シズクティーヌはある物を思い出し歪んだ笑みを浮かべる。


「そうだ、『アレ』があったじゃない…」





*************************************




「早苗さんにすみれさん! ようこそ我が校へ!」


今日はミソラの高校の文化祭。

白いリボンと紺のセーラー服を着て、謎のかぶり物をかぶったミソラに出迎えられ早苗とすみれが困惑の表情を浮かべる。


「ねえミソラ、そのかぶり物は何?」

「チャッピーです!」

「似てないチャピ」


早苗の鞄から顔を出したチャッピーが不服そうな顔をする。


「チャッピー、気持ちは分かるけどしゃべっちゃダメだよ。誰かに見られたらどうするの?」

「はーいチャピ」


早苗に諭されチャッピーが鞄に潜り込む。


「2人共! 是非茶道部に来て下さい! お茶とお菓子があるんです!」

「野点でもやるのかしら?」

「いえ! 予算がないので部室です!」

「ケチな話ね」

「アハハ…、まあ、公立校だから…」


ミソラの通う高校はごく普通の普通科しかない公立校なため、校舎も古くすみれの通う中高一貫の私立校に比べるとかなり設備で劣る。

それを一瞥したすみれが、ミソラに向き直る。


「まあお呼ばれするわよ。どこに行けばいいのかしら?」

「3階の一番端っこです!」

「なんでそんな遠くなのよ」

「弱小部活だからです!」

「アハハ…、じゃあ行こっか」

………

……

「すみれさん! 作法完璧でしたね!」

「むしろそっちが間違いだらけだったわよ。アレで本当に茶道部なの?」

「ゆるい部活ですから!」

「ゆるすぎよ」

「アハハ…、まあお茶はおいしかったしお菓子も貰えたから…」

「お菓子おいしいチャピ」


早苗にもらったお菓子をつまみながらチャッピーが鞄の中から顔を出す。


「確かにおいしかったけど、これなんてお菓子なの? 私初めて食べたわ」

「駄菓子だよすみれちゃん。…でもなんで駄菓子なの?」

「安いですから!」

「身も蓋もない話ね」

「アハハ…」


人が来ないためいっぱいもらった駄菓子を手に、早苗が苦笑を浮かべる。


「それにしてもすみれちゃん、駄菓子食べた事ないんだ?」

「ええ」

「やっぱりお嬢様は違うね。おやつはいつもケーキなの?」

「…」


早苗の言葉に、すみれが眉をひそめる。


「ま、まあいいじゃないですか! それより次に行きましょう! 時間は有限です!」


2人の間に流れた険悪な空気を読んだミソラが、すみれと早苗の背中を押して廊下を進む。

何かを言いかけたすみれだったが、口をつぐむのだった。

………

……

「…」

「…」


渡り廊下を歩くすみれと早苗が、さっきから一言も口を開かない。

沈黙と雰囲気に耐えかねたミソラが、空気を変えようといつもより明るくすみれに話かける。


「すみれさん、すみれさんの学校の文化祭って、どんな感じなんですか?」

「普通よ普通。出し物と展示物と出店を出す普通な感じよ。まあ熱気はすごいけどね」


ミソラの質問に、すみれが素っ気なく答える。


「熱気ですか?」

「女子校はイベント多いからお祭り騒ぎが好きなのよ。まあ節度あるお祭り騒ぎだけどね」

「そうなんですか! 行ってみたいです!」

「アハハ…、さすがお嬢様学校…」


早苗の言葉に、すみれが眉をひそめる。


「何? お嬢様学校だから何だって言うの?」

「…別に」

「す、すみれさん! フランクフルト食べませんか?」


漂い始めた不穏な空気を察して、ミソラが外の売店を指さしながら声を上げる。


「いらないわ」


しかしすみれは、それを素っ気なく突っぱねた。


「じゃあ綿菓子!」

「いらないわ」

「な、ならチョコバナナを…」

「いらないわ。おなかいっぱいなの」

「で、でしたら軽音部のライブを聴きに…」

「行かないわ」

「…」


何を言っても素っ気なく突っぱねるすみれに、ミソラが根負けして黙り込む。


「ねえすみれちゃん、それはないんじゃないかな」


それにイライラした様子の早苗が、ミソラ越しにすみれをたしなめた。


「何よ早苗」

「いくら自分がお嬢様だからって、いつもおいしい物を食べたりコンサートに行ってるからって、そんなに否定する事ないんじゃない? お嬢様のお口やお耳には、合わないかもしれないけどさ」

「…」


早苗の言葉に、すみれが眉間にしわを寄せる。

そんなすみれに更にイライラした様子で、早苗が更に言い募る。


「前々から思ってたけど、すみれちゃんのそういう所、よくないと思うよ」


イライラした様子の早苗とすみれに挟まれ、ミソラがオロオロとうろたえ始める。

気まずい雰囲気。

それを破ったのはずっと黙り込んでいたすみれだった。


「言いたい事はそれだけかしら?」

「え?」


下唇を舐めて、すみれが早苗に反撃を開始する。


「私も早苗の『自分は可哀想』って思ってる所とか、その『可哀想な自分』を手放せない所とか、気に入らないって思ってるわ」

「な、なにそれ…」

「早苗の家が大変な事は理解するわ。早苗が家事や何やらで頑張ってる事も。でも、その『可哀想な自分』に甘えて人を妬んだり、弟に家事を手伝わせるのを諦めてる所は早苗のよくない所じゃない?」


長い髪をサラッと流し、すみれが早苗を見下ろしながら言う。


「そ、そんなの…」

「すみれちゃんに言われたくないって? そうね、私はしょせん他人だものね。でも大変なのは自分だけなんて思わない方がいいわよ」

「…っ、もういい! 私帰る!」

「さ、早苗さん!」


ミソラが止めるのを振り切り、早苗が大股で外へと向かっていく。

すみれは腕を組んだままフンと鼻を鳴らしその背中を睨むだけだ。


「ムカつくムカつくムカつく! 何よ自分は恵まれてるくせに!」


2人から遠ざかった早苗が、ため込んだ怒りを吐き出すように大声を出す。

パリっとアイロンのかかった私立のお嬢様学校の制服、背も高くスタイルがよく、少しツンケンしてる所はあるものの整った顔立ちを思い出し早苗が石ころを蹴っ飛ばす。

初対面から気に入らなかった。

魔法少女の仲間に誘ったものの、本当は仲間にしたくなかった。

言うことを聞いてくれないし、トラブルは起こすし、ちょいちょい表に出るお嬢様育ちな所も気に入らなかった。

ずっと、

ずっとずっと我慢していた。

魔王の幹部達との戦いに必要だから我慢していたけど半年間の我慢が爆発した。


「ムカつく!ムカつく!ムカつく!」


壁でも蹴りたいのを我慢して、早苗が地面を蹴る。

人を見下した目、態度、物言い。本当は全てが気に入らなかった。


「何よ! 私の気も知らないで!」


家事だって本当は弟にも手伝って欲しい。けれども2つ下の妹に気を遣わせたくないから家事を自分が引き受けてきた。

弟ばかりに手伝わせてると『姉ちゃんはクラブ活動してるのにズルい!』と言い出し妹が『私も手伝う』と言ってしまうからだ。

妹には好きな事をしていて欲しい。小学6年生で最後の大会だからなおさらだ。

自分も小6の吹奏楽コンクールでいい思い出を作れたから…


「…」


すみれの言っている通りだと思う。

確かに自分は嘆いてばかりでそこからどうするか考えようとしてなかった。

けれどもあの言い方はいくらなんでもあんまりだ。


「魔法少女、やめちゃおうかな…」


誰にも聞こえない弱音を独りごちながら、早苗が涙をこらえるように上を向く。

すみれと顔を合わせるくらいなら、もう魔法少女をやめてしまいたい。

ずっと憧れていた魔法少女に、なれたんだけど…


「さ、早苗さん! 大変です!!!」


校門を出た早苗を、血相を変えたミソラが追いかけてきて両肩をつかんでくる。

何をそんなに慌てているのかと聞く前に、ミソラが口を開いた。




「すみれさんが、ミズ・シズクティーヌに襲われました!」

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