第17話 魔法少女、家捜しをする
「フッフッフ、予想通りです」
ある昼。
誰もいないウスグラーイ領ウスグラーイ城に1人の魔法少女が降り立つ。
「クロカゲさんがこの時間は何かをしに外に出てるのは聞き出し済みです! そして夕方まで帰ってこない事も!!!」
振替休日で学校が休みだったミソラが、ウスグラーイ城のクロカゲの仕事部屋の前に立つ。
普段は何やかんやと理由を付けて入らせてくれない場所だ。
「しかーし! クロカゲさんのいない今なら入り放題! お嫁さんに隠し事なんてさせません!」
仕事部屋の扉をバーン!と開け放ち、ミソラがフンと鼻を鳴らす。
「さあ! クロカゲさんの秘密を暴いてみせましょう!」
かくして魔法少女による魔王の幹部のえっちな本探し……もとい家捜しが始まったのである。
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「…うーん、見事にお仕事の書類ばかりですね」
当たり前といえば当たり前の事を言いながらミソラが書類の束を元あったファイルに戻す。
戸籍関係の書類や税金関係の書類、土地関係の書類からウスグラーイ領が行っている事業の計画書や資金繰り関係の書類まで、意外と真面目に仕事してるのかクロカゲの部屋には仕事関係の書類が整理されていた。
「夏休みの間も、ずっと何か書類仕事をしてましたしね…。領主のお仕事ってお忙しいのでしょうか?」
ミソラのイメージでは、領主というと部下に仕事を任せて自分は贅沢三昧したり領民を虐げたりしているイメージだったので仕事してるというのは意外だった。
そもそもクロカゲはまだ21歳という若さなのに、領主になって6年目に入ったというのが腑に落ちない。それだと15歳で領主になったという事になる。
「こう言っては何ですが、他に人はいなかったんでしょうか?」
クロカゲが非凡な人物らしい事はミソラも認める所だが、人の上に立つタイプに見えないだけに疑問が残る。
「ん? これは何でしょう?」
ある引き出しの中に入っていた書類の束に、ミソラが目を細める。
それは几帳面なクロカゲにしてはやや雑な管理をされている書類達で、
文字もクロカゲのものじゃない書類だった。
「これって…」
書類の中身を確認しながら、ミソラは息を呑む。
これは、大変な物だ。
「クロカゲさん、あなた……この世界を取り返した後のことを考えてるんですね」
これだけの物を集めたクロカゲの執念を感じ、ミソラは身震いする。
ジャ=アークを倒してこの世界を取り戻す。その後のことまで考えているクロカゲはやはり大人と言えるだろう。
そしてその時自分は…
「…」
頭を振って、ミソラはその先を考えるのをやめる。
今はまだ、その時が来た時のことは考えられない。
まずはジャ=アーク達を倒すことだけを考えよう。
引き出しの中に書類を戻し、ミソラは書棚に目を向ける。
マジカル・ワールドの図鑑や法律関係の本など領主の仕事に関係ある物も並んでいるが、小説や絵本も並んでいる。
その中の一冊をミソラは手に取る。
「この本、やっぱり面白いですね…」
この世界でベストセラーの小説のページをめくり、ミソラは目を細める。
文章に加えて絵もついている小説だ。リアル・ワールドのライトノベルに似ている。
リアル・ワールドでは珍しくもないものだが、マジカル・ワールドでは斬新だったらしくシリーズで大ベストセラーになった作品らしい。
文章も絵も同じ作者が書いていて、どちらもクオリティが高い。リアル・ワールドで出版されても売れるだろう。
けれども今はこの本を読んでいる場合じゃない。
ミソラは本を元に戻し、他の本を次々手に取ってめくり中身を確認する。
「…うーん、えっちな本はありませんね」
隅から隅まで本を手に取り戻しながら、ミソラが残念そうにため息を吐く。
中々手を出してくれないし、クロカゲの好みを知れるいいチャンスだと思ったのに空振りに終わりそうだ。
そんな事を思いながらミソラが一番右端の、真ん中から3番目の本を手に取る。
とっても分厚い法律関係の本だ。抜き取るだけでも苦労する。
「せーのっ! えいっ!!!」
その分厚い本を抜き取った瞬間……本棚が音を立てて動き始めた。
「えっ!?」
真ん中の本棚が後ろに下がり、自動ドアのように開く。
ミソラが驚きながらもおそるおそる中を覗くと、そこには3畳ほどの部屋があった。
「ここって……何の部屋なんでしょう?」
部屋の中には窓と机と椅子しかなく、机の上には本と紙と筆記具がきちんと並んでいる。
その几帳面に整理された様子からも、この隠し部屋がクロカゲの隠し部屋だと察したミソラが机の上の紙を何の気なしに手に取る。
「こ、これって……!?」
そしてそこに書かれていた物に、衝撃を受けたのだった。
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「あれ? ミソラ、来てたのか?」
「…ええ、はい」
「学校はどうしたんだ?」
「…今日は振替休日でした」
「へえ、そうだったのか」
特に興味なさそうに相づちを打ち、クロカゲが上着を脱ぎハンガーにかける。
「あ、あの! クロカゲさん!」
「うん? なんだ?」
「…いえ、なんでも…」
「? どうしたんだ?」
「…っ!?」
顔を覗き込んできたクロカゲに、ミソラが顔を真っ赤にして目を逸らす。
その様子を不審に思ったクロカゲが、ミソラに何かを聞こうとした瞬間、
「怪しいと思って来てみたら、随分面白い組み合わせね。魔王の幹部と魔法少女なんて」
突然聞こえてきた声に、クロカゲとミソラが顔を上げる。
そこには、ミズ・シズクティーヌが立っていた。
「説明してもらおうかしらクロカゲ、どうしてこの小娘がここにいるのかしら?」
クロカゲの隠し部屋
入る時は一番右端の棚の、真ん中から3番目の本を抜き取る。
閉める時は手で閉めて、本を後ろから差し込んで鍵を掛ける。
外に出る時は後ろから本を棚から抜き取り棚を手で開ける。
たまに本をうまく抜き取れなくて、中々出られない時がある。




