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暗空の首狩り公  作者: バルト
主人公編 帝国の首狩り公
3/13

第二話 過去:1

俺の名前はレイジ。レイジ・スカウトだ。アルトーナ帝国航宙軍中佐、まぁ18歳の軍人の階級としてはだいぶ高いだろうな?そして、俺は士官訓練はしっかり受けてない。でも俺は佐官だ。…………なんでかって?俺がたまたま大きな功績をあげ、それを活かすのに軍が必要だと判断したからだ。ま、士官に必要な事はだいたい学んだし、ぶっちゃけ学んでないのは立ち振舞いだけ。なら、大事な外交等に出さず、戦闘指揮を執らせれば良いだけだと判断された。将官には絶対になれないがな。戦いのセンスはあると思ってる。なんせ、俺の功績は敵機の撃墜だからな。軍に入ってから、かなりの経験をしたと思ってる。それは今でも鮮明に思い出せる。軍に入って基地に配属された3日後に襲撃を受けた時の恐怖と怒り、戦闘している時の高揚感、帰還した時の生きているという喜び……………そして悲劇も。


------------------------


「レイジ・スカウト、16歳。訓練時の成績もまぁまぁで、近接戦闘はとても優秀………なるほど、当たりだな!」

「あ、ありがとうございます!」


あの日、俺はアルトーナ帝国中央軍学校を卒業して、配属された基地で司令官のスピーチを聞いた後、個々に呼び出され、自分の所属する部隊を教えられていた。そして、剣を使った近接戦闘がとても得意で、射撃も上の中くらいだったから、エリートが集まる特殊強襲部隊(アサルトフォース)『オルトロス』に所属する事になった。部隊の先輩達と、同期の連中と顔合わせをして、隊長の自費で開かれた歓迎会でガチガチに緊張しながら得意分野を伝えあい、少しずつ緊張も解れて仲良くなれた。あの日、俺はかつて主力だった戦闘機を試作段階で一方的に叩き落としたという、人型戦闘兵器『アールディルテ』を、初めて近くで見た。そして、


「白兵の訓練をもう少ししたら、こいつの訓練もつけてやるよ」


という隊長のセリフにワクワクしたもんだ。だが、俺は結局、隊長に本物を使っての訓練はして貰えなかったんだ。あぁ、勘違いするなよ?俺が白兵戦が下手だった訳じゃない。最初にシミュレーターでの訓練に進んだのは俺だし、なんなら俺以外進めなかった。本物を使った訓練を受けられなかった理由は…………連邦の連中が、襲撃してきたからだ。


------------------------


「隊長!今日は実機に乗れるんですか!?」


当時、まだ戦場を知らず、無邪気だった俺は、そう隊長に問いかけた。


「あー………そうだな、そろそろお前も慣熟してきてるし、歩行訓練くらいはしても良いかもなぁ」

「やった!昔空を飛んでるのを見て、ずっと乗ってみたかったんです!」


俺がアールディルテに乗りたかった理由は、本当にそんな事だった。


「ははは、そうか。俺は戦闘機から乗り換えさせられたクチだからなぁ………ま、こっちの方が強かったし、俺も気に入ったから不満は無かったがな」


そう苦笑しつつも優しく、俺を格納庫の方に連れて行こうとした、その時だった。耳をつんざく轟音と、立っていられないほどの揺れが基地を襲った。


「なんだ!?」

「これは……!?」


キィィィィン……………

と、何かが高速で()()()()()()()音が聞こえた。そして………


ドッゴォオォォォォォン!!


窓から見えていた管制塔と兵舎が爆炎に包まれた。その上を、いくつかの黒い影が横切った。それは、当時最新式だった()のアールディルテ、バーディア連邦軍正式量産型アールディルテ【BAR-200】だった。背面ハードポイントにシールドかマルチミサイルランチャー、または小型電磁加速砲を搭載可能で、あの時の機体もマルチミサイルランチャーを搭載していた。当然基地は大混乱、戦闘機隊とアールディルテ隊が緊急発進(スクランブル)していった。隊長も、白兵は意味がないからアールディルテに乗って出撃していったが……こちらはまだ旧世代機である【AAR-105】だった。機動力も攻撃力も、そしてシールド出力も圧倒的に向こうの方が高かった。あっという間にこちらの航空、航宙戦力は壊滅、対空砲もほとんどが破壊され、基地司令や幹部は戦艦で退避していった。俺達には死守命令が下され、友軍が到達するか、全滅するまで戦わなければならなかった。だが、こちらはどんどん押されていった。当然だ。金属の塊に、多少パワーアーマーなどで強化されているとはいえ人間が叶うはずが無い。敵のアールディルテに蹴り飛ばされ、俺のパワーアーマーは破損、機能を停止した。その時に、たまたま崩れていた床の穴の中に落ちて、隊長が俺に見せようとしていたのであろう練習用機、【AAR-102】があったんだ。練習用機ではあったが、どうやら隊長はかなり俺に期待してくれていたようで、パワーなどは正式採用されていた105と変わらないほどだった。シールド出力が高い変わりに機動性が少し低いという機体だから、練習用にはもってこいだったのだろう。俺は、生きるために、そのコックピットに乗り込んだんだ。歩行訓練から始めるつもりだったんだろう、武装は何一つ無かった。だが、問題も無かった。俺は背後から接近し、素手でブレードを持った敵機のコックピットを潰した。そいつの武器を使って、他の敵アールディルテを破壊して、援軍が到着すると同時に、最後の一機を両断したんだ。当然その部隊を率いていた士官は驚き、上層部に報告、俺は所属基地は壊滅、部隊にいたっては俺以外全滅、という大損害だった。だが、それにより俺を縛るものが無くなった事から、帝都の士官学校に押し込まれ、振る舞い以外の教育を、そしてとある()()を受けた。卒業して、第三アールディルテ連隊『ストームブリンガー』に配属されたんだ。第一連隊は実験部隊で、戦力と数えて良いのかわからないし、第二連隊は第三よりも練度が低かった。正真正銘、俺達は最精鋭部隊だった。出撃すれば、必ず勝利した。どんな戦場でも、俺達は誰も欠けることは無かった。稀に凄まじい精度の機関銃を撃つ白いアールディルテがいたが、その時は他の機体を攻めて崩し、撤退に追い込んできた。だが、そんな日々も唐突に終わってしまった。





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