第一話 銀河戦艦の初陣(前編)
しばらくFrom Abyssの方は休む予定です(夏休み使って考えたけど納得の行くネタが浮かばない)
──アルトーナ帝国国境地帯・コトレダ星系──
「ド派手なパレードだったなぁ、データで見てはいたがこんなに巨大だったとは」
アドバンス級ギャラクシードレッドノート二番艦【レトリビューション】の艦橋でレイジは話し相手のリューズにそう言った。
「まぁ派手じゃないと困るような規模が集まってたが……最後のはやっぱりやりすぎだったんじゃないか?」
「良いじゃねぇか、俺たちだってあの防衛戦で活躍したんだ。多少目立ったってバチは当たらないだろ?」
リューズの苦言に悪びれずにそう答えるレイジの口元には笑みが浮かんでおり、心底楽しそうであった。
「それに、お前もノリノリだったじゃないか。 なぁ?」
「ハハハ……それを言われると弱いな。 仲間たちの良い訓練にはなったとは思うが、国民がパニックを起こすとは思わなかった………」
お察しの通り、この会話はパレード終盤の大気圏突入からの高速編隊飛行の時の話である。 陸戦隊は既に揚陸艦に乗り込み上空の艦隊に合流しており、地上には少ない警備兵とAI制御のガードボットしか残っていなかった。
帝国航宙軍の戦力は莫大だが、実は7割ほどがAI制御の無人艦である。 当然、内部に人員はおらず陸戦隊も基本はいない。 帝国地上軍には多数の人員はいるが、地上軍は基本的に移動をしない。
そのため、パレードにはもとからいた警備兵などを配備するしか無かったのだ。 完全に戦闘用な人型兵器であるティターンで制圧しようとすれば死者が出る。 アサルトアーマーを着こんだ重装歩兵でもほぼ同じ。 そんなタイミングの大パニックである。 当然押さえ込むのに苦労し、そこそこの人数の負傷者が国民にも警備隊にも出てしまったために、レイジ達は帝都の警備隊に恨まれてしまった。
「あー……まぁ、それはすまんとは思ってる。 いや、違うんだ。 アドバンス級が出てきたから行けると思ったんだよ………」
渋面を作りつつレイジはそう呟いた。 レイジも悪意を持って行った訳ではないため、この結果は苦々しく思っていた。
「ま、やっちまったもんはしゃーねぇ。 そんなこと忘れて格納庫行こうぜ!」
「……そうだな!」
そうして二人は、この広大な艦内を移動するための装置に向かって走り出した。
◇◇◇◇
さて、25000キロもあるこの軍艦をどうやって移動してるか、みんな気になってるだろ?
俺もデータで見た時はそう思ったんだ。 で、乗って真っ先に知ったんだよ。 ………思ってるよりもとんでもない方法だったんだよなぁ。
『向かう地点を通達してください』
「格納庫、エースエリアまで」
『了解、窓から体を乗り出さず、しばしお待ちください』
ゆっくり青く点滅してる、窓のある長方形の箱にリューズと一緒に乗り込んで中にあった椅子に座った後、聞こえてきた声にリューズがそう答えた。 すると、入ってきた入り口が下からせり上がってきた壁によって窓に変わった。箱が点滅するのを止めると、周りの景色がグッと歪み、少しの加速を体で感じた後、今度は前への慣性を少し感じた。 また声が聞こえて、
『到着しました。 出口を解放しますので、少しお待ちください』
「おう」
と言う会話の後に、また壁が下がって出口が出てきて、俺たちはそこから外に出た。
「いやー、やっぱすごいよなぁ、電磁加速で乗り物を飛ばそうと思う発想も、そのGをほぼすべて消せるこの乗り物も」
そう、これは電磁加速トラム……要するに昔あったというリニアモーターカーの超進化系だ。 通り道となる場所にシールドの通路を生成して、内部を減圧した後に電磁加速で一気に飛ばすという脳筋列車だ。無茶苦茶速いが、事故が起これば大惨事間違いなしで必要なエネルギーもヤバい。惑星上でもそこそこ過剰かもしれんな。
「なんかの手違いでシールドのトンネルが解けたらこの艦に乗ってる連中は全員御陀仏だろうな。 というかどうやってG消してるんだろうな?」
「それな。 オレらの機体にも積んでほしいぜ……」
電磁加速で飛ばしてるのに、俺達が本気でブーストした時よりもGが少ないってなかなかチートだと思うんだよ……。 これがあればもっと機動の幅が広がるのになぁ。
ちなみになんで二番艦に乗ってるのかと言うと、一番艦は皇帝陛下の御召艦だからだ。あれには基本的に近衛騎士とか近衛兵が乗るからなぁ……。 で、基本は安全圏で視察とかに使われる。 もちろん単艦じゃなくて多数の戦艦や巡洋艦、コルベット………駆逐艦とかフリゲート艦とかだな、それらと大艦隊を組んで移動してる。
だからあれを襲おうとするアホは基本出ないし、いても速攻で消し飛ばされるだけだな。 一度こいつの斉射を見たが、あれに加えて周りの艦の砲撃が来たら耐えられるものはほとんど無いだろうな。 対空砲まで使った斉射はもうハリネズミとしか言いようが無かったんでな、あれに突っ込むのは自殺行為だ。
帝国の内縁部にいる敵性艦隊は基本的に宙賊、スペースパイレーツって奴だ。 俺達のような正規軍がどれだけ討伐しても無限に湧いてくるはた迷惑な略奪者。 まぁ、大抵は民間船を襲って拿捕して、それを無理やり戦闘用に使ってるだけだから弱いんだがな。 シールドも砲も低出力で、装甲なんて無いに等しい。 大体は傭兵が飯の種にしてる連中だから、あんまり俺達が狩る訳にも行かないのが悩みどころだな。なんなら軍のアールディルテ単騎でも10隻までなら壊滅させられると思う。 それくらいの差があるんだ。
『総員戦闘配置! レーダーに多数の反応を確認! 通信を試みるも返答無し! おそらく宙賊……敵性艦隊として殲滅する!』
………なーんて思った瞬間にこれだよ。 おっかしいなぁ、あんな盛大に発表されたのに襲ってくるとか……。
「ある意味ナイスタイミングだな! ちょうど格納庫だぜ!」
「なんでお前はそんなワクワクしてんだ……?」
この超弩級戦艦から見て多数なんだぞ……どれだけいるのか想像したくねぇなぁ! 絶対雲霞の如くいるに決まってるんだ!
「まぁそりゃ確かにアホみたいにいるんだろうがな? オレらみたいなスペースファイターパイロットにとっては楽にシールドを抜ける美味しい相手だからな」
「それは宙賊限定だろ……?」
そりゃまぁ十中八九宙賊だろうがな。 精鋭のレーダー観測手がそう判断したんだから多分あってる。
『スペースファイター隊及びアールディルテ隊は出撃準備を整えて待機! 砲撃手は全員、敵を見つけ次第砲撃開始! 全兵装使用許可!!』
効力射はしないのか。まぁそこそこ接近してるみたいだし、主砲はさすがに使いにくいか。そんな悠長にデータリンクとかしてる間に発射不能な距離まで詰められるだろうしな。
『さーて、そんじゃあ汚い花火でも観賞しますかねっと』
「呑気だなお前……」
《宇宙海賊の武装ではたいした被害は出ませんし、仕方ないかと。ところで私の外部ユニットはまだでしょうか?》
初起動からだいぶ時間が経って、ずいぶんと人間味が出てきたな? 機体名と区別するための新しい名前でも付けるかなぁ……。
「まぁおっちゃんが気分転換で少しずつ作ってるって話だからな。 味覚センサーだのリアクターだのを積むらしいから時間はかかるさ。 この作戦が終わったら完成してるだろ」
《とても楽しみです》
さて、雑談してるうちにレーダー弾幕が当たり始めたな。 アドバンス級は砲のほとんどがDACレーザー……デュアル・アクセラレーション・チャージドレーザー、所謂重レーザー砲だからな。元民間船のオンボロじゃあ耐えられない。でも結構いるっぽいな。 これは抜けてくるか?
『砲撃はここまでだ。戦闘機隊、アールディルテ隊全機発艦! 楽な相手だぞ、肩慣らしついでにスコアを稼いでこい!』
『うっしゃー!』
「だからなんでそんな呑気なんだよお前は……」
あぁ、ちなみにリューズとしか話してないのはコンバットリンクって言う特別な回線で繋げてるからだな。コマンドリンクってのもあるが、そっちは全体との接続だからな。
さてよくわからない壁を越えた先の誰かに解説するのはこれくらいにして、出撃だな。 いやー、デカいカタパルトがあると一気に行けてストレスフリーだな!
ピ、ピ、ピ、ポーン! という音と共に、シートに押し付けられる感覚を覚えて宇宙に射出された。
《発艦完了、データ取得。 メインスクリーンに表示します》
レトリビューションの高性能レーダーで捉えたデータがスクリーンに表示される。 これは大漁だなぁ、100機くらい余裕でいそうだ。まぁ飛び立ったこっちの部隊数からすりゃおやつみたいなもんだろうがな。
『イクゾー!』
「あっ! 待てコラ、抜け駆けは許さねぇぞ!!」
《ブースター点火》
気のきくインサニティが勝手にブースターを点火してくれたので、このままリューズを追っかけるるかね!
『弾幕終わったぞ!距離を詰めろ!!』
『ヒャッハー! いつも仕事の邪魔をしやがる連中に一泡吹かせてやるぜぇぇぇ!!』
なんだあいつら、クスリでもキメてんのか? 何の援護も無しに突っ込んでくるとか、自殺行為だろ。まぁこのままじゃリューズに撃破スコア全部持ってかれそうだから、気にせずさっさと行くとしよう。
『先方は戦闘機とアールディルテが一機ずつだけだ! 囲んでたたk……』
最後まで言えずに一隻消し飛んだな。 そういやリューズの奴、イオンビームエミッターをレーザーシャードライフルに換装してみたとか言ってたな。 ブリッジに直撃でもしたかな?
『お、おい! いきなり指揮役が殺られたぞ!』
『なんだよあの戦闘機! たいした護衛もいないデケェ輸送艦を一隻落とすだけじゃ無かったのかよ!』
『とりあえず頭を押さえろ! 暴れさせるな!』
『バカ野郎! 頭なんて押さえたら穴だらけにされちまうだろうが!』
それはそうだろうな。 装甲が薄いのに至近距離でレーザーシャードライフルの射線に出ようもんなら一発で粉々だ。 でもな?
『アールディルテを突破しろ! レーザーシャードライフルよりはマシなはずだ!』
こっちに来るのは悪手だと思うんだよなぁ。 てなわけで。
「行くぞ!」
《フライトアシストカット、ジェネレーター出力、戦闘レベルへ移行》
『んなっ!? こいつ普通の機体じゃ……!』
正面から突っ込んできた元小型快速輸送機だったらしき宙賊艦三隻を真っ二つにしてやった。 相変わらず良い性能だ。
AIの方のインサニティも俺の動きに慣れてきたからか、モーションアシストも最適化されてきたしな。
『嘘だろ! あいつもバケモンかよぉ!』
『どうする!?』
『やるっきゃねぇだろ! 殺されるのも捕まってブタ箱にぶちこまれるのも御免だ!』
「悪いな、俺もリューズも捕縛するつもりはねぇんだわ。 移乗攻撃もするつもりは無い。 さっさと死んでくれ」
後続が来る前に食えるだけ食わせて貰おうか。
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