第十話 凱旋パレード
気が向いたので(あと案がどうしても書きたい物が出たので)更新……
『『『『「「「パレード?」」」』』』』
リールセン星系防衛艦隊旗艦、アジュギュレーション級重戦艦【アドミラル・ワシントン】の艦橋では、そんな困惑した声が、通信を含め多数響いた。
『まぁ、そういう反応になると思っていたよ。今回は実際かなり危なかった。それこそ航宙軍に二人しかいないエースパイロットの両方を投入するくらいにはな』
その困惑に答えたのは、困惑を引き起こした張本人にして帝国航宙軍総司令であるヴォルストだ。それに対しアドミラル・ワシントンの艦長にして艦隊指揮官は
「それはそうですね。我々だけでは突破されていた可能性はありました」
と苦々しげに答えた。
『つまり、帝国はさんざん勝てると言っている連邦相手に、切り札を両方出す羽目になったのだ。勝ったのだからまだ良いが……』
『多少は失墜した周辺国への帝国の威信を取り戻すために、凱旋パレードを開催する、と?』
たまたまうまく行ったとはいえ、圧倒的な軍事力を持つ帝国の艦隊を見せつけるのは確かに良い威圧になるだろう。航宙艦隊は帝国の花形であり、最強の力なのだ。
『その主役として、リールセン星系を守り抜いたお前達を使うわけだ。一言で言えばプロパガンダだ』
「なるほど」
『ま、お前達がなんと言おうとこれは決定した事だからさっさと来てもらうがな!』
「そうでしょうね………」
艦長は苦笑しつつそう言った。
『レイジ、リューズ両大佐は部隊を率いて艦隊の左右を飛んでもらう。武装もちゃんと積んでおけ、見栄えが良くないからな』
「「了解」」
『よし、ではアドミラル・ワシントンの者以外は解散!こちらへの帰投準備を開始せよ!』
『『『イエッサー!』』』
そして、次々とホログラムディスプレイに浮かんでいた窓が閉じ、ヴォルストが映っている窓だけになった。
その時、艦橋が暗くなった。
「なんだ!?」
「落ち着け、こっからは重要なブリーフィングって事だ」
突然の出来事に驚いて、ブレードの柄に手をかけたレイジを艦長が制止した。単分子ブレードを抜かれては堪らないためだ。さらに改造型のレーザーを纏えるレイジ専用のブレードは、艦橋の中をめちゃくちゃにするには十分すぎる。
『ははは……さて、ではここからは極秘案件だ。全員、この場で聞いたことは少なくともパレードが終わるまで誰にも話すな』
「「「イエッサー」」」
よく分からないがレイジとリューズは艦長にあわせて敬礼した。
そして、その話は始まった。
『パレードの主役はお前達にすると言ったが、実際は別の主役がいる』
ヴォルストの言葉と同時に、彼の窓が脇に寄り、ホログラムには巨大な軍艦が浮かんだ。とても大きな砲を積み、さらにハリネズミのような大量の砲で武装した、誰がどう見ても『戦艦』である。
「これは……?」
大艦巨砲主義の勢力の方が少し強い帝国に置いて、このような艦は珍しくない。しかし………
「尺がおかしくないか………??」
全長の部分を見ると、そこには25000kmと書いてある。
「これは何ですか、ヴォルスト総司令!?」
顔を青くした艦長は、ヴォルストにそう問いかけた。
『これが今回の主役、』
彼は少し溜めて、
『【EFS―AD アドバンス級ギャラクシードレッドノート】だ』
と答えた。
「EFS……最近話題になっている、【エンパイア・フリート・システムズ】社製ですか?」
今までは帝国が開発、製造していた軍用艦艇だが、最近ではその一部の生産を民間の軍需品会社に任せようという動きが出ているのだ。その先駆けとして、この企業が選ばれたのである。そしてアジュギュレーション級もEFS社製なのだ。
「こんな物を開発していたとは……」
「これ1隻で惑星を焼き尽くせそうだ……」
データを見ているレイジ達は、そんな感想を漏らした。
『そういう威圧のための面もある。だがちゃんと艦隊戦にも使える仕様だ』
「そりゃ艦隊戦は出来るでしょうね……」
その艦首に見える、単装だが超巨大な砲。その直径はなんと1km。
それもガンマ線ブラスターという、発射さえできれば大抵のものは破壊する事もできる恐ろしい兵器である。
「これはもはや動く国家ですね」
艦長はそう結論付けた。居住区まで備えた超巨大戦艦は、国と名乗るのに十分な武力と居住性を持っていた。
『そういうわけで、すでに4隻がロールアウトしている。そしてパレードでこれらを御披露目、というわけだ。パイロット二人には部隊を率いてそれの護衛をしてもらう』
「「イエッサー」」
『そして、アドミラル・ワシントンは防衛艦隊をアドバンス級達の周囲に展開、これも護衛をしてもらう。頼んだぞ』
「承知しました」
『うむ』
そしてヴォルストは満足そうに髭を撫で、パレードの計画を送付して通信を終えた。
◇◇◇◇
そしてパレード当日。都市惑星であるアルトーナ帝国帝都【アルトネス】上空にて、膨大な量の軍艦や戦闘機、そしてアールディルテが列をなして進んでいた。
さらに地上では通常歩兵に装甲歩兵、【ティターン】と呼ばれる地上兵器が行進している。楽隊がマーチを奏で、戦闘部隊は武器を携えている。
コルベット艦やフリゲート艦等の小型艦は、市民の集まる広場の真上まで降下したり、ビルの真横を通りすぎたりと、なかなか粋な演出もしている。
音楽が少し変わった。華やかながらも厳かな物から、重低音を交えた重々しい、力を誇示するようなマーチだ。
「どういうこと……?」
「一体何が始まるんだ………」
歓声を上げていた市民達は、不安を覚えてざわめき出す。しかし帝国軍は気にした様子もなく回収に来た揚陸艦に乗り込み、そのまま少し先で大艦隊となって待機しているパレードの部隊に合流した。
そして、ズドォン!と言う音と共に、漆黒の巨大な何かがかなり上空にワープアウトしてきた。間髪いれずに三回、同じ音が鳴り響き、合計4隻の超巨大な戦艦が帝都の上空を覆った。
「な、な、なんだ、あれは………!?」
「私たちは何かしたの!?」
恐ろしく高い位置にいると分かるのに、そして底部は基本的に武装が少ないはずなのに、大量に見える巨大な砲に市民達は怯えた声を上げ、パニックが起こりかけていた。しかし、楽隊は変わらずマーチを奏で続けている。
市民達は少し心を落ち着かせ、その巨大な艦を注視した。その砲は1つたりとも地上に向けられておらず、その巨躯は少しずつ前に進んでいる。そして、先ほどまでは気がつかなかったが、その船体にはアルトーナ帝国の紋章が大きく描かれている。
「あれは……帝国の、新たな兵器だと言うのか………!?」
「【首狩り公】に【血濡れの男爵】の両方が出ないとやべぇなんて話があったから不安だったが………」
「これなら、帝国は揺らがないわ!」
「帝国、万歳!」
その後、話題に出たばかりのエース2機が降下し、自分の部隊と共に編隊を組んで街中を高速で駆け抜けるパフォーマンスを行った影響でパニックが起こるが、帝国の威信を取り戻すという目標は達成されたようであった。
◇◇◇◇
──バーディア連邦某所、連邦軍総司令部──
「同士諸君、これは我々に対する挑発だ。だが意見は広く聞こう。どう考える?」
バーディア連邦『華』部の軍、その総司令部にて、華部の元首である『書記長』。そんな立場である男、【リュウ・タイラン】は、壇上に立つ彼の前に集まった華部の重鎮達にそう問いかけた。
バーディア連邦は『華』部と『露』部の2つに分かれている。ある意味、2つの国家が連合し大国となり、単独では絶対に勝てない超大国との戦争を行っているのだ。
そして、彼らの前には、帝国のパレードの様子が、そして超巨大な戦艦が空を行く様子がホログラムで映されていた。
「奴らはどうも、我々を破った事で調子に乗っているようですな」
「我々の本気が、あの程度の侵攻艦隊なはずが無いと言うのに」
「書記長! これは良い機会ですぞ! 今こそあの封建制という古くさい制度を使用している、野蛮な国に鉄槌を!!」
彼に否定的な意見を述べるものは存在しない。彼に従った方が、圧倒的に大きな利益を得られるからだ。いや、それにもし存在したとて……。
「ですが、書記長。今回の侵攻艦隊には、多数の重鎮の子弟が動向しておりました。彼らが全滅してしまった事で、非難が中央に……」
「ふむ……なるほど。一考しておこう」
怯えながらも発言した一人の男は、鷹揚に頷いた書記長にホッと息を吐く。しかし……
「ありがとうございま……」
「だが、同士よ。君には少し、カウンセリングが必要なようだな。あの艦隊には君の息子も乗っていたのだ、心の傷もあるだろう」
安心するには早かった。
「は………? い、いえ!私は大丈夫で………」
男は顔を青ざめさせて、必死に弁明する。しかし、その決定は変わらなかった。
「さあ、行ってきなさい。護衛官。エスコートを」
そして、男はアサルトアーマーを着こんだ屈強な護衛官2人によって、エスコートとは名ばかりで『連行』されて行く。
「待て! 待ってくれ! 止めろ! 止め……あの部屋は…あの部屋だけは嫌なんだ! 止めろ……止めてくれぇぇぇぇ!!」
男の必死の抵抗も虚しく、総司令部の扉は閉じられた。
「……さて、ではあの野蛮人どもの国への対策会議を再開しようじゃあないか」
書記長などの元首に少しでも反対した者は、容赦なくカウンセリング、もしくは談話される………それが、『帝国よりも帝国』と呼ばれるバーディア連邦、その実態であった。




