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追放令息と進む傭兵の道。  作者: 猫科類
国境の街
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国境の街②


出された朝食は焼いたパンと目玉焼き、野菜のスープ。

ちなみに、目玉焼きの目玉は緑色だし三つ子だ。


「…ありがとうございます…」

隣の音をなるべく遮断しつつ、椅子に座り直し、出された朝食に手を付ける。


ベントレー爺さんと伴侶のノーランの前には、「帰ってからにしてね」と、ミアのお小言付きでお茶の入ったカップが置かれた。


ちなみに…ノーランと話している時のベントレー爺さんは、ワシ、とか、~じゃ、とか言わないんだけど……それに、背筋もピンとさせて……ヨボヨボ感がゼロなんですケド……やっぱり擬態なの?お年寄り感は擬態だったの?




「昨日の夕方には、大体のメドは立ったんだぁ。」

ベントレー爺さんがお茶を啜りながら昨日からの経緯を話し始めた。

先程までの激アマデレデレだった雰囲気はどこにも無い。

そして、口調も戻った…


「死んだ(もん)の埋葬も終えて、簡単に祈りを捧げた。街には村の代表として村長の、ミアの旦那のダレンとノア、ワシも行くことになってなぁ。で、あんたらに報告を、ってなったんだがの~」

「ふふ…」

ベントレー爺さんがカップを置き、奥方も苦笑する。


「…スミマセン…」

おそらく、気を使ってくれたのだろう……

その頃には私は爆睡していたはずだ…

目玉焼きの目玉を皮が破れない程度に突きながら項垂(うなだ)れる。

目玉はかなりのトロトロ半熟具合……

卵の黄身…緑身?…が苦手な私にはトロトロはハードルが高い……それも3つもある……



「まぁ、良くあることだでなぁ!」

「ねぇ~。そんな事もあって声をかけるのをやめたのよ。」

ミアとベントレー爺さんがニコニコと笑う。

ノーランも苦笑している。



「…しかし…野盗を2人も監視するのは大変だったのでは…」

チラリと外を見る。

ノアや村の男に囲まれた野盗が二人。

あの二人を村に留めて置かなくてはならないのは気が気でなかったはずだ。


「若い(もん)が頑張ってくれたでぇ。盗賊の見張りは若い(もん)が交代でみとった。」

そう言ったベントレー爺さんの顔は少し誇らしげだ。


「それに、街まで半日位かかるし、夕方に出るのは、ちょっとね…」

ミアが顔をしかめた。


「…そうですか…」

どうやら大きな街まで半日かかるらしい。

夕方に出ていたなら、夜通しの移動。もしくは野宿。

夜間の移動には危険が付き物。

それよりは翌朝に出発した方が安全と判断したのだろう。

野盗二人の見張りは大変だろうが、比較的妥当な判断だと言えるではないだろうか。

と、一人納得していると、


「シェリス、さん、よね?」

「あ…は、はい…」

ミアに突然名前を呼ばれ、思わずポカンとしてしまう。

名前、教えた覚えがないのだが…


「夜に、カリアンさんが来てね。」

「え!?」

「その時に教えてもらったの。改めて、私はミアよ。そして、ベントレーさんと、その伴侶のノーランさんね。」

ミアに名前を呼ばれた2人が改めて軽く会釈をしてくる。


「いつまでもお客さんって呼ぶわけにもいかないでしょ?お湯なんかを用意するついでに、今後について少し話をさせてもらったの。」

「…そうですか…」

どうやら、私が爆睡している間にカリアンが色々と話をつけていたようだ……


「日が落ちたうえに、場当たり的な準備で慌てて街に向かうより、しっかり整えてから向った方が安全だって。それに、私達も疲れてるだろっ、て。」

「野盗の縄や見張りの交代の調整とかもしてくれたんだ。お陰で見張り役の奴らは落ち着いて夜の見張りをこなせた。本当に、なにからなにまで…、感謝してる。」

ミアとノーランが微笑む。


「そんな…」

爆睡していて申し訳ない気持ちもあるが、この2人の微笑みからカリアンへの信頼や感謝を感じて、思わず口角上がってしまう。


「お礼はカリアンに…」

「騒がしくした詫びに、街までの護衛料はタダだそうじゃぞい。」

「え!?」

騒がしくした!?

タダ!?!

護衛料!?


「ヤダ~!」

「フォフォフォ~!」

「…コラッ…」

照れ笑うミア、笑うベントレー爺さん。

そして、苦笑しつつベントレー爺さん嗜めるノーラン。


「気にしないで~。ほら、ちょっと壁が薄いのよ~」

ミアがウフフと笑う。


「そ、そんなに…?」

騒がしくした!?

イビキ?歯ぎしり?両方?

…寝言、とか…?

寝相で壁蹴ったり?

前世の職場の先輩が寝返りで壁に腕をぶち当てて骨折してたな………

ソレくらいの激しい寝相ならドタバタ煩かったかもしれない……


ありえるかもしれない……

縁切り家出、国境越え、追手に野盗騒ぎで酷使し、疲れた心身は、睡眠中に十分すぎるほどストレスを発散させたのだろう……


なぜなら、起きるまでに一度も目が覚めなかった。

カリアンが起きたのにも気づかなかった。


それに……なんだか喉が引きつるような違和感があるような気がしてきた……顎も重たい様な気がしなくもない…

きっと、イビキや歯ぎしりのせいだ……

寝返りもそんなにしなかったのか、腰も重たい気がする……


なんてこった……


朝は寝坊をして、深夜はイビキと寝相と寝言のフルコンボ……

そりゃ、カリアンも夜中にお湯を貰いに行くわ……

カリアン……先に起きたんじゃなくて、寝れなかったのかも……

ヤダ…泣きそう…


「…本当に、すみません…」

「もう!気にしないで良いって言ってるのに~。」

項垂れる私に優しく声をかけてくれるミア。

なんて優


「だって、私達も騒がしく…ヤダっ!もうっ!」

「…ぇ…」

顔を手で覆い、何を思い出したのか真っ赤になるミア。


「あ!でも、少しだけよ!ちょっと大きかったくらいだから!」

「………」

……どうやら、睡眠中に発散された私のストレスの大きさを隠れ蓑に愛を確認し合った様だ……


「なんじゃい?何を思い出したんかのぉ~」

「ちょっと、べーさん!」

ミアをからかうベントレー爺さん。そして、それを嗜めるノーラン。

しかし、ベントレー爺さんがノーランの顎をクイッとし、


「なんだ、ノーラ。お前も顔が赤い。思い出したのか…?」

「なっ!?…、…、何、いってんだっ…!」

真っ赤になり視線を逸らすノーラン。


「………」

そういや、コイツラもコイツラで張り切ったんだっけ?!

宿屋ご夫婦への申し訳無さは軽減したな…いや…無くなった!!うん!!無し!!


手にしていたフォークはいつの間にか目玉焼きの目玉に突き刺さり、緑の黄身がドロリと流れ出ていた。



まだ出発しません……

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