国境の街①
お久しぶりでございます
ぼちぼち書き溜めてきたの出していこうと思います
よろしくお願いします
朝日が眩しい……
ベットの上で身を起こす。
ちょっと仮眠、のつもりが……
ガッツリ、しっかり寝た…
そして…おそらく…絶対…寝坊……
なぜなら、明るい。
普通に明るい…すっごい明るい……
そして…カリアンがいない……
ボンヤリ窓を見つめ、枕に突っ伏す。
「あ゛~……」
やっちまったなぁ…!!
枕に顔を埋めたまま呻く。
どれだけ呻こうが時が戻るわけではない。
意を決して起き上が……
「……?」
こんなにラクな格好で寝たっけ……?
身につけているのは、寝相で皺の寄ったシャツと下着だけ。
視線を彷徨わせると、室内の椅子の背にズボンが掛かっていた。
ズボンを手に取り寝る前を思い出す。
「…、脱いだっけ…?」
ウエスト部分をくつろげる為に、ボタンは外した記憶は………ある……よぅな……
「…、脱いだ、のか……」
脱いだから、脱いであるのであろう……?
眠くて記憶が曖昧…
深く考えるのをやめ、とにかく急いでズボンを履く。
「靴下…、……」
荷物がすでにない……
いや、あるのだ。
着替え等が入ったザックや私の装備はある。が、その他の荷物は無い。
カリアンの荷物は一つもない。
カリアンがいる中で、荷物を盗まれるという事はないだろう。
そんな盗人がいればきっと私も起きた。
……起きれたはず……
何より窓の外から聞こえる物音。
総合的に考えてーー
カリアンが、すでに色々動いている、ということだ!
「…やっちまってるなぁ…!」
靴下片手に頭を抱えた……
宿の外では、やはりカリアンがすでに準備を整え、宿の店主である村長と共に村人達に指示を出していた。
野盗の首が入った樽やら桶やらは荷馬車に積まれ、捕らえた野盗2人も荷馬車の枠に繋がれている。
ありがたい事に、私達の荷物も荷馬車の荷台に置かれていた。
少ない荷物とはいえ、荷物を括り付けているのといないのとでは、馬への負担はかなり違う。
「あら、起きられましたか。」
慌ただしく動き回るカリアン達をぼんやり見つめていると、宿屋の店主の奥方が声を掛けてきた。
昨日の疲れたような表情はなく、どことなく明るい雰囲気だ。
「あ…、お、おはようございます…。その、寝すぎた様で……」
寝すぎたどころではない……
昨日、昼過ぎ頃に野盗退治の事後処理を終え、仮眠のつもりが………翌日の朝……。
深夜でも、早朝でもなく、ちゃんと朝。
午前で日中で、太陽がサンサンと輝いている……
「構いませんよ。私も、ちょっと前に起きてきたので。」
「そうなんですか…」
「えぇ…。昨晩は、その……ウフ。」
奥方が頬を赤く染める。
え?何…?何で照れてんの?
「主人が、張り切り過ぎちゃって…ヤダ…!」
「え!?…ぁ!…そ…!…そう、なんですか〜…?へー……」
張り切るって、この感じ…、つまり、夜の方ってことだよね…
奥様!?急に何を言い出すの!?
なんとなく気まずい。
奥方は一般的なワンピースにエプロンと特に露出がある訳ではないのに、なんだか見てはいけない気がする…。
「そうなのよ〜!やっぱり、ねぇ~!」
なぜか同意を求められる。
「…そ、う、なんですか、ねぇ……?」
求められても…
ハハ…、と苦笑するも、奥方は止まらない。
「主人も私も、もう若くないのに…」
「え゛!?あ…、その…そうなんですか…はは…は…歳は関係ないですよ〜…」
あらヤダはしたない、そうかしら〜等とモジモジする奥方。
おそらく、店主と奥方は命の危機を乗り越え、久しぶりに愛を確かめ合ったのだろう。
それは別にいい。
勝手にやってくれ…
聞かされる方はたまったもんじゃないが……
そうなんですか〜、なんて当たり障りのない返事をしていると、
「命のやり取りの後は滾るもんだでぇ。」
ご老人がニコニコとやって来た。
ホエホエと朗らかに笑う元村長のお爺さん……
え〜…こちらも何やら見るからに艷やかなのは……まさか……
「ワシも若い頃を思い出してしもぉたわ〜!」
「ヤっダ!ベントレーさんったら!」
「!?そうなん!?…ですか…えー…」
マジで!?したの!?したってこと!?どこまで!?ナニをどこまでどうしたの!?
その歳で!?歳は関係ないか!!いや!!実は若いのか!?ご高齢ではないのか!?見せかけなのか!?擬態か?!
いや…、ご年齢での差別、決めつけはいかん…
あの長柄鎌の扱い方や戸惑いのなさは見事だったし、欲というのは死ぬまでと聞く…………
お相手は!?奥様なのか!?奥様なの!?奥様だよね?!
奥様のご年齢は!?!
いや…慌ててはいけない!!
店主の奥方との話の流れで、そう思ったが、長柄鎌の爺さん改め、ベントレー爺さんは思い出したと言った。
思い出した、だけ、ということもある…
ご年齢的に…機能しない場合も……
それに、相手が居るとは限らない……その…ご自身でご自身を、ということも……
唸る私に目もくれず、奥方とベントレー爺さんの愛を確かめ合った件についての報告会が続いて行く。
「その様子だと、タイラとミアは、かなり頑張ったようだの〜。ノアに歳の離れた弟妹ができそうだわぃ〜!」
「もう!やめてくださいよ〜!…今度は女の子が欲しいなー、なんて、あの人が言ってて…」
「そりゃタイラもだいぶん乗り気じゃったんじゃな〜!前は、もう歳だから、なんて言っとったのに!」
「ベントレーさんに、触発されたのもあるんですよ〜!」
「ワシかぁ〜?」
「だってベントレーさん、頑張ったって言ってたじゃない!」
「まぁ、なぁ!!」
「ほら〜!」
紅く染まる頬を両手で覆い、恥ずかしがる宿屋の店主兼村長の奥方こと、ミア。
鼻息荒くツヤツヤニヨニヨのベントレー爺さん。
ナニを頑張ったんだナニを…
私は引き続き、愛想笑いを貼り付けながらソコニイル……
この場を離れるタイミングを見いだせない……
こんな会話で村長達の名前を知るとは思わなかった……
キャッキャウフフヤダもー
と頬を染めつつ、ツヤツヤテリテリで盛り上がる2人。
いつまでこの話題が続くのだろう…と、愛想笑いと相槌に疲れた頃、
「いつまでそんな話しをてるんだ…、迷惑だろ…!」
そこに割って入ったツワモノが!!
救世主!!ーーー……、って、誰?
振り返り見た救世主は、カリアンでもノアでもなかった。
男性が1人。
金の髪にブルー瞳。
金髪碧眼の色黒美青年だ。
「あら、ノーランさん。」
ミアが声を上げる。
ノーランと呼ばれた青年は、ニコリと私に笑顔を向け、
「村を護っていただいてありがとうございます。」
と頭を下げてきた。
「いえ、そんな、たまたまで…」
慌てて手を振れば、
「これで安心して、この子を産めます。」
ノーランの視線が下がり、自身の下腹部を撫でる。
「……ん?」
つられて私も視線を向ける。
視線の先では、下腹部辺りが丈の長いシャツを押し上げていた。
膨らんだ下腹部をノーランの大きな手が優しく撫でる。
「え!?あ…!」
これは…つまり…
妊娠、している…?!!?
こちらの世界での出産は女性だけの特権ではない。
男性も出産できる。
男性妊娠の方法は、ビーエルのアレやソレやを想像していただければ良い。ソレだ。
そして、今世と前世での出産の大きな違いは、卵で産まれる、ということ。
薄く柔らかい卵殻で覆われた状態で産卵し、産卵直後から徐々に卵殻が乾いて収縮、破れやすくなるのと同時に卵の中の赤ちゃんが手足や身体をを動かす事で卵殻を割り破り出てくることで出産となる。
前世では出産の記念として、へその緒を取っておく習慣?もあったが、こちらでは、卵殻の一部を取っておく事があるそうだ。
男性の出産が可能なので、男性同士での婚姻も可能で一般的。
むしろ推奨する国もある。
もちろん、否定的な国もある。
男性妊娠を初めて見た私は、失礼だと頭でわかっていても、チラチラとノーランの顔と膨らんだお腹を見てしまう。
「そんなに驚かなくてもいいと思うけど…」
ノーランが不満そうに言うが、これは仕方のないことだと言い訳をしたい。
前世では男性妊娠は現実的に見たことない。
今世では、男性婚が一般的ではあるものの、ストルエーセン王国の格式高い貴族達の正妻は女性のみ。とは決まってはいないが…暗黙のルールとなっている。
側室、妾としての男性婚はある。
過去に正妻が男であった例が無い訳ではないが、それは、男性の両方に圧力を跳ね除けるだけの国家的思惑、実績、後ろ盾、家柄等諸々があったからで、極々少数。極めて稀な事例。
貴族がその様な考えなこともあり、一般民も男性婚はかなり少い。
場合によっては女性に恵まれなかった者同士の傷の舐め合い、家督の為の苦肉と言われ、後ろ指を指される事もある。
なので、必然的に妊夫を見かけることがないのだ。
「すみません…。ストルエーセンでは、男性の妊娠はかなり稀で……。個人的には初めて見て…」
「初めてって……」
ノーランが訝しむ。
「閉鎖的な田舎に行くほど、同性婚や男性の妊娠は嫌われます。その…伝統に良くないとか…、女性への配慮がない、とか……、だから、その…、ほぼ、無くて…、その、すみません……」
事実だ。閉鎖的な村や町などは男女一対で結ばれてこそ幸せであると考える年配の方やその影響下の者たちが多い。
「古い考えだな…」
ノーランが吐き捨てる様に言った。
「昔から、ストルエーセン王国は何かと堅苦しかったからのぉ〜」
ベントレー爺さんが唸る。
「これじゃ、女性同士の結婚なんて、」
「!!ころされます!!」
ノーランの言を最後まで言わさず、私は慄き叫ぶ。
「……ストルエーセンでは、女性婚は危険なようだな…」
私の叫びに驚いたノーランは、お腹を庇うように身体を少し背ける。
その行動に、冷静さを取り戻す。
「あ…、す、すみません…その…ストルエーセン、…の田舎の方では特になんですが…、女性同士の婚姻は本当に危険なんです…。だから…その……」
この世界には男性同士の同性婚があれば、やはり、女性同士もある。
ある………、か………、なかなかにハードルが高い……
他国は一旦置いておいて、我が祖国ストルエーセン王国では暗黙で御法度……無理矢理引き離される。
過激な家族だと本気で殺られる……
同性婚に理解が少ないのもあるが、男性同士よりも、とても、かなり、凄く、反発が大きく過激になる。
なぜなら男性同士とは違い、女性同士では子が授からないからだ。
男性間で子が授かるこの世界であっても、女性間では子が授からない。
子が授かる男性婚は許せても、授かれない女性婚では、婚姻の意味がない、生産性がない等と吊し上げられ、家族や有力者から誘拐婚や強姦に近い妊娠婚をさせられ、監禁状態にされることもある。
最悪、家の恥として殺されることも……
個人的には、好き同士なら別にいいのでは…?と思うが、ストルエーセン王国は女性婚には暗黙で反対のお国柄であった。
気まずい空気が漂うなか、
「はい!この話はおわり!!」
パチンと叩かれた手の音と、ミアの大きく明るい声。
「ほらほら!皆座りましょ!!ノーランさん!座って!卵に何かあったらどうするの!!さ!ベントレーさんの隣に!」
さぁさぁ、と私たちをカウンターの席に誘導するミア。
確かに妊夫を立ちっぱなしにさせるわけにはいかない。
ミアに促されるままカウンターの席、私は端の椅子に腰掛けた。
私の隣にベントレー爺さんがよいしょと腰掛け、ミアがノーランにベントレー爺さんの隣の席を進める。
「ありがとうございます。」
ノーランはミアに礼を言ってベントレー爺さんの隣に座る。
どうやらノーランは、ベントレー爺さんとかなり近い関係にあるようだ。
祖父と孫、とかであろうか…似てないが…
ベントレー爺さんとノーランが血縁者だとしたら多くが似てないな…
肌色はもちろん、瞳の色や髪色……
いや、ベントレー爺さんの頭髪はすでに色も量も薄くなってしまっている…もしかしたら金髪なのかもしれない。
ノーランは母親、もしくはお子さん、お子さんの配偶者似だろうか……
なんであれ、もし、血縁関係があるなら、ノーランはベントレー爺さんには似なかったとーー
「ノーラ…」
「ん…」
チュッ、と音を立ててベントレー爺さんとノーランがキスをした。
キスをした……
キっス!?!!!?!
「え!!?は!?!」
思いもしない状況に、座るどころではなくなった。
立ち上がり、飛び退き、二人の顔を交互に見る。
まさか…まさかなのか!?
「ノーランさんは、ベントレーさんの伴侶さんなのよ〜」
「そ!!?!?な…!!?」
動揺する私に、ミアがニコニコと教えてくれる。
見た目、爺ちゃんと孫なのに!?
家族かな〜とは思ったけど!
その繋がりとは思わなかったっ!!!
待て!!
この二人が伴侶、夫夫、と、いうことは……お腹の子は………
「うふふ〜、卵を授かった時のベントレーさんの喜びようったらっ!でも…野盗騒ぎの時は気が気じゃなかったわ〜」
「あの時は、ありがとうございました。本当なら、俺も村の護りにでなきゃいけないのに…」
ノーランが項垂れる。
しかし、ミアが眉を吊り上げた。
「何言ってんの!!お腹の子を護らなきゃならないのに、闘いに出てどうすんの!?貴方に何かあったら…!卵はどうなるの!!」
「ミアさん…」
瞳を潤ませるノーラン。
そして、
「ミアの言う通りだ…。お前が俺達の子を護ってくれていたから…俺は昔を思い出し、力を振るえた…。お前がいてくれたおかげだ…」
「っ!…ベーさん…!」
「ノーラ…」
相性で呼び合い、頬を染め、トロリとした表情で見つめ合うベントレー爺さんとノーラン。
2人の顔が近づきはじめーー
「はい、朝食ね。」
ベントレー爺さんとノーランとの関係を処理しきれず立ち尽くす私の前に、いつの間に作ったのかミアお手製朝食が置かれた。
私は椅子に座り直し、ベーさんとノーラが隣でイチャイチャしているのを無視して朝食をいただくことにした。




