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追放令息と進む傭兵の道。  作者: 猫科類
新たな地へ
22/30

新たな地へ㉑


野盗のボスを倒し、魔術師風の野盗を魔法で眠らせる事でこちら側の襲撃は終わった。

念の為にとレーダーサーチを発動させる。


「っ!?」

私とノアの周辺には赤丸は1つだけ。

コレは魔術師風の野盗だ。

ちなみに、ボスの印は無くなっている。

死体になると印は消えるのだ。

生命反応が無くなった、ということで消えるのだと思う……

それは、敵味方、家畜、魔獣、関係ない。全てに当てはまること。


驚いたのはそこではなく、距離的に村の中、宿屋の近くにピンク丸が1つ現れていたから。

そして青丸に囲まれている。

慌ててオートマップも同時発動させると、宿屋の辺りでピンク丸に青丸が近づいたり離れたりを繰り返している。

野盗が1人村内に侵入したかもしれない、ということだ。


「ノア!見張ってて下さい!!」

「え!?!」

私はノアにその場を任せ、走る。


最短で村に侵入するため、私の背丈ほどある村を囲む木の板の柵に飛びつく。

ジャンプした先の柵板面を足場に更に上に飛び、柵板の上に足をかけ、そのまま村の中に飛び降りる。


駆けて広場に出る。

その先、宿屋の前の道で争う人達が見える。


剣を一振りしては下がりを繰り返す村人達と、二本の剣を振り回す背の高い野盗らしき男。


加勢するべく駆け寄ろうとした時ーーー


野盗らしき背の高い男が、ビクリと体を震わせた。

見れば、背の高い野盗の背後には宿屋の階段に座っていた長柄鎌を持った老齢の男性が立っていた。

手に持つ長柄鎌の先は、背の高い野盗の脇腹に深々と突き刺さっている。

ブルブルと震えながら野盗の顔がご老人に向く。

と、背の高い野盗の体が再度ビクリと揺れた。

別のご老人の簡易槍が顔を向けた反対側から突き出され、横首に突き刺さる。

そして、更に宿屋の扉前に座るご老人から放たれた1本の矢が首を貫いていった。




ご老人達の予想以上の手慣れぶりに思わず目を見張る。

改めてレーダーサーチを確認すると、赤印は2つ。

ノアの監視下にある魔術師風の野盗と、宿屋の2階で見張られている野盗の2つ。


私はとりあえず宿屋の前で地面に伏す野盗を取り囲む輪に足を進める。

輪の中心では、血溜まりの中ピクピクと痙攣を繰り返す野盗。


「皆さん、大丈夫ですか?」

村人達に声をかける。

村の男達は大丈夫だ、と答えた。

数人怪我をしているようだが、野盗の剣には毒が塗ってある気配は無い。

傷も深くはなさそうだ。


「怪我をしている方は、宿屋の中で神官様から手当を受けて下さい。後、二人程、村の裏に行ってもらえませんか?ノアが野盗を1人で見張ってて心配なんです。」

と、伝えると、怪我をした者は宿屋の中へ。

二人の男が村の裏に向かうため走っていった。

走る村人を見送り、まるで所定の位置ですと言わんばかりに宿屋の階段に腰掛けるご老人達に近づく。


「皆様もお見事でした。」

ご老人達にも声をかける。


「ハッハッハ。いやいや、若いもんが動いてくれたおかげだわぃ!」

と、長柄鎌を持つご老人が笑う。


「若いもん達にばかり気を取られたのが運のつきよな~」

「年寄りなんぞ、視界に入っておらなんだでな。」

「ワシなんぞ、座って矢を1本射っただけじゃい。なかなか立てんでよ…。いや、まいったまいった…。」

と、他のご老人達も口々に話すが、皆、ついさっき野盗を仕留めたとは思えない程の和やかだ。


「昔は、騎士ギルドの定期討伐なんぞ無かったからな…」

「ギルド自体無かったしな。できたら便利だったな!稼ぎも良いときた!」

「まあ、ワシらん時は、何でも自分らでなんとかせにゃならんだで、野盗の1人や2人に尻込みしとる暇なんぞ無かったわいなぁ…」

「野盗よりも、作物が実らん方がシンドかったからな……」

「あん頃は、野盗共を狩ったほうが金になっとったなあ…」

「今もじゃないか?!」

「かもしれんなあ!!」

ふぁふぁふぁ!!

と、ご老人達から和やかな笑いが上がる。

内容が内容だけに違和感が凄い。


「あんた、若いのに場馴れしとるんやなぁ?」

突然話をふられ、苦笑する。


「…、まぁ、その、一応、戦場経験者ですので…」

と、モゴモゴと言えば、


「お~、そりゃそりゃ、若いのに苦労したもんだ…」

「戦場帰りなら、何処ででも生きていけるわ!」

「そだな!」

「そだそだ!!怖いもんなしだ!!」

ふぁーふぁふぁ!!


またも和やかに談笑するご老人達。


国境の警備に内乱と、私もそれなりに経験したと思う。

たがそれは、武器を手にする職業と立場を選んだが故と覚悟していたこと。

このご老人達は、武器の持ち方も知らず、訓練や経験もない中で己の命と腕、そして度胸だけで生き残ってきた。

尊敬すら感じる。

その上、この落ち着き様……。

こんな風に年老いたい、とさえ思う。


「この野盗達のボスは死んだので、しばらくは安心でしょう。ですが、まだ油断はできません。もうしばらくお手伝い下さい。」

と、ご老人達につたえると、


「わかったわかった。行って来い。ワシらが見とるで~」

と、あまりにも快い承諾が返ってきた。

まるで留守番でも頼んだかの様な軽い返事に、やっぱり昔は今よりももっと過酷だったのかも…と、思いを馳せてしまった。




村の入口側はカリアンが居るので心配はしていない。

私は、村の裏側に大急ぎで戻る。


喉が潰れている魔術師とはいえ野盗は野盗、と心配していたが、ノア達の元に戻ってみれば、魔術師風の野盗は縄でぐるぐる巻きにされていた。

抵抗したのだろう。

魔術師風の野盗には新たな傷が幾つもできていた。

その周りを取り囲む様に、ノアと二人の男が立っている。


「お疲れ様です!」

声をかければ、ノアが安堵した表情で駆けてくる。


あら、やだ、歳上なのに幼カワユク見えるのはナゼなのだ?


「待っていました!逃げたら嫌なので縄で縛ったんです!暴れましたが、皆で何とかなりました!」

興奮気味にノアが報告をする。


「皆さん、上出来です。」

ノアも村の男達も怪我はしてさそうだ。

安堵と共に褒めると、ノア達は照れたように頬をかいたりしている。


ホンワリしているが、まだ気を緩めてはいけない。


「では、ソイツを移動させましょう。」

「はい!」

村の男が縄で拘束された魔術師風を立たせる。

魔術師風の野盗は身をよじって抵抗したが、男二人に両脇を固められ観念したのか、大人しくなった。


「彼も前に捉えた野盗と同じ部屋へ入れてください。野盗2人はなるべく距離を離して下さいね。部屋に着いたら両足、膝も縄で縛って、できるなら重たい何かに括り付けて下さい。机、棚、何でも良いです。そして、そのまま見張りをお願いします。しっかり拘束し、決して1対1や野盗よりも見張りの数が少なくならないように気をつけ下さい。部屋が狭くて野盗との距離が近いようでしたら、室内は野盗だけにしても構いません。その時は扉は開けたままで扉の前で3人、階段前で2人の二段構えで見張って下さい。」

念入りに注意をし、魔術師風の野盗を任せた。



歩いていく3人の背を見つめつつ、私はボスの首に近づく。

歪んだ表情、ゴワゴワとした髭、脂ぎった髪に覆われた頭。

THE盗賊といった面持ちの首だ。

素手では持ちたくないが、今手持ちの手袋はない。


私は武器を握る際に手袋の類をしない質なのだ。

こう…、手の甲がムズムズするし、手袋の中が蒸れるのが嫌なのだ……。

もちろん、装備として必着の場合は着用する。


悩みつつ、覚悟を決めて野盗のボスの脂ぎった髪、適当に纏められた後髪を掴み持ち上げる。

ブチブチと何本か毛の抜ける感触に、慌てて髪の束を持ち直す。

人間の頭というものはなかなかに重たいのだ。


私は片手にハルバート、片手に頭部を持ちながら、村の入口へと戻った。





村の入口では、カリアンと宿屋の店主を中心として村の男達が動いていた。

すれ違った村人が、私の手に持つモノ(・・)に、顔を引き攣らせる。


「ボスとやらはそっちに行ったか…。」

村の入口でカリアンが、私の手にぶら下がる首を見て言った。


ボスの首は、宿屋までは持って行かず、村の入口の端っこに隠すように置く事にした。

生首を見て子供や女性が怯えると困るからだ。


「こちらは、1人多かったみたいですね。」

首を置いて、並ぶ死体を数える。


4つの死体。


私のレーダーサーチ範囲外にもう一人居たということになる。

……村への侵入者と合わせれば、2人…なのだが……



「弓3、槍1だ。」

「それは…、大丈夫でしたか?」

弓矢は遠距離からの攻撃が厄介だ。

自身の使用武器の攻撃範囲に入る前に攻撃される。

先に攻撃されれば、次の攻撃を警戒し、なかなか敵との距離を詰められない。


カリアンの武器は斧。

長柄の戦斧ではなく、両刃の片手戦斧。

それなりに間合いを詰めなければ攻撃できない。


「矢は弾いた。問題はない。」

「流石です。」

「はっ、お前もできるだろう。」

不服そうに返され、私は苦笑する。


遠距離攻撃は確かに厄介だ。

だが、射手の場所がわかっているならば、比較的対処は可能。

射る角度や射手の腕にもよるが、基本、矢はまっすぐ飛ぶ。

蛇行したり、瞬間移動したりしない。

私はハルバートの穂先や斧刃で薙ぎ払ったりするが、落ちている矢を見るに、カリアンの場合は斧刃を盾にして矢を防いだのだろう。

そうして距離を詰めーーー


視線の先。

地面に転がる槍は、柄が真っ二つに断ち折れている。

槍を扱う盗賊は、槍の柄を断たれれば武器は槍から棒切に変わる。



「あまり、腕の立つ連中ではありませんでしたね。こちらとしては、ありがたいですが。」

戦闘の跡を辿り、本音がポロリ。

もしも、盗賊団と言えるだけの人数や規模だったら……少数精鋭の腕の立つ兵士や騎士崩れの野盗だったら……こうはいかなかっただろう。


「だが、戦闘に不慣れな村の者には脅威だ。」

カリアンが村を振り返る。


野盗の脅威は去った。

が、村に喜びは無い。


村を破壊され、蹂躙されることはなかった。

しかし、死人と怪我人は出た。

怯えた女子供が居り、村内外には破損箇所もあるだろう。

憎き野盗の骸もあるし捕虜もいる。


つまり、事後処理もなかなかに大変、ということだ……。



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