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追放令息と進む傭兵の道。  作者: 猫科類
新たな地へ
20/30

新たな地へ⑲

だいぶ書き溜めれたので出していきます。


カリアンと部屋に戻り、扉の鍵をかける。


カリアンは、私が部屋の鍵をかけると同時に脇腹と袖口が血に染まったシャツを脱いだ。


テーブルの上には身体を拭くために用意していたハーブ入のお湯の桶がそのまま残っている。

お湯はすでに冷たくはなっているが、今は気に留めていられない。


「冷たいと思いますが、我慢して下さい。」

桶の中の手拭いを手に取り、カリアンに手渡す。

カリアンのものではない血が脇腹から腰にかけて付いているのが目に入る。

ついでに新しい傷ができていないか、ざっと確認する。


うん…ムキムキだ…


安心した。

なので、私も着替えることにする。


カリアンを背にし、私も血染みの付いているシャツのボタンを外していく。

私のシャツも袖口は血で染まっているし、胸元にも血が点々と飛んでいる。

シャツを脱ぎ床に落とす。

シャツの下の肌着は血の影響を受けていなかった。

ズボンも大丈夫そうだ。


残っていた手拭いを濡らし、肌に付いた血を拭き取る。

いまだほのかに香るハーブの香りに癒やされつつ、


「クーリーン」

不本意ではあるが、浄化魔法(クリン・マジック)を自身にかける。

これで汗の不快感は無くなった。


新しいシャツは、かぶりのシャツで胸元から首元にボタンが付いている。

首周りのボタンは止めず開けたままにし、椅子の背に引っ掛けたままにしていたコルセットを着ける。

コルセットの紐を締めながら、カリアンの血みどろの上下と私のシャツはサヨナラしなければならず、大きな街に着いたらカリアンの新しい衣類を一式、自分用にシャツを一着買わなければならないと考え、同時に手元の残金を数えた。



カチャカチャとベルトの音がするため、すでに下は履いているだろうとカリアンの方を向く。

案の定、ズボンを履きベルトを締め終わったところだった。


私は身支度を整えながら、カリアンに問う。


「どうしますか?」

「……、一人逃しちまってる…」

苦々しげに伝えられた一言。

つまりはーー


「最後まで、ということですか?」

「……、ここまできたらな…」

「……、わかりました。」

私は、髪を高い位置でしっかりと括る。

戦闘時は前髪も上げてしっかりと纏めると決めている。

前髪が邪魔で敵が見えませんでした、なんて事がないように。

纏めきれなかった短かめの前髪が一筋垂れるが、視界の邪魔にはならないので良しとする。


カリアンも胸部を覆うプレートアーマーを付け、篭手とガントレットを装着し、準備は整った。




身なりを整え1階に戻ると、集まった村人の視線が一気に集中する。

怯えやら、期待やら、不安やら、不信感やら、色んなものが混ざりあった様々な視線だ。



不安気に店主と奥方がこちらに近づいてくる。


「お客さん……。まずは、その…マシューと、私達を助けてくれて、感謝している。」

宿の店主であり、村長である店主が頭を下げた。

奥方も続く。

周囲の村人達は数人店主に続いて頭を下げたが、多くの村人はまた状況を理解しきれていないのか、戸惑っている様子が伺える。


「それで、その……」

店主は頭を上げ、不安気にカリアンと私を交互に見る。


「…、奴らは…また来ると思うかい?」

店主の言葉に村人がざわつく。

小さな悲鳴や動揺の声。

私とカリアンの共通予測では、奴らは来る。

それも、今度は本気でくるだろう。

そして、時間はあまりない……

私はカリアンを見上げる。

眉間に皺を寄せ、店主を見下ろすカリアン。


「確実に。」

「…やっぱりか…」

カリアンがハッキリと答え、店主は流れる汗を袖で拭う。

おそらくは店主も予測していた答えだったのだろう。

それでも聞いたのは、


「無茶な頼みなのは、わかっているんだが…、その…、この村を、助けてはくれないか?」

この提案の為だ。


「タダとは言わない!宿代はいらないし!出せる範囲にはなるが…、報酬も出す!…だから…!」

早口で、今にも土下座でもしそうな勢いだ。


「お、俺達も…!い、一緒に戦うんで!…足でまといかもしれないけど……」

ノアが勢い良く声を上げるが、カリアンに見つめられ、声が段々と小さくなっていく。


店主の背後、入口に集まる村人の中には状況の深刻さに耐えられなく者達が啜り泣きはじめた。


深い溜め息をつくカリアン。

店主夫婦とノアがビクリと肩を揺らす。

カリアンに代わり、私が口を開く。


「店主、落ち着いて下さい。奴らを迎え撃つにせよ、打って出るにせよ、時間があまりありません。」

「え…」

店主が、真っ青なのに汗だくの顔を上げた。


「武器が扱える者は?」

カリアンが問うと、


「ゆ、弓なら!…狩りで…」

ノアが声を上げたが、人間相手ではない事に声が小さくなっていく。


「人間も獣も同じです。大丈夫ですよ。」

と、フォローするとノアが良かった、と呟いた。


「助けてくださるのですか……」

店主が信じられなと言いたげだが、言い出したのはそちらだ。


カリアンは、店主からの問いかけを煩わしげに無視してノアや他に弓等が使えると手を上げた者達に指示を出し始めた。

なので、私が対応する。


「店主…。去っても良いなら去りますが?」

「そ、そんな!ぜ、是非助けていただければ…!!」

溜め息と共に煩わしげに言えば、首を千切れんばかりに振る。


「先程も言いましたが、時間がありません。去る去らない、助ける助けないで言い合っている時間はありません。報酬についても、全てが終わってから話し合いましょう。」

「そ、そうですね…」

「では、行きましょう。なるべく被害を最小限にするために。」

カリアン達の輪に店主を促す。

店主は頷き小走りで向かっていった。


私は店主の横に立っていた奥方に別の指示を出す。


「奥様。女性や老人、子供を宿に集めて下さい。おそらくは、宿屋(ここ)が拠点になります。もしも籠城となった時の為に食料と水をなるべく確保して下さい。できますか?」

優しく問えば、奥方は涙を拭きながら頷く。


「では、お願い致します。」

走り去る奥方を見送り、カリアンが店主とノアを中心として指示を出しているのを確認してから、私は宿の中に入る。


床にはレレリアに付き添われたマシューと、若く筋肉質な村の男3人に監視された寝こけている一人の野盗。

本来なら、この野盗も殺してしまった方が、安全なのだが……


「ロープをあるだけ持って来て下さい。」

と、見張りの男どちらにでもなく声をかけると、一人が駆け出していった。


「さて、コレがここに居ては女性や子供が怖がってしまいますね。店主には申し訳ありませんが、コレを客室に閉じ込めたいのでお手伝い願えますか?」

と、自分は寝こけている野盗を指差す。


残った見張り役の2人は頷くと野盗の両脇をそれぞれが抱える。

その動きに目を覚ました野盗が喚いたが、顎に一発拳を入れると再度眠ってしまった。


野盗を抱えた村人二人と共に2階に上がる。


一人部屋の位置を聞き、野盗を宿の一人部屋の床に転がすよう指示する。

ベッドに寝かせる義理などない。

ベッドが汚れる。


宿の一人部屋はベッドと机、椅子が一つ。

蝋燭は壁付けの燭台以外は外し、テーブルとベットのマットレスやら毛布やらを別の部屋に移動させる。

一人部屋の中は、最低限の灯りで薄暗く、棚と椅子、そして木枠だけになったベットのみとなった。


ロープを取りに行っていた村人が合流し、彼からロープを受け取る。

現在、野盗の拘束は手首と足首だけだが、さらに膝と肘もガチガチに拘束しておく。

手首はさらに腰と一括りにしておく。

さらに喚かないように口に布を突っ込んでおくのも忘れない。

そして、何重にも輪にしたロープを首にかけ、ベットに括り付けておく。


床で仰向けの状態で野盗は首だけをベットにもたれ掛かった状態だ。

この状態で立ち上がるのは難しいだろう。

シングルベット一台を首の骨と筋力で持ち上げられるなら話は別だが……


……、カリアンはでき……さすがにできないな…うん…


1人ウンウンと頷く。


見張り役の村人には、野盗が何を言おうと、訴えようと聞かなくても良いと指示する。


「絶対に一対一で対応しないで下さいね。見張りは、中は2人。扉の外に1人。」

「あ、あの…便所、とかは……」

「中の見張り役が1人にならなければ良いですよ。声をかけ合って下さい。」

「あ、はい…、あの…」

「はい?」

「アイツの便所は……」

と、見張り役の1人が野盗を見る。


「……、必要ですか?」

「ぇ…」 

確かに人権を無視した返答であることは自覚している。

が、


「アレを何処かに連れて行くとなれば、足の拘束を外さなければなりません。走って逃げられるかも?用を足すのにズボンを下げてあげるのですか?その際、武器はどうします?手放しますか?その時に武器を奪われたら?対応できますか?できるなら構いませんが?私は外の敵の対応で手一杯ですよ?助けになんて来れません。野盗が逃げたとなると、下の階で怯えている女子供に被害が出るかもしれませんね。大丈夫ですか?貴方がただけで皆を護れますか?」

早口で伝えれば、3人の村人はオロオロと、わかった、もういい、と何度も頷いた。


「人間扱いをしてない、と言われればその通りです。ですが、奴はマシューの家族を残虐に殺した奴らの1人であることを忘れないで下さい。逃げるためなら何をするかわからない。油断はしないようお願い致します。」

良いですね?と念を押すと、見張り役は青い顔をしながら頷く。

脅かし過ぎただろうか……

いや…念には念を、だ。


村人3人に野盗の見張りを任せ、カリアンと合流するために外に向かう。




宿の外は慌ただしかった。

徐々に空は白んで来ており、その下では不安げな面持ちの子供達が高齢の女性達に(なだ)められながら宿の中に入っていく。

村の女性達は店主の奥方の指示を聞きながら食料や水、貴重品や治癒薬等を纏めている。


「……、…どうも…」

「ああ、どうも。」

宿の入口の階段に座る老齢の男性と目があい、軽く挨拶をする。

老齢の男性は柔和な笑顔で穏やかに挨拶に答えてくれたが、その手に長柄鎌(柄の長い鎌)を持っている。

優しそうなお爺ちゃんと、草を刈る為の農具とはいえ、死神に持つ鎌に似たソレを手にして座る姿は、独特の雰囲気が漂っている。

老齢の男性は溜め息とも深呼吸ともつかない息を吐くと、


「村ができたばっかんときゃあ、盗賊だぁ、野盗だぁ、理不尽な上役だぁ、いつも大騒ぎだったでぇ、懐かしぃ思うんは、不謹慎だの。」

と、苦笑した。

成る程、と思う。

よくよく見渡すと、村の男性は慌ただしく動き回っているが、老齢の男性達は手に鎌だの棒の先に刃を付けた槍モドキだのを持ちながらも落ち着いており、通りや宿の前を固める様に至る所にちょこんと座っている。

老齢の女性達も落ち着いていて、子供達をあやしている。


齢の功、というものか……

長年の経験や村を興した日々の苦労が年配の方々を猛者にしたのだろう。


「未熟者の私達からすれば、非常に心強いです。頼りにしています。」

嘘ではない。

彼らは、少なからず荒事を経験している。

殺し、殺され、奪われ、時に奪い、守り、欺き、あらゆる手段で初期のこの村を維持し、安定した状態で次代に引き継いだ。

その経験と戸惑いの無い落ち着き、多くを知り見る目は、今の私達にとっては逞しい体を持つ若い村人達よりも頼もしい。


互いに笑みを返し合い、私はその場を離れカリアンの側による。


「どのような状態ですか?」

カリアンを見上げる。

カリアンはこちらを見ることはなく、村の入口に目を向けた。


「等間隔に3人組で見張りを立てた。野盗を見つけ次第連絡が来る。」

「戦力は?」

ざっと周囲を見渡す。

ほとんどの村人は弓を手にしている。


「弓を扱う者がほとんどだ。接近戦は俺とお前だけだと思え。」

「わかりました。」

思わずハルバートを握る手に力がこもる。


「で、打って出る?それとも、待ち構える?」

現状、村人の配置は待ち構えるモノだ。

それでも問えば、


「……。なるべく早く決着を付けたい。しばらく待って来ないようなら、打って出る。」

「行き違いになりませんか?」

「馬の乗れる奴を伝令役にする。」

「では、とりあえずは待ち、ですね?」

「ああ。」

村の入口の方を見ながらカリアンが頷く。


「なら、私もできることをしましょうか…」

私は周囲を見渡し、【探検家】のスキルを発動させる。



【探検家】の職業レベルは現在レベル3。

そして、職業スキルは、[レーダーサーチ:レベル2]と[オートマップ:レベル1]


[レーダーサーチ]は、自身の周囲約300メートルの生命反応を半透明の画面に点印で知らせてくれる。


黒は自身。青は仲間認識、赤が敵認識、緑は確認済み生命反応、白は未確認生命反応、ピンクが攻撃性生命反応だ。

青と赤、緑は確認した相手で、白とピンクは未確認の生命体となる。

レーダーサーチは、生命体全てを拾い上げてしまうため、白反応で確認しに行くと家畜でした、ということもある。

その場合は、緑になる。

相手を未確認でもこちらへの攻撃性が感じられればピンクたが、確認し敵ならば赤、味方なら青、無害なら緑となる。


レーダーサーチの利点はやはり敵味方の判別ができることだ。

相手を確認さえすれば、レーダーに名前も出る。

例えば、近くの青丸には『カリアン』の文字。

名前がなければ、種族名となる。

例えば、緑の群れは重なり合うように『コッコ鳥』と書かれている。

ちなみに『コッコ鳥』は、まんまニワトリだ。

四本脚で手羽部分には羽毛が無いが……よく知る姿形、大きさと鳴き声のニワトリだ。

長鳴きはしないらしく、常にコッコッコッと鳴いている為『コッコ鳥』と名付けられたそうだ。

雄1羽に多数の雌のハーレムを形成し、雌は毎日朝昼夕の3回卵を産む。

非情に生産性が高く庶民にはとっても大事な家畜だ。


名前や所属、種族のわからない敵や生物、味方、無害反応は、確認した順に番号が振り分けられるのもありがたい。




もう一つのスキル[オートマップ]。

こちらも便利だ。まだレベル1なので歩いて認識した場所しかマップに記録されないし、マップもカクカクしたポリゴン?みたいな四角を平面につなぎ合わせたようなマップだ。

なので、どんなカーブは直角。

家や店等のマークもない。

大小様々な四角と直線のマップだ。

とはいえ、レーダーサーチとオートマップの連携使用は便利だ。

ただし、消費魔力はレーダーサーチとオートマップ両方と低い方の消費魔力が2倍。

今回の場合、レーダーサーチの消費魔力とオートマップの消費魔力2倍を合わせた魔力が必要になる。

それでも今回の様な相手がどこから来るかわからない場所では非常に便利だ。



[レーダーサーチ]と[オートマップ]を同時発動すると、半透明のマップが視界に現れる。

マップには大きな濃茶の四角。そして、その前に薄茶の太く長い線。

その線の中、大きな四角の前では、黒丸1つと青丸反応が多数固まっている。

自身のマークである黒点の横にある青点の上にはカリアンの文字。

そして、同じく青印で店主、ノア、離れた場所では奥方、大きな四角の中には、レレリア、マシュー、ブライソンがひとかたまりに、少し離れてコルトン。そして、たくさんの白印が固まっており、重なるように赤の点が1つと青の点が3つ。

拘束している野盗とその見張り3人の印だ。

オートマップでは2階や3階等の階数は表示されないので、1階と2階のマークが1つの四角の中でゴチャ混ぜになっている。

なので階数の判断は自身でしなければならない。


レトロ感漂うマップを完成させるために、私はカリアンと村長でもある店主に断りを入れ、村の中を歩き回る。


マップを見ながら抜けが無いように歩き回り、確実に新たな敵が居ないであろう今のうちに、白丸が何で有るかを確認していく。

外周を少し高めの木板の柵で囲まれた村には、中央に小さな広場、その周囲に村長経営の宿屋、道具屋、鍛冶屋、そして、少し奥まった所に教会。その後ろには墓地。

広場から村の入口に伸びる一本道の周囲に家々が並び、その背後に畑や家畜小屋がある。

一通り歩き回りマップが完成した頃には、朝日がのぼっていた。



完成したマップを一旦閉じ、カリアンに合流する。

カリアンは宿の前で店主と顔を合わせている。

見れば、宿の入口には先に挨拶を交わした老人に加え、(しつ)の悪そうな剣を持った村人が二人程立っている。


「戻りました。」

声をかけると、カリアンと店主がこちらを見た。


「今のところ、村の周囲に異変はありませんでした。隠れているような感じも。」

完成したマップには、捉えた野盗以外の赤丸やピンク丸は出てこなかった。

レーダーサーチ範囲内にも引っかかってはいない。

ホっと息を吐く店主。

私の本音は、周囲に潜んでくれていた方が早く済ませられた、だ。


終わりが見えないのは困る。


村人達の緊張や精神的な限界もあるし、私達もいつまでもこの村とどまるわけには行かない。

できることなら早く決着をつけて、大きな街、そして首都へ行きたい。

それが元々の目的なのだから。

だが、わざわざ言うことではない。


「どうします?このままここで待ちますか?」

捕えた野盗(ヤツ)が言うアジトとの距離なら、そろそろなんだがな…」

村の入口を見つめるカリアン。


村の入口には新たな見張りが3人いた。

マップ制作もかね彷徨(うろつ)いた時に少し挨拶をしたが、3人とも緊張していたのを覚えている。


彼らからの異常報告はなかった。


村の中は緊張感に包まれ張り詰めているが、村の外は意外な程穏やかだ。


「一度、入口の方を見に行きますか?」

「そうだな。」

私とカリアンは連れ立って歩き出す。

付いて来いとはカリアンも私も言わなかったのだが、店主とノア、数人の村人もついて来た。

おそらく、戦闘時は彼らが私達と共に最前線に出ることになるのだろう。




村の入口で見つめる先は、ひたすらに地面。

土と石、そして、一本道。

所々草が茂っている場所には小さな白い野花が咲いている。

蝶々さえ飛んでいる。

……のどか過ぎる……

レーダーサーチを発動させるも、新たな反応はない。


「……、来ない、ですかね…」

思わず呟いてしまった。

別に、来てほしい訳では無いが、サッサと来てくれれば、サッサと終わる。


野盗(奴等)(かしら)を入れて十人弱。その内3人は始末した。1人は拘束。残り6人弱。小さいとはいえ村全体を囲める程人数はいないだろう。村の連中には野盗1人に最低二人で挑めと言ってある。」

「無難ですね。」

「ああ。2対1なら勝ち目もある。……怖気づがなけりゃな。」

「う~ん、五分五分ですか?」

「だな。二人がかりとはいえ、なかなか、覚悟がいる。」

「そこは、まぁ、頑張ってもらいましょう。家族の命がかかっているんですから。」

ね。と店主達に微笑めば、店主やノア達は顔を引き攣らせた。


野盗が村に侵入した場合、本当に彼らには頑張ってもらわなければならない。




爽やかな朝の風が吹き抜けていく。

本来なら、今頃この村を出る準備をしていたかもしれない。

旅の大幅な変更は、そのまま出費に直結する。

収入が無いのだから当たり前だ。



少し前に出る。

レーダーサーチを発動させたまま3歩ほど出ると、


「!」

レーダーの端にピンク点が1つ。

ピンク丸は未確認敵意。

確認してはいないが、この時点でこちらに敵意を向けるのは野盗しかいない。

一本道が曲がった所の茂みに1つ。

ギリギリレーダーサーチの範囲内地点。

たとえ魔獣だったとしても、こちらに向かって来る可能性がある。

肉食魔獣にとって、人間種も所詮は獲物。

草食魔獣よりも狩りやすい獲物に過ぎない。


もう少し前に出る。

ただし、真っ直ぐ前に出るのではなく、カリアンの視界に入るように。

そして、身体ごと向きを変えながら辺りを見渡す。


さらにピンク反応が2つ。

約300メートル強圏内に3つのピンク反応。

周囲を見渡しながら、カリアンの方を向く。

ピンク丸に背を向ける形となるが、約300メートル先なら弓でも当てるのは難しい。


カリアンと目があった。

カリアンは察し、傷のある方の眉がピクリと上がる。

私はハルバートを左の肩に乗せる。

背後から見れば、左足に重心を乗せていることもあり、だらけているように見えるはずだ。

右手で自身の胸に指を当て方向を示す。

胸越しに指し示した先がピンク丸になるように。


カリアンは瞬きで了解の合図をした。


「ぐるっと村を一周してこようと思います。」

もしかしたら出てきてくれるかもしれない。


「ノアともう一人連れて行け。」

「わかりました。ノア。」

「は、はい!」

「あと、あ、君で。じゃ、行こうか。」

赤毛の若い男性に声をかける。

ノアも赤毛の男性も硬い表情で私の後について来た。



村の入口を離れ、ノアと赤毛の男性、アンドリューと村の外を歩く。

弓を手にしたノアと剣を手にしたアンドリューはキョロキョロと不安気に辺りを見渡している。


私はレーダーサーチを見ながら歩く。

真正面からだけ(・・)来るとは思えない。


村の裏側まできた所で、やはり反応があった。

ピンク丸が2つ。

こちらは2つが寄り添うようにある。

違う場所を見つめながら、視界の端で確認する。

ピンク丸が2つある場所は木が数本生え、その下は茂みになっている。

おそらくそこに潜んでいるのだろう。


本来なら、残り半分も確認したいのだが……


「アンドリュー。」

「は、はい!?」

「入口の方へ行ってカリアンに道具屋側は無し。宿側は不明。後方は私が、前方は任せる。と、伝えて下さい。」

「あ、え、えっと」

アンドリューがまごついている間に、2つのピンク丸がジリジリと動いた。


「走って!」

大声ではないが強く言えば、アンドリューは来た道を走って行った。

私はハルバートを持ち直しノアを見る。

ノアは察している様で、腰に下げた矢筒に震える手がかかっている。


「ノア、私の背後に少なくとも敵が2人。」

私にしか見えないレーダーサーチの点と村のマップから視線は外さず、ノアに静かに伝える。

ノアの喉がゴクリとなった。


「大丈夫。私が相手をします。でも、もしも、2人以外に敵がいるようなら、弓を射て足止めをお願いしますね。」

ノアの返事は聞かず、振り返る。


さて…相手の力量や、いかに?




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