二つ名 クリス視点
これからしばらくクリス視点が続くと思います。
記憶の聖霊。
俺にはそう呼ばれた時期があった。
触れたものの記憶をよみがえらせ、もう二度と忘れなくなる。
とある貴族に触れてその子が偶然そのタイミングに思い出しただけなのに、そんな呼び名がつけられた。
ソレイユに出会ったのもそのころだった。
太陽の女神と呼ばれたその時の彼女は、俺にはとても輝いているように見えた。
彼女も「太陽の女神」という二つ名はあまり好きではなかったようだ。
その時、ルミナス家は、イリオス家と仲が悪かったのだ。
「これ以上、同じ血族の間の溝は広げたくないなぁ」
彼女はとても心配そうな顔で、そういった。
その声は自分のことしか考えていない声ではなかった。
国民全員を心から心配している声だった。
その時の俺はそれに感動して彼女のことを好きになった。
今からすれば黒歴史に近しいものだが、あの時の俺にはそう聞くことしかできなかったのだろう。
「これから...その...ずっと一緒にいてほしいんだ。君のことが好きなんだ」
そういうと彼女は、ものすごく照れた顔をした後、
「うん。あたしも!」
と、少し赤くなった頬のまま、そう答えてくれた。
彼女は、、その後
「その記憶の聖霊っていうあなたの二つ名、あたしは好きだよ?」
彼女は続けてこう言った。
「あたしって忘れっぽくてさ、あなたといたらきっと何でも思い出せるよね!」
彼女はまぶしいほどの笑顔でそういった。
だがそんな幸せな時期は長く続かなかった。
彼女の家族が皆殺しにされたのだ。
ほどなくして彼女は『第150代目守護神』という二つ名を背負うことになったのである。
彼女の精神状態は不安定で、まともに会うことができなかった。
彼女は会うたび、取り繕っていたが、隠せていなかった虚ろな目。
それがどんなに辛くて、かわいそうで、悔しかったか。
彼女を元気づけることのできない己が悔しかった。
所詮俺は、「月」なのだ。
太陽の光を反射しているだけの、月なのだ。




