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星降る夜 クリス視点

ソレイユの姿が見えないと思ったら、急に兄から伝書鳩が来て、その内容は、


「今すぐ城の一番広いテラスに来い。今すぐだ。」


と走り書きで書いてあった。


なんだなんだとで魔法を使って空を飛び上昇したら、兄さんの外套を被った俯くソレイユの姿が見えた。


…あんの、諦めの悪い奴め!


元々、俺と兄さんはお互いの初恋であるソレイユを巡って色々静かに争っていた。実験の成果の数や、ソレイユに笑いかけてもらえた数、など。結果的に兄さんが妖精の力で月に移住することとなり、結果的には俺の勝ち、と言うことになった。


だが兄さんも諦めが悪く、ちょくちょく重要行事で帰ってきては、ソレイユにしれっとアタックしているのだ。


それがあまりにも許せないので、ないていたソレイユには申し訳ないが、今日も今日とて喧嘩を吹っかけさせてもらった。まだ貴族言葉なのでマシだと思って許して欲しい。


そして、兄さんが突然話題を転換したと思ったら、


「ソレイユに眠り(プリンセルシ・)(エルネミア)を使おう」


と、突然耳打ちされた。


眠り(プリンセルシ・)(エルネミア)というのは最強の眠り魔法である。まあ、「姫」とついているだけあって、女の人以外にはあまり効果がない。



仕方ないので協力してやったら、ちょうどソレイユの頭が自分の膝にのった。これが膝枕と言うやつだろうか。


「俺はまだ諦めがつかない。まあ精々俺に取られないようにな」


「負け犬の遠吠えか?俺は狼みたいな性格だから死ぬまで離したりしないさ」


「はっ、まあその彼女のボロボロの身体を治せるのは俺だけかもしれないけどな。もし頼ってきたら診察料割引してやるよ」


「そうかい。その時が来たら、かのご高名な『星一番の薬師』様に頼るとするよ。しかし残念ながら割引などされなくても俺たちには十分な財産がある。割引は結構だ。その分の利益でまともな飯でも食べたらどうだ」


兄さんには体の不調を見抜く「慧眼」と言う能力が生まれつき備わっている。これも、星一番の薬師と呼ばれる所以だ。

しかし、兄さんの婚約者によれば「ずっと部屋の中で調合ばかりしていて、私が作ったものもほとんど食べません。どうやって生きてるか不思議なぐらいです」と、まともな食事を取っていないことがわかった。


…どうせ昔の俺みたいに栄養剤調合してそれ飲みながら実験してんだろ。


「そうだね。たまには彼女(婚約者)を安心させなくては」


薬草の匂いが染み付いた司祭のような服を翻し、兄さんは最後にこう言い残していった。


「大事にしてやれよ」


と。


兄さんが月に帰った後、そのままソレイユを寝室に運び、起こさないように置いた。兄さんの外套は世界一下処理がめんどくさい食材と一緒に月に送りつけておいた。


月光に照らされる儚げなソレイユの額にキスを落とし、部屋を後にした。



久しぶりに深く眠れたためか、次の朝はとてもすっきりした朝だった。



「さて、執務をやるか!」

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