因縁
その砂煙が晴れ、見えた姿は、
暗黒のような黒い髪、紅の瞳、雪のように白い肌。
その容姿はまさに姉に倒されたはずの、
『暗黒王』
そのものだった。
「あいつと違うのは目の色と魔力の量だけだな。特に魔力なんかはあいつとは比べ物にならん」
恐らく、暗黒王が言う『あいつ』は、私の母のことだろう。確かに母様はシャイニー家としての魔力は少ないほうである。だが、私の母様を私より下に見るのは、私にとってとても許しがたいことである。
何故なら、私の母様は、私を命と代償に助けてくれた恩人であり、尊敬すべき人なのだから。
...許さない...母様と姉の仇は必ず取る!
私は目の色が一気に橙まで変わっていることなんて気づいてすらいなかった。
「あいつは剣だったが、今度は槍か。楽しみだな」
暗黒王は不気味な笑みを浮かべながら、こちらに突っ込んでくる。
闇と相対する光の魔力を薄く広げ、暗黒王の足取りを掴む。
相対する属性同士は反応が早く、反発するため相手に術式を乗っ取られることがない。戦いにおいて相手の属性と相対するものを使うのは基礎中の基礎である。
戦っているとどうしても簪でハーフアップにしている髪が邪魔になる。
「仕方ない、こうするか」
私は簪を抜き、魔石から作られたひもで髪を一つにまとめる。
...これで少しは戦いやすくなる。
ドカァァァァァン!
考えている暇を与えないと言わんばかりに、暗黒王が攻撃をしてくる。
...さすがにこれだと、貴族街に被害が出ちゃうな。
これ以上修復の費用を国庫から引かれたくはないし、建物があっては出せる火力に制限がかかる。それでは私の特意な魔力量に物を言わせる攻撃ができない。
追いかけてきていることを確認しながら、飛行する。ひきつけた場所は『エリピア平原』。
かつて、暗黒王と母様が戦った場所である。




