お祭り
今日は、フォレストがずっと楽しみにしていた、お祭りである。
「いやっふう!おまつりだぁ!」
「フォレスト、もうちょっと王族らしくしたらどう?」
「えー」
私たちはパレードの締めに出るため、部屋で待機している。
「それにしても派手な衣装にしたね、フォレスト」
「ああこれ?確か別宇宙の『日本』とかいうところの服なんだよ」
『日本』の服はフォレストがとても気に入っている服である。
「陛下、お時間でございます」
「わかったわ、ほら、フォレスト行くわよ」
外では、騎獣のモルフィ―が待機していたのだが、モルフィ―の上に派手な神輿がついていて、ちょっとびっくりした。
「私の上にどうぞ」
モルフィーが私が乗りやすいようにかがんでくれる。
「モルフィー、ありがとうね」
重い衣装を持ち上げるために掴まってもよさげなところにつかまり、いちにのさんで体を持ち上下駄その勢いのまま神輿に乗り込んだ。
フォレストも同様に騎獣に乗り込む。
フォレストは今回グラス家の代表としての参加なので、神輿の金飾には草花がたくさんあしらわれている。
「衣装ヨシ!騎獣ヨシ!笑顔ヨシ!では、れっつごー!」
フォレストの元気な合図とともにゆらりと神輿が揺れる。
私たちは騎獣に乗りながら、城下街、商店街、貴族街と順に街を練り歩く。
「陛下ー!」
...めっちゃ花束飛んでくるんですけど!このお祭り私のお祭りじゃないよね???
慌てて魔力で花束を捕捉し、視界の邪魔にならないよう、足元のほうに置いておく。
「ソレイユ大変そうだねー。そのうち花束に埋もれてそう」
私の隣を歩くフォレストが話しかけてくる。
このままだと花束に埋もれてしまいそうなのは事実だが、彼女だって人気がないわけではないし、何ならグラス家の中で一番有名と言ってしまっても遜色ないのだ。花束だってこれから通る貴族街で十分飛んで来るだろう。埋もれないわけではない。
城下街と商店街を抜け、貴族街に入る。
貴族街はその名の通り貴族が住まう場所で、区画整理がしっかりされた白煉瓦の家がたくさん連なっている。
私に飛ばされる花束の勢いは落ち着いてきた。それもそうだ。貴族たちは私に花束を渡す機会など頑張ればいつでも作れる。頑張れば。
対してフォレストは自由気ままで基本的にグラス家にいないことが多い。大抵は魔物狩りに出かけているか、私に釘を刺されて王城で仕事をこなしているか、だ。グラス家に訪問したところで「いないし、花束はいりません」とフォレストの母である当主に突っぱねられて終わりだろう。つまり、フォレストに贈り物をできる機会がめったにないのである。
ソレイユの足元もはやお花畑じゃん~(笑)と私を見て笑っているフォレストだが、その背後に大量の花束が飛んできていることを知らない。
「フォレストは足元じゃなくて背景がお花畑なんだね~」
「え?」
遠回しに後ろにたくさん花束飛んで来てるよ、と伝える。慌てて振り向いたフォレストが顔面に花束を食らったのは言わずもがなだろう。
埋もれて頭に花びらまみれになったフォレストを笑っていると、その安寧を切り裂くように黒い彗星が道の先に落ちる。
ドカァァァァァァン!!
...なに、祭りを狙った襲撃?
道の上に砂煙が高く昇っている。
私は神輿から飛び降り、モルフィーに城に帰るように指示した。
隣でフォレストも同じことをしている。
...こういう時だけフォレストが王族の礼儀作法(?)ができてるのなんでなんだろう。
貴族街には貴族しか住んでいないし、平民よりも圧倒的に数が少ないのでパレードの見物に来ている人で全員だろう。すでに警備員たちや騎士団が避難経路を作り逃がしているし、大丈夫だろう。
...さて、今回の犯人は...
轟音がした辺りから何かが飛んでくる。
煌めく銀の剣を構え、魔力をまといながらこちらに突っ込んできている。
私は落ち着いて魔法で槍を作り出し、受け止める構えをとる。
ガキンッッッッ!!
ものすごい金属音があたりに響き、目の前で火花が散る。
...槍に傷がついていない。魔力は私より少ない。
襲撃者は不敵な笑みを浮かべ、口を開く。
「はは、あいつの『娘』なだけあるな」
娘、という単語が引っ掛かったが、先ずは今にも飛び出しそうなフォレストを止めることが先決だ。
「軍部大臣に命じます。直ちに騎士団を用いて国民の守護に回りなさい。無辜の民を傷つけさせるわけにはいきません」
「でも...」
「上司命令です。この者は私が相手します」
渋々といったようにフォレストがモルフィー達騎獣をつれて、貴族街を離れていった。
私は動きを見せない刺客を睨み、先ほどの言葉を反芻する。
その声はどこかで聞いたことのある声だった。




