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17-3 王女の初冒険③

 二人が宿場に着いたのは陽が暮れる頃だった。飯屋で夕食をとって泊まる宿を決める。そこは安宿だったが個室の部屋で、明日に備えてじっくり休めそうだった。


「ふぅー。やっと休めますね。こんなに歩いたの初めてでした」


 重くなった身体をベッドに腰掛けさせるシャノン。


「明日も早いから早く休めよ」


 神太郎も背負っていた荷物を置きながら言った。


 だから、シャノンはつい質問してしまう。


「何をしてるんですか?」


「え? 荷物を置いているんだが?」


「何でこの部屋に?」


「え? 泊まるからだろう?」


「ここに!? 冗談ではないです。男女が同じ部屋で寝るなんて不埒ふらちです!」


「え? でも……」


「でもじゃないです。他を当たって下さい!」


 そして、神太郎の背を押して部屋から追い出してしまった。お姫様からすれば当然の対応である。


 廊下に出され、眉を八の字にする神太郎。彼はここでも何も言わず。やはり、言ったところで納得しないだろうから。


 夜が更けていく。




 宿場も寝静まった深夜。


 シャノンはベッドでぐっすり眠っていた。初めての歩き旅だったから相当疲れていたのだろう。だから、窓からの侵入者に全く気づいていなかった。


 突如覆われる彼女の口。更に手足も拘束。やっと目が覚めたシャノンが慌てて抵抗しようとするも、強い腕力を前にす術なく。ならば得意の魔術を使うべきだろうが、精神集中を求められるそれは混乱と恐怖に満たされた今の彼女には望めないものだった。


 そして、そのまま誘拐されてしまった。




 シャノンが連れて来られたのは宿場外れの森の中。彼女は草地に放り投げられ伏すと、やっと暴漢たちの正体に気づいた。


「あ、貴方たち!?」


「よう、お嬢ちゃん。昼間は世話になったな」


 昼間の無法者四人組である。世間知らずのシャノンも連中が復讐しに来たのだとすぐに察する。


「どういうつもりですか? 反省してもらえると思っていたのに」


「だからお礼参りに来たんだよ。たっぷり可愛がってやる」


 男の一人がそう言うと、彼女の両腕を押さえた。


「ここまで連れてくれば、あのガキにも見つからねぇだろうしよ」


「こんな上玉に巡り合えるとはな。どこかのお嬢様か?」


「どうした? 魔術は使わないのか?」


 他の男たちも下卑げびたニヤケ面で煽る、煽る、煽る。


 温室育ちの王女が初めて受ける身勝手な邪な悪意。それは彼女が考えていた以上に、理解し難い気持ち悪いものだった。胸が引き締められ、吐き気すらもよおす。人の善意を信じていた純心を容赦なく汚してくる。


 それでも王女の矜持が屈することだけは良しとしなかった。


 怯える気持ちを宥め、気丈に振舞るシャノン。必死にもがき、歯を食い縛る。相手を睨みつけもした。


 けれど、涙だけはどうしても溢れてきてしまった。


 それが男たちの本能に火をつける。


「ほら、とっとと脱がせ」


 一人目の男がシャノンの両腕を押さえながら命じた。


「おい、俺からだぞ」


 二人目の男がズボンのひもを解きながら忠告した。


「早くしろ。漏れそうだ」


 三人目の男が自分の股間を握りながら急かした。


「俺好みのデケェ胸だ」


 四人目の男が両手を擦りながらほくそ笑んだ。


「へへへ、いいもん食ってきただけあってスケベな身体してるねぇ~」


 五人目の男がシャノンの生足に頬擦ほおずりしながら感嘆した。


 ……。


 ……。


 ……。


 ……五人目っ!?


 男たちがいるはずもない五人目に振り向くと……それは彼らと同じく下卑たニヤケ面をしていた神太郎。


 そして、彼はすぐさま男たちの顔面に鉄拳制裁。顔を陥没させられた四人は悲鳴すら上げることも出来ずに失神させられたのであった。


 これにて無事解決。


 ただ、シャノンは頭が追いついていないのか呆けたまま。そんな彼女に神太郎が苦言を呈する。


「魔導師っていうぐらいだから、自分の身ぐらいは護れるのかと思っていたんだけどな……」


「え? あ……すみません。突然のことで心が乱れてしまって」


 気を取り戻す天才魔導師。そして、男たちの有様を改めて見た。


 どの男も無様な格好で倒れ込み、ピクリともしない。重傷か、若しくは瀕死だ。その様に、シャノンはつい癒すべく手をかざすが……、


「また治して、また襲わせるのか?」


 神太郎のその言葉で止めてしまう。


「このままでは死んでしまいます。また襲ってくるのなら今度は返り討ちにしてみせます」


「あんな醜態を晒しておいてよく言えたもんだ。それに次に襲うのはお前とは限らないぞ。八つ当たりでそこいらの女を餌食えじきにするかもしれない」


「……」


 罪のない人のことまで出されると、シャノンも仕方なく手を引かざるを得なかった。


 すると神太郎が背を向けて腰を下ろした。


「ほら、背負ってやる」


「え? い、いや……」


「裸足だろう?」


「あ」


 シャノン、今になって気づく。寝ているところをさらわれたので素足のままだった。

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