17-2 王女の初冒険②
食事を済ませた神太郎とシャノンは上機嫌に店を後にした。
腹も満たされ歩みに力強さが戻ってくる。このまま次の町へと向かった。
「初めて食べましたけど、美味しかったですねー」
「ああ、思っていたより美味かったな。当たりだった」
「あんな食べ物もあるんですね。お城では出たことがありませんでした」
「お前がこれから経験するのは、ほとんどが初めてのことだろうな。これを機にどんどん見聞を広めるといい。そうすれば色々分かってくるさ」
「分かる?」
神太郎のその言葉の意味が分からず、シャノンは首を傾げてしまった。
やがて道は山間を通る山道となっていく。中々勾配のある道筋だったが、二人は苦にせず進んでいった。
そして、すっかり人の往来がなくなった峠に差し掛かると、それは現れた。
両脇の木々の陰から出てきたのは店で神太郎らを見ていた男たち。無法者のような粗野な身なりをした四人組が、ニヤつきながら二人の前後を挟むように立ち塞がった。
シャノンが何事かと戸惑う一方、神太郎はすぐに察する。
「追いはぎか?」
「察しが良くて助かるわ。金目のものを置いていけば命までは取らねぇよ」
男の一人が剣を抜きながらそう忠告した。
「それと女もな」
更にもう一人がそう付け加えると、神太郎も堪らずその原因を見ながらこうぼやいていしまう。
「美人を連れていると災難が増える」
「わ、私のせいですか? っていうか、美人は余計です!」
顔を紅くして反論するシャノン。
しかし、十代の若者がたった二人で旅をしていれば、こういう連中に目を付けられるのは当然でもある。
そして、それに対する対応も神太郎は当然決めておいた。
喉元に剣先を突きつけられるのと同時に……、
「んがあああああああああ!?」
超高速ローキック! 神太郎の鉄斧のような脛が、その男の膝を砕いた!
続けて、隣の男の足にも打ちかまし、二人をその場に崩れ落ちさせた。
後ろを塞いでいた残り二人は、何が起きたのか? とばかりに呆然……。いや、慌てて気を取り戻すと剣を抜いて神太郎に襲い掛かった。尤も、末路は変わらなかったが。
地面に伏して悶え苦しむ無法者四人組。
一方、動揺していたシャノンもそれを目すると正気を取り戻した。
そして抗弁した。
「し、神太郎さん、何てことをするんですか!?」
「え?」
まさか責められるとは思わず、神太郎は瞠目。片や、彼女は構わす続ける。
「確かに彼らは野盗です。けれど、足を折るなんてやり過ぎです。被害もないうちに重傷を負わせるなんて」
「被害が起きてからじゃ遅いだろう」
「こういう無法者は捕らえて役場に突き出すのが正しいんです。貴方なら出来るはず。無法者への裁きは法に任せるべきです」
「相手は四人もいるんだぞ。その上寄り道なんて面倒なことをしてられるか」
「けれど、何でも暴力で解決するのは気が進みません」
シャノンはそう言うと魔杖を出し、その杖先を男の一人の砕かれた膝に向けた。すると魔杖が輝き出し、その膝も光り出す。そして癒していった。治癒魔術《キュリアー》によって瞬く間に完治させたのである。
神太郎が「おお」と感心する中、四人全員を元通りにしてあげる。
「痛い目を見たでしょうし、今回は見逃してあげます。金輪際、追いはぎなんてお止めなさい」
最後にそう忠告すると、無法者たちを逃がしてやるのであった。
追いはぎは未遂だし、痛い目にも遭った。シャノンとしてはいい落としどころと考えたのだ。逃げ去っていく輩を満足そうな表情で見送っている。
ただ、神太郎の方は何とも言えない表情で彼女を見ていた。向こうも気づく。
「何か?」
「……いや」
しかし、その理由を口にはせず。
百聞は一見にしかず。何事も経験ほど説得力があるものはないのだ。




