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15-4 関所破り④

 すると、そこにボケにツッコんでくれそうな者が現れる。


「貴様、こんなところにいたのか!?」


 街で神太郎を追い返した役人だ。関所破りを知らされてやってきたのだろう。十人ほどの兵士を引き連れていた。


「魔獣が出ると言っただろう。死にたいのか!?」


「魔獣ってあの動く像のことか?」


「あれは勇者の供の大魔導師が魔術で生み出した『ゴーレム』だ。連中はあれを大量に使役して王都を包囲しているのだよ。王都から出ようとする者は勿論、王都に向かう者にも襲い掛かってくる。誰であろうと例外なく、全てにな」


 つまり、魔獣出没を理由とした封鎖は嘘ではなかったのだ。


 そして、彼らがここに現れたのは神太郎を捕まえるためではなく助けるためだ。


 彼らとしては王都包囲は世間に知られたくないだろうが、この封鎖はひとえに人命を護るためのものなのである。


 追ってきたゴーレムに対し、槍を構える兵士たち。一糸乱れぬ訓練されたその振る舞いは強国の兵士らしい威厳を感じさせるもの。だが、その面持ちは皆、強張っていた。この怪物に敵わないと知っているから。それでも後退する気はない。


 たとえ命を落とそうとも民は見捨てない。それが彼らの信条なのである。


「俺を……助けにきたのか?」


「弱き民を護ることこそ、世界に名をせる強国エイゼンの務めだ」


 神太郎の問いに、役人は誇りを胸に答えた。


 それは敵が増えても変わらない。更に、どこからともなく三体のゴーレムが現れ、彼らを取り囲んだ。


 兵士たちが槍で突くも圧し折れ、光弾魔術《レイフィッシュ》を放つもビクともせず。その鉄の身体の前には、あらゆる攻撃が無力だった。ゴーレムたちはそれをあざ笑うかのようにゆっくり包囲を狭めていく。


 躊躇ちゅうちょしている暇はない。役人は意を決し命じる。


殿しんがりを置いて、その間に彼を連れて脱出する! 全員、決しろ!」


 いかなる状況でも己の務めを真摯しんしに務める。それがどれだけ立派なことか、同じく門番をしている神太郎は心を打たれてしまった。


 先の行商人とは真逆の誠実な精神。


 ならば、神太郎もそれに見合った対応をすべきだろう。


「アンタたちは誇り高い門番だ」


 彼はそうたたえながら役人たちを護るように前面に立った。


「こんなところで死なせはしない」


 そして、その素晴らしい覚悟に応えた。


 神太郎、ゴーレムに突貫!


 一体目は、その石の腹に拳をめり込ませて撃破。


 二体目は、目から放たれた閃光を躱しながら、その顔面にかかと落としを食らわし圧砕。


 三体目は、彼を捕らえようとした両手を握り返して手四つの態勢になると、そのまま膂力りょりょくで腕をもぎ取り破壊。


 最後四体目は、首を手刀で切り落とし打倒。


 瞬く間の駆逐。その大立ち回りに役人たちは驚声も歓声も上げられず、ただただ唖然とするばかりだった。


 そんな彼に神太郎は改めて請う。


「俺はキダイ王国の使者だ」


「っ」


「勇者と貴国の争いを仲裁するために王都へ向かっている。それを成すために、どうか通行を認めてもらえないだろうか」


「……」


 神太郎のその言葉にもまた誠実さが篭っていた。だから役人も誠心をもってそれを受け止めた。


 そして、彼は黙考するとその場にしゃがみ込んだ。いや、ひざまずいた。


 次いで……、


「どうか……どうか、我が国をお救い下され」


 深く、深く、深く、頭を下げた。


 他の兵士たちもそれに倣う。


 平身低頭のその様は、彼らの矜持の表れ。


 ならば、期待に応えてやらなければならない。


 「~と言われても、もう遅いからな!」の台詞を撤回することになった神太郎は、「キックスの奴もこういう展開を望んでいたのかな?」と、ふと彼のことを思い出す。


 こうして、彼はエイゼンの民の想いを背負って王都へと向かうのであった。




 夜が明ける頃、神太郎は遂に王都を望めるところまでやってきた。


 巨大な城壁に囲まれた鉄壁の都。そこから少し離れた低い丘に、彼は懐かしい姿を認め、つい微笑んでしまう。


 そして手を振りながら、こう叫ぶのであった。


「お~い、パパ~、ママ~!」



―関所破り・完―

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