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15-2 関所破り②

「ち、ちょっと、何で!?」


 入ってきた街の入り口側から叩き出された神太郎。それでもつくばりながら無実を訴えた。


 しかし、聞き届けてもらえず。彼を追い出すよう命じられた兵士たちは軽蔑けいべつの眼差しを向けるだけだった。


「全く。大変な時期だというのに貴様のような詐欺師に構っていられるか」


「待って、待ってくれ!」


 去っていく彼らにまだ弁解を試みるも、やはり駄目そう。


「くそ~、ああ、いいよ! もうこっちから願い下げだよ。後から仲裁してくれと言われても、もう遅いからな! お前らなんか全滅してしまえ!」


 最後には、この間知ったばかりの負け犬の遠吠えをする始末。


 だが、本当に全滅されるのは神太郎としても困る。やっぱり駄目でしたと帰国したら、恋人たちは落胆しさげすむことだろう。ハーレム崩壊だ。


「さーて、どうしたもんかねー」


 神太郎は元来た道を戻りながらこれからのことを考えた。


 彼の実力を鑑みれば力づくで突破するという選択肢もあるが、それはエイゼンの法を破ることになる。それを防ごうとする兵士たちも傷つけることになるだろう。エイゼン側への被害は避けられず、神太郎の印象を悪くさせる。それがその後の仲裁に悪い影響を与えるかもしれない。自分の立場を証明する書簡を紛失したのは、完全に神太郎の落ち度なのだから。


 理想は何らかの方法で本物の仲裁者と証明すること。


 山まで戻って書簡を探すという手もあるが、今頃は吹雪のせいで深い雪の下に埋まっているだろう。見つけるのは現実的ではない。


 そう頭を悩ませていると、声を掛けられる。


「ちょいと、そこのお兄さん」


 その主は街道の脇にたむろっていた二人の内、年長の中年の男。どうやら神太郎と同じく足止めを食らった行商人たちのようだ。


「アンタも王都へ行けなくて困ってるんだろう? どうだ? 俺たちと一緒に関所抜けをしないか? 秘密の抜け道を知ってるんだよ」


「抜け道……」


 その誘いに興味を抱く神太郎。早急に且つ、揉め事を起こさず通過するにはそれしかないかもしれない。


「夜なら警備の目も掻い潜れる。急いでいるなら、これが最後の機会だぞ」


 急かされて考える暇も与えられない。他に案が思い浮かばない以上、神太郎は頷くしかなかった。




 夜、街のそばにある小山へと続く脇道。神太郎と二人は他人に見られぬようヒソヒソとその山道を進んでいた。


「ここは昔から抜け道として使っていてな。エイゼンの役人たちにも知られていないんだ」


 松明たいまつを持って先頭を行く行商人が自慢げに明かした。ただ、神太郎は別のことの方が気になる。


「ふーん、ところでオタクらは何故そこまでして王都へ行きたいんだ?」


「勿論、商売のためさ。南方で仕入れた生薬を届けたいんだ。ウチの薬は凄いぞ。患部に塗ればどんな傷でもたちまち全快だ」


「へー」


「王都なら仕入れ値の百倍、いや二百倍の値でさばけるからな」


「二百倍!? そりゃ無理してでも行きたいよな」


 背負っている大きなバッグを指しながら答える行商人。一方でその返答から察するに、彼らは封鎖の本当の理由は知らないようだ。行ったところで、王都は勇者に阻まれて入れないだろうに。けれど、神太郎としては都合がいいので明かす気はなし。


 ただ、心配する者もいた。行商人に同行している若い弟子が問う。


「でも親方、本当に魔獣に遭遇したらどうするんですか?」


「バーカ、そんなこと滅多に起きねぇよ。魔獣の注意報が出ても、出くわすのは百人に一人ぐらいなもんだ。この生業を三十年続けている俺が言うんだ。間違いない。いいか? ウチの商売敵もエイゼンで生薬を捌くって話だ。向こうより先に得意先に下ろさないとウチは大損なんだよ」


 大きく稼ぐには、時には危険をかえりみないということも必要だ。


 やがて一行は足止めされていた街を見渡せる小高い丘に着いた。このまま山道を降っていけば、街を迂回して王都へ続く街道に出られるだろう。


 すると、行商人が神太郎に確認する。


「ところで兄ちゃんはどうするんだ? エイゼンの監視は別にしても、夜中の道中は危険だぞ。このまま進むのか?」


「ああ、急いでいるからこのまま行く気だ」


「……そうか。ウチは陽が登るまでここで休むことにするよ。街道に合流するには、この先の突き当たりを右に行くといい」


「分かった。それじゃ助かったよ」


 こうして、神太郎は一人先を行くのであった。不自然なほどの笑顔の行商人に見送られながら……。

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