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番外編1-2 家族愛②

 ということで、神太郎ら三人はそこに行ってみた。そしたら、あった。しかも、客が行列を成しているほどの大繁盛振りだ。何かは分からないが、香ばしい匂いが食欲をそそってくる。やがて列の順番が回ってくると、何かの串肉を焼いている又四郎が見えてきた。


「はい、いらっしゃい! 何だ、神兄ちゃんか」


 頭は捻り鉢巻はちまきに、上半身はシャツ一枚。実に忙しそうで、実に暑そうに調理中だ。その隣で作業していたマリィも、笑顔で「いらっしゃい、お兄さん」と挨拶してくれている。


「マリィの店の屋台か? 凄い繁盛してるじゃないか」


「まぁ、俺の腕がいいんだろうな。ほら、俺って何やらせても完璧にこなしちゃうからさー」


「で、何を売ってるんだ?」


「マンシャン焼きだよ」


「マンシャン?」


 聞き慣れぬ単語に首を傾げる神太郎。一方、両隣の恋人たちには聞き覚えがあったようで、何やら顔を強張らせている。そのことに気づかない彼氏は指を三本立てた。


「それじゃ、三本おくれ」


 が……、


「あ、いや、待って!」


「私たちはいいわ。もうお腹一杯で……」


 ルメシアとユリーシャは何故か遠慮。折角、長蛇の列に並んだのにといぶかしみながら、神太郎は一本に訂正するのであった。


 その後、店を離れた後に彼がまた「本当に良かったのか?」と問うと、ルメシアはここならいいかと正直に答えることにする。


「……だって、それあのタカマ山で遭遇した魔獣の肉だよ?」


 王女のお忍び旅行の際、近衛兵たちによって退治されたあの蜘蛛のことだ。又四郎らに気遣ってその場では言えなかったのだろう。つまり、二人はそれがゲテモノ料理に感じられたのだ。というか、それが普通の感覚だろう。行列を成していた市民たちも素材の姿までは知らなかったのかもれない。


「へー、じゃあ試してみよう」


 しかし、ハーレムを目指す神太郎は、そんなことを気にする小さな器の持ち主ではない。二人が恐る恐る見守る中、その串焼きにかぶりつく。


 すると……、


「んっ!?」


 堪らず声を上げてしまった。


「神太郎!?」


「大丈夫!?」


 心配する恋人たち。それを他所に彼は……、


「う、美味い……。美味過ぎる」


 絶賛した。


「牛でも豚でも鶏でもない……。例えることが出来ないが……ともかく何て美味さだ」


 大絶賛だ。未知の美味を前に勝手に頬が緩んでしまう。行列が成すのも理解出来た。その反応を見せられた彼女たちも、つい考え直してしまうほど。


「本当に美味しいの?」


「他では味わえないね」


「騙してない?」


「なら、あんなに行列は出来ないだろう」


 神太郎がユリーシャ、次いでルメシアにもそう説くと、二人も信じてくれたよう。……が、


「「じゃあ、一口頂戴」」


「え?」


 瞬く間に、残りの二口を二人に掻っ攫われてしまった。


「本当、美味しいー」


「これはいいね」


 ホクホク顔で味わうルメシアとユリーシャ。そして、その様子を唖然と見つめる神太郎。


「俺の分なのに……。何て女たちだ……」


 嫌がっていたかと思えば、有無を言わさず強奪。その唐突な横暴ぶりに、彼は文句すら言えなかった。それでも、彼女らの機嫌は最大限に気遣わなければならない。これもまたハーレム男の宿命なのである。神太郎に出来ることと言えば、名残惜しそうに串を咥えることだけだった。


 そんな折、今度は彼女たちと出くわした。


「あ、神太郎!」


 そう声を掛けてきたのは王女のネクスタリア。更に冬那も一緒だ。


「殿下、これはご機嫌麗しゅう存じます」


「気遣わなくてよい。忍びだ」


 その登場にルメシアとユリーシャが仰々しく挨拶するも、彼女は無礼を許した。実際、今は王女らしからぬ地味な格好である。また黙って王宮から出てきたのだろう。


「そのうちこっ酷く怒られるぞ」


「大丈夫。それに折角の建国祭なんだから楽しまなきゃ」


 神太郎の忠告にも、王女は悪びれる様子もなく答えた。見事に甘やかされて育ったよう。その上……、


「ねぇ、これから国王臨席の見世物があるから一緒に見ようよ」


 彼の腕に手を回してデートに誘う始末。先約の恋人たちも相手が王女では流石に文句も言えず。二人は苦々しい顔を晒すしかなかった。

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