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切実に兄を魔王にしようと願った日


鬱鬱とした思いはあったが、顔面蒼白で私を見つめるモモを見て、微笑んでみせた。


モモも私の殺気の余波にまだ身体が震えていたが、必死に笑みを作った。




私や神にとって、この世界の人間の命は軽い。魂さえ残ればまたすぐやり直しができるから。



魔界も同じ。今は荒れ果てていて風前のともし火だとしても、私が戻れば元どおりにできる。だからちっとも焦りがない。




魔王と私の価値観がぶつかり合って、正直自分でも危ういと思う。ーーはぁ、壊したい……ほらね、気を抜くと出てくるんです。本能が。




もう、本気でお兄ちゃんに魔王になってもらうしかない。私みたいな、すぐキレる子はダメだ。

お兄ちゃんならできる!絶対向いてる。我慢のプロだし!あ、なんかそう思ったら元気が出た。




(さっきの私は私じゃなかった!精霊王、お兄ちゃんが魔王になったら助けるからね!)




兄に丸投げをすると決めたら優しい気持ちが戻ってきた。縦ロールもちょっと悪く思ってゴメン! あぁ、お兄ちゃんに早く魔王になってと伝えたい。




「あの、魔王様ご気分は良くなられましたか?」

後ろからおずおずとモモが声をかけてきた。


「もう大丈夫。怖がらせてごめんね。力が急に戻って制御がなかなか難しくて」

「何か欲しいものはありますか?喉は乾いていませんか?」



欲しいもの、と言われて新聞のようなものはないのか、と聞いてみるとあるんだって!

思いついた私、ナイス!



そして今、次の駅、考の世界の準備がまだできていないらしく、少し到着まで時間がかかると連絡があり、新聞を熟読中だ。



8つの世界同士は地続きではないので行き来するには厳しい審査があり、一部の者しか行き来ができない。だが新聞は全世界向けなので、誰でも各国のゴシップは知る事ができる。



トップニュースはやはり私だ。

魔王帰還、8神のもとで療養中だそうだ。


(どこの魔王様の話ですか。着いてから休みなしですが?1人でスタンプラリー中って聞いたらブーイングものだよ?)


続けて他のニュースに目を通す。


仁は200年ぶりに竜王が目覚めたらしい。

竜王は龍神の側近で、天神との戦いで深く傷つき長い眠りについていたようだ。


(200年も治らない傷ってなんだろう…)

竜は寿命が千年単位だし10年入院したみたいな感じなのかな。



「竜かーやっぱり大きいのかな?」

お茶のおかわりを注いでいたモモに聞いてみる。モモはキョトンとした顔をした後、


「ご冗談を。魔王様に比べたら大したことありませんよ」



………ちょーーーっと待って?


「あれ。聞き間違いかな。何と私と比べて?」


「だから魔王様と竜王様ですよ。魔王様は滅多に本当のお姿になられないのですよね。いつか私にもその神々しい姿を見せていただきたいです」



キャッという効果音がつく、ほっぺたを手で押さえ、恥じらうモモ。



驚きすぎると、反応できなくなるって知ってた? わたし、大怪獣になるのかな…




今の姿で魔法バンバン使って、その小さき器にどれだけの魔力が?! とか、俺の可愛い魔王とか、誰だって妄想するよね?


誰が大怪獣になる想像をする?

怪獣みたいのが国を壊しても、ただの暴れん坊な魔王だよ? そこにロマンス生まれる?



ーー内緒だけど、私、もちろん乙女です(照れ)


…もう人外としかお付き合いできないのかな。



8神は知ってて求婚してるなら、8神の本当の姿は私と変わらないのかな。巨大生物同士のロマンス…


…ナイな。妄想ストップ。



「魔王様?」


黙りこんだ私をモモが愛らしい表情で覗き込む。


はーー羨ましい。モモになりたい。


「なんでもない。お茶ありがとう。」

モモには紳士的?であり続けよう。




どうせお兄ちゃんに魔王を譲るし、今の話は忘れよう。


お兄ちゃん、大怪獣になったらテンション爆上がりだろうなー 男のロマンでしょ。

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