誠意には誠意で返す。いくらガチギレ寸前でも
【それからの私・スタンプラリーダイジェスト〜豆知識を添えて〜】
・仁の世界でスタンプ押す→承認
[仁の世界]
・人間が生活するには適さない気候
・ドラゴンや魔獣が多く生息
・若返りの温泉がある(縦ロール情報)
・義の世界でスタンプ押す→承認
[義の世界]
・ダンジョンが多数
・男女の比率が7:3、一妻多夫制
・ヨシオの産まれし聖なる世界(もちろん縦ロール情報)
・智の世界でスタンプを押す→承認
[智の世界]
・土地が良く農業が盛ん
・人間と獣人は居住地を分け不可侵
・花祭りは恋が実る(縦ロール情報)
・忠の世界でスタンプを押す→承認
[忠の世界]
・王政の世界、貴族社会
・奴隷の所有が合法
・装飾品がお手頃価格(縦ロール情報)
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5つの世界の承認を得て特急に戻ると、車掌と名乗る人物が待ち構えていた。銀河鉄道の車掌さんのコスプレをした小柄の女の子が。
「魔王様、少し休憩されますか?軽食をご用意しておりますので食堂車へどうぞ」
私の知ってる銀河鉄道の車掌は男性だし結構おじさんぽいはず。そもそも私は特急に乗車中…なんて、そんなことはもういい。
私が銀河鉄道って騒いでいたから、誰かが即席で用意したのだろうけど、私の扱い雑じゃない?
ーー半分の力しか戻ってないけど、今なら智の世界ぐらいは滅ぼせるよ?
…車掌さんの中身が男だったらガチギレだっただろう。
だけど目の前にいるのは女の子で、背の高さから見ても幼そうだ。しかも微かに震えている(そりゃそうだ。魔王相手にコスプレでごまかそうとしているのだから)
ここは冷静になろうーー 私ももうすぐ成人の大人だ。ここは我慢だ。たとえ皆が晩餐会で私は軽食の1人飯だとしても。
このコスプレは誠意誠意誠意…誠意には誠意を返せとお父さんも言ってた(ああ、そういえばお父さん魔神だったわ)
誠意には誠意を返す。この子自身は私を喜ばせようとしている。だから、
「…ありがとう」
万感の思いがこもったありがとうだ。
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「美味しいっ!これモモちゃんが作ったの?料理上手だね」
女の子の名前はモモといって魔人だった。幼いと思ったが14歳で、小さな二本角が生えている。モモを手配したのはルークだそうだ。智の世界を滅ぼさなくてよかった…
私はモモお手製のシチューとサンドイッチを満面の笑みで頬張っている。
さっきまでイライライライラしてたけど、美味しいご飯食べたら、怒りもようやくおさまった。
お母さんもよく言ってた。睡眠と食事が足りないと怒りっぽくなるって。お母さん、魔神だけどいいこと言う。
「ありがとうございます!お口に合ったなら良かったです!」
モモは頰を染めて目を輝かせた。車掌帽子は配膳に支障があるので脱いでいる。
将来絶対美人!の可愛い女の子だ。性格も良くて料理が上手くて可愛いとか…
「私が男なら今プロポーズする」 本気で。
「まっ魔王様!おたわむれをっ」
モモは手をわたわた動かして全身で焦りを表現している。
おたわむれを、とか可愛すぎる…
私には一生縁がないセリフだわ
「そういえば、なんでルークは前の魔王を壊した重罪人なのに晩餐会とか誘われるの?」
ちょっとずるいとは分かってるけどモモに聞く。モモなら正直に教えてくれるだろうから。
「ルーク様の罪は確かに許されないものでしたが、無間地獄で相応の罰を受けました。それに魔王様の魂も無事でしたから」
淀みない返答で、正直なところ拍子抜けする。
もっと答えにくい質問なのかと思ってた。
モモは言葉を続ける。
「ルーク様の一途な愛は世の女性の憧れで、本日はルーク様のお話を聞くのを皆さん楽しみにしているようですよ。」
ふーん。