やっぱり若頭だった
思ったとおり、特急は人気がなかった。
人気がないというか、貸切状態だった。
もういいかげん、忘れよう。銀河鉄道のことは。
『もういいか?』
私の妄想終了待ちだったようで、ルークはタイミング良く声をかけてきた。
「お待たせしました…もう大丈夫」
ルークはいつもの呆れ顔を見せることもなく、ゆっくり頷いて話し始めた。
『まずは…この見た目でルークって名前はおかしいと思ったことはないか』
「そういえばそうだ、気がつかなかった!」
(盲点だった。悪魔だからカタカナでも違和感なかったけど、見た目だけなら恭平とか薫が似合いそう)
『俺が、この男を乗っ取ったからだ』
「やっぱり!それで納得だわ」
『緊張感がなくなるからお前は返事をするな』
なにそれ。緊張感なんている?
以下、【やはりルークはイケメンだった?時代から若頭になるまでダイジェスト】
・前魔王の魂を破壊の後、病みルークは無間地獄に放り込まれた(何をされたのか詳しく聞こうとしたら、絶対に漏らしてはいけない呪をかけられているからダメなんだって)
・無間地獄はあの白い部屋と同じ構造。でてきた時は審判された直後に戻された。
・天使の魂の玉は虹色だが、部屋から出てきた時は無色にかわっていた。それを神々が確認し、
裁きの槌で砕いた(裁きの槌は壊した魂の玉が元通りにならないようにできている)
・砕かれた魂はばらまかれ、運が良ければ生き残り何の力もない人として生きることができる
・ルークの砕かれた魂の内、まだ微かに生きていたのは魔王を愛した心だけ。でもほぼ死にかけていた
・サイコパスの死神、仕事中。組の抗争で死ぬ運命の若頭をいたぶっていた。
・ルークの病んだ心を見つける死神
・若頭にいれてみました
・若頭に超フィット! 若頭、死神から死を見逃してもらう
・その時死神に説教しに来た冥王と会い、最後のたましい売ってみました。
・悪魔の若頭完成!
・神々も予想外だったが、砕いたあとはノータッチルールがあるため、天界への出禁を命じた
●ダイジェスト終了
「やっぱりルークは若頭で、死神様は悪ノリしすぎの話?」
『お前は変わらないな』
ルークは疲れた笑顔で私の頭を撫でた。
ちょっとキュンとしたけど私は騙されない
ーー生き残った魂が魔王を愛する心って…ドン引きだよ。どんだけだよ
「あのゲートの駅員さんとはいつ会ったの?前のルークを知ってたみたいだけど」
『それを聞くか』
ーー聞かなきゃよかった。ドン引きエピソード追加されただけだった。
簡単に言うと断罪される直前に逃げ出し、ゲートで発見、捕獲された時の話。
あの駅員さんは最初に発見したけど、ルークが魔王のマントにくるまって眠る姿を見て、起きるまで待ち、温かい飲み物も出してくれたんだって。
それをルークはテーブルごとひっくり返して、魔王の魂を探しに行かなければとか繰り返して駅員さんを困らせたって。
結局引き継ぎの駅員さんがそれを見て通報し、やっと捕まったらしい。
「ルーク、あの駅員さんに土下座だ」
『もう詫びた』
「全っ然足りない!さっきのあれでしょ?世話になったなとか言ってたやつ!」
『分かった分かった。帰りに土産でも渡すから』
ルークはふっと息を吐き、俺の話はこれで終わりだ、と窓の外に視線を移した。
「…ルーク、ごめんね」
思わず口をついてでた。
「見た目のことで馬鹿にしてごめん」
『お前は本当に阿呆だな。前に謝罪は受けている。もう謝るな』
ルークはまた頭をそっと撫でた。